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米津玄師、ポップアップ企画『F / T 秘密基地』レポ 楽曲イメージを独創的な内装と香りで表現

2018年11月02日 17:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 米津玄師『Flamingo / TEENAGE RIOT』をイメージしたポップアップ企画『F / T 秘密基地』が、10月16から17日にかけて開催された。


(関連:米津玄師「Flamingo」&「TEENAGE RIOT」MV


 このポップアップは、10月31日発売のシングル『Flamingo / TEENAGE RIOT』の楽曲をイメージして、松本千広をはじめとした美術チームにより作られたもの。


 会場は、“秘密基地”というタイトルにもあるように、わかりやすい大通りではなく、渋谷駅と原宿駅の間、キャットストリートの奥のいわゆる“裏原”。会場は、少人数でしか入ることができないようで、外には長蛇の列が続いていた。


 会場に入ると、薄暗い部屋にギターケーブルやヘッドフォンといった大量のコードが天井から床にかけて吊るされていた。そんなコードの中にはギター、MD、ウォークマン、iPodの他、「TEENAGE RIOT」の歌詞にも登場するコンバースが絡まっていて、床にはサイコロが散らばっていた。周辺には、何種類ものギター、ブラウン管テレビ、ラジカセが無造作に置かれている。また、コードに絡まったウォークマンやiPodからは「TEENAGE RIOT」の試聴が可能に。この会場で同曲を聴くことによって、その初期衝動的な音楽と、内的にも外的にも現れるTEENAGEの様子が、空間からより鮮明に浮かび上がり、楽曲の深みが増していく。


 米津はインタビューで「BUMP OF CHICKENとかアジカンとか、スピッツとか、そういう先人から受け取ってきたものが自分の中に蓄積されていって、それが自分の音楽に反映されている。ものすごく色濃く反映されている意識が強くあるんですね。自分はそういうある種のバトンを受け取ってきた」(『HIGHSNOBIETY』)と述べている。また、「Lemon」ミリオンダウンロード突破の広告看板では「音楽はつづく」というキャッチコピーを掲出しており、時代を感じさせる音楽機器などが置かれた同会場にも、米津の「音楽はつづく」というメッセージを感じることができた。


 2階に上がると、「Flamingo」をイメージしたピンク色のベルベットカーテンで装飾された部屋が現れた。周りには、フラミンゴを型どったフラワーアレンジ、化粧台にはアンティークの香水瓶、テーブルにはピンク色のドリンクが入ったグラスが置かれていたりと、甘美で煌びやかな内装になっている。ビビッドなワンピースを着た女性に案内されて、真っ暗な部屋の中に入っていくと、そこには複数台のモニターが置かれている。しばらくすると、モニターからは「Flamingo」のMVが流れてきた。同MVでは、米津がフラミンゴを彷彿とさせる軽やかで艶やかなダンスを見せている。その魅惑的な映像を観た筆者は、ついモニターに近づこうと試みた。しかし、近づけば近づくほど、画面は砂嵐となり映像がみれなくなってしまう。再びテレビから離れると、映像は元に戻っていった。ピンク色の煌びやかな内装や“近づくほどに見えなくなってしまう”映像は、ある女性に翻弄される様子を描いた「Flamingo」と密接しているように思える。参加者たちはそれぞれのフロアを包んでいた香りに囲まれて嗅覚でも世界観を体感。そして香りを纏い、会場を後にしていった。


 「TEENAGE RIOT」をイメージした1階と「Flamingo」をイメージした2階。どちらも実際に体験しながら、感覚への刺激と共に楽曲を聴くという仕組みがあり、音楽を”モノ”としてでなく“コト”として扱っていることがうかがえる。また、楽曲の世界観が明確に打ち出された独創的な内装と香りは、楽曲を聴くたびに蘇り、楽曲の情景を立体的に浮かび上がらせている。(北村奈都樹)