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VTuber界の歌姫 富士葵は“新しいアイドルの形”? デビューシングル『はじまりの音』から考察

2018年11月02日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 現在およそ5,000人が活動していると言われるバーチャルYouTuber(以下、VTuber)界において、“VTuber界の歌姫”として人気を誇る富士葵が、11月7日に『はじまりの音』でメジャーデビューを果たす。


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 VTuberとは、主にクリエイターがモーションキャプチャ技術を駆使し、YouTube上などで3DCGのアバターを用いた動画配信者に使われている呼称で、YouTubeのみならずSHOWROOMやOPENRECなど活躍する場も広がっている。国内におけるVTuberの先駆者と言われるキズナアイを含めた“バーチャルYouTuber四天王”のほか、今年2月に初投稿し“ゲームが上手すぎる”と話題の猫宮ひなたは40万人の登録者数を達成するなど、次々と人気VTuberが誕生している。


 そんなVTuberの中でも、歌唱力No.1と言われているのが富士葵だ。スマートデバイスメディア事業を手掛ける、株式会社Smarpriseが「キミの心の応援団長」をコンセプトに富士葵のYouTubeチャンネル「Aoi ch.」を2017年12月に開始。その後、ゲーム実況とカバーソングを中心に動画を配信している。そんな富士葵の人気の理由は、やはり歌声が素晴らしいこと。伸びやかで透き通るような歌声は、どこか青春や哀愁を感じさせる心地良い世界観を創り上げ、最近では荒井由実(松任谷由実)の「ひこうき雲」のピアノ弾き語りや、アカペラで1人5役で歌い多重録音で作られた「Jupiter」など、テクニックにも磨きがかかり、聴くものを感動させる力がある。


 また、YouTubeだけでなく外の世界でチャレンジしているのも魅力の一つだ。6月には『ソーシャルジン』(TOKYO MX)に出演して街ブラレポートをしたり、食フェスとエンターテインメントをコラボさせた日本初のイベント『Fight!』の公式応援団長に就任し、リアルイベントで初ライブを開催、アニメ『魔法少女サイト』(MBS、TBSほか)で声優デビューを果たすなど、1人のタレントとして活躍し、VTuberの可能性を広げている。こうした番組や動画を通じ、バーチャルな存在でありながら、まるで実在するかのようにファンと接しているのも特徴だろう。


 メジャーデビュー作となる『はじまりの音』は、富士葵のコンセプトを基に応援ソングを3曲収録。サウンドプロデュースはFUNKY MONKEY BABYS、YUKI、flumpoolなど、様々なアーティストの作曲・編曲・プロデュースを手がけている田中隼人が担当している。富士葵は「3曲とも、葵のみなさんへのメッセージを最大限! 体の底から振り絞って歌わせていただきました。今回プロデューサーの田中隼人さんにたくさんアドバイスをいただき、葵の動画の「歌ってみた」とも、またひと味違う“葵の歌”を楽しんでいただけるかなと思います!!」とコメント。先行配信されている表題曲「はじまりの音」は疾走感溢れるポップチューンで、富士葵の歌声とマッチした聴いていて心地良い曲となっている。一方、2曲目の「ユメ⇒キミ」は躍動感のあるダンスナンバー。富士葵のピッチの良さが際立つ、新境地と言える楽曲だ。そして3曲目に収録されるのはTHE BLUE HEARTS「人にやさしく」のカバー。動画で彼女がカバーする曲は、時代を問わず歌詞の世界観が美しい選曲が多いが、これも富士葵らしい選択。アコースティック調でスローなナンバーにアレンジしているところがポイントだ。


 10月23日放送の『AbemaPrime』(AbemaTV)では、VTuberの魅力をアイドルファンが求める「コミュニケーションができる」、YouTuberファンが求める「ライブ配信感」、アニメファンが求める「2次元のキャラクター性」といった要素を兼ね備えているからだと分析していた。この3つに加え、並外れた歌唱力も持つ富士葵はいわば“新しいアイドルの形”なのかもしれないーー『はじまりの音』はそんなことを思わせる、素晴らしく贅沢なデビューシングルとなっている。(本 手)