F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は第18戦アメリカGP&第19戦メキシコGP編だ。
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☆ セルジオ・ペレス
メキシコに『ナショナル・ヒーロー』が居て → F1への関心が高まり → チャンピオン決定舞台となり → 33万4946人超満員に。この盛り上がり“スパイラル”は80年代の日本に似ている。
ペレス=中嶋悟、チャンピオン・セナ=ハミルトン、毎年鈴鹿の観客は30万人以上に膨れ上がっていた。これまでのメキシコGPでは、8位~10位~7位と連続入賞していたが、4年目はリタイアとなってしまったチェコ(ぺレス)。それでも彼が居るからメキシコGPは毎年祭りのように盛り上がるのだ。
☆☆ ピエール・ガスリー
ウラヨミすると、アメリカ・メキシコの2連戦ミッションは『ホンダ・パワーユニットのテストドライバー』。細かな仕様変更を施されたスペックを実戦状態で試すこと。パワーユニット交換の結果、グリッド降格となり最後尾から、パフォーマンスデータをフィードバック。今日の結果より2019年シーズンのために、すでに“第3のレッドブルドライバー”として走っている(と解釈する)。
☆☆ ストフェル・バンドーン
ペナルティポイントは1点だけ、ラフプレーなどしないタイプだ。それを周囲から「アグレッシブじゃない」と言われ、マクラーレンから来季フォーミュラEシリーズ転向に。“沈黙のバンドーン”、残り2戦を前に、性能で優るザウバー勢の間に割って入る8位力走。
☆☆ カルロス・サインツJr.
ルノーPU(パワーユニット/エンジン)・Bスペックが、メキシコGP金曜フリー走行1回目で衝撃の“1-2-3-4”。レッドブル勢に次ぐ3番手だったサインツは、ロングランペースも上々、連続入賞可能なスピードを示した。6戦5回入賞はならなかったものの、マクラーレンには来季のエースが頼もしく映ったことだろう。
■良い走りを見せても……不運極まるダニエル・リカルド
☆☆☆ シャルル・ルクレール
またひとつメキシコGPで才能を見せた。ハイパーソフトタイヤを13周しっかり使い、次のスーパーソフトタイヤでロングスティント。終盤スライドするのをコントロール、タイヤ管理術が冴えた7位入賞。ザウバーはコンストラクターズランキングで8位となりトロロッソ・ホンダに逆転。
このままいけば分配金が“億単位”で変わる。才能は金(キン)なり、ザウバーのフレデリック・バスール代表は大喜びしていることだろう。
☆☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
気が付けばこの2連戦とも6位、16点(!)。メルセデス、フェラーリ、レッドブルのトップ3チームを除いた“Bリーグ”ではドライバーズ1位、コンストラクターズでも1位を固める仕事ぶり。2017年の57点からポイントも倍増し114点。ルノーのコンストラクターズランキング4位を濃厚にした“仕事人”。
☆☆☆ ダニエル・リカルド
オースティン、そしてメキシコシティーでも怒り心頭。迎えに来たバイクの後ろで爆発した。昨年アメリカGPとメキシコGPもパワーユニットのトラブルでリタイア。あれから1年間、23戦でほぼ5割となるリタイアで計11回。異常としか言いようがない。
メキシコGPで獲得した3回目のポールポジションは自己ベスト・セクタータイムをきっちり揃えた完璧なラップ(とくにセクター2、フェルスタッペンに0.189秒差)。スタートで3番手にまわったが1ストップ作戦を遂行し2番手へ、だが、あと10周でまた“呪い”に襲われた……。
☆☆☆☆ キミ・ライコネン
ライコネンのアメリカGP優勝を祝うフェラーリのマウリツィオ・アリバベーネ代表が、喪に服すように珍しくサングラス姿でいた。伝え聞くところによるとレース前、パフォーマンス・システム部門の若手チーフエンジニアが急死していたそうだ。よほど人望があった人物なのだろう。フェラーリ235勝目となるライコネン21勝には、生々しい『自然な感動』が世界中に広まった。
■フェラーリの重圧が足かせとなったセバスチャン・ベッテル
☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
第15戦シンガポールGPあたりから彼が、フェラーリ戦士として重い十字架を背にしているように思えてならなかった。4冠時代の若々しい“セブ”の面影は薄れてしまった。
ありったけの挑戦心をぶつけたがアメリカGP4位となりメキシコGPは2位に。彼の1年はアメリカGPで実質終わっていた。メキシコGPのレース後、レーシングスーツ姿のままメルセデスに出向き祝福のあいさつ、なかなかできないこと。
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
これまでは先にコンストラクターズを制覇、そのあと自身が戴冠してきたが、2018年は逆。5冠王となったハミルトンが残る2戦をどう締めくくるか。メルセデスとしては、2014年からの通算100戦を圧倒的な5連覇で席巻をめざす。15年と17年決定後にはPPも勝利もなかったハミルトン、グレート・レースをやりきるか?
☆☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
日本GP 3位→アメリカGP 2位→メキシコGP 優勝。飛ぶ鳥を落とす勢いだ。“フェルスタッペン力”MAX100%のスタートダッシュ、まさに『ひとりドラッグレース状態』。それからタイヤケアに徹する走法に切り替え、完璧にレースを支配した5勝目はいままでと違う。5冠新王が誕生したメキシコGPで優勝したフェルスタッペンの名は、史実に刻まれるだろう――。