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Apple、「弱気な」四半期業績予測を発表 市場の話題は早くも次期iPhoneの仕様予測に

2018年11月03日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 先月末に新しいiPad Proを発表し、主力製品のラインナップを刷新したAppleが最新の業績報告を発表した。その発表によると、年末商戦期を含む2019年第1四半期(2018年10~12月)の業績予測はやや弱気な数字を計上している。同社が慎重な数値を提示するのは、アメリカ経済をめぐるある政治情勢が関係しているようだ。


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米中貿易摩擦でiPhone作りが難航?


 ロイターは、2日、Appleの業績報告について報じた。まず2018年第4四半期(2018年7~9月)の売上は629億ドル(約7兆1,000億円)だったのだが、この数字は市場の予測を上回っていた。そして、2019年第1四半期の売上予測は890億ドル(約10兆円)から930億ドル(約10兆5,000億円)のあいだと予測している。この予測の中央値に当たる910億ドルは市場関係者が期待する予測値である930億ドルを下回っているため、同社は「弱気」な見通しをたてていると解釈され、業績報告の直後に同社の株価は7%下落した。


 業績予測に関して、ロイターが同社CEOのティム・クック氏にインタビューしたところ、「新興市場において、マクロ経済的な弱みが見受けられる」と同氏は答えた。そして、弱みが見られる市場としてブラジル、インド、ロシア、そしてトルコという国名を挙げた。


 同社の先行きに関しては調査会社Elazar AdvisorsのアナリストChaim Siegel氏が、昨今の関税引き上げをめぐる米中貿易摩擦によって、iPhoneの製造に必要な資材の確保が難しくなることが考えられる、と述べている。


成長するサービス部門


 ロイターの記事ではiCloud、App Store、そしてApple Musicを含むAppleのサービス部門の2018年第4四半期における売上が100億ドル(約1兆1,000億円)になったことも伝えている。この売上は、アナリストたちが予想した通りの数字である。


 アメリカ大手メディアCNBCも、「Appleのすべての主力製品カテゴリーにおけるインストールベースの利益(アプリや定額サービスからの利益を指す)は一貫して高い水準にあり、直近の5四半期連続で成長している」というクック氏のコメントを報じた。


 Apple製品専門メディア『appleinsider』は、今回のAppleの業績報告に関する詳細な数値をまとめた記事を公開しており、そのなかにはサービス部門に関する数値も記載されている。公開された数値のなかには、定額サービスを提供するサードパーティ製アプリはすでに3万ある、というものがある。こうしたサービスの事例にはNetflixやhulu、Spotifyが挙げられるだろう。また、iPhoneを活用する決済サービス「Apple Pay」のトランザクション(決済に伴う通信回数)が前年比で3倍になり、アメリカの小売店舗の60%が同サービスをサポートしている、ということだ。


次世代3Dスキャンニングカメラを実装?


 Appleが業績報告を発表した一方でビジネスニュースメディア『Venture Beat』は、1日、早くも次期iOS製品の仕様予測について報じた。Apple製品に関する信頼性の高い予測で世界的に有名なアナリストMing-Chi Kuo氏によると、次期iOS製品には被写体の3Dモデルを瞬時に生成できる3Dスキャニングカメラが実装されるようだ。このカメラはまず次期iPadに実装され、その後すぐに次期iPhoneにも展開される。これらの製品のリリース時期は、2019年後半から2020年初めと予想される。


 以上の3Dスキャニングカメラの基本的な仕組みは、かつてMicrosoftがリリースしたゲーム機Kinectで採用されていたToFカメラ(Time of Flight)と同じものとなる。ToFカメラとは、カメラレンズから無数のレーザー光を照射して、その光が被写体に到達した時間にもとづいて被写体のかたちや動きを測定する、というものだ。


 こうした3Dスキャニングカメラで瞬時に生成された3Dモデルを、次世代の無線通信システムとして整備が進んでいる5G環境下で活用することを想定した場合、SF映画で登場するARホログラムによるバーチャル会議が実現することが考えられる。つまり、リアルタイムにユーザの3Dモデルを送信し続ける、というわけだ。このバーチャル会議は、iOS製品によるビデオ通話「FaceTime」の進化系と見ることができる。


 今回発表されたAppleの業績予測は、世界の政治経済情勢の影響により市場の期待ほどではないかも知れない。しかし、長期的には同社はユーザに確実に進化した体験を提供し続けるのではないだろうか。


(吉本幸記)