2年目のシーズンに向け、さらにコンペティションレベルが激化しそうなWTCR 来季2019年に2年目のシーズンを迎えるWTCR世界ツーリングカー・カップは、すでに高いレベルの競争が繰り広げられた初年度2018年以上のレベルに前進することが確実視され、BTCCイギリス・ツーリングカー選手権王者のコリン・ターキントンや元WTCC世界ツーリングカー選手権3連覇のアンディ・プリオールに加え、アウグスト・ファーフス、ネストール・ジロラミらの復帰参戦がささやかれるなど、現時点でも移籍市場が活況を呈している。
マニュファクチャラーの公式なバックアップや、ファクトリープログラムでの活動が認められていないFIAカップ格式のWTCRだが、トップチームの来季ドライバーラインアップには"ワークスドライバー"級の面々がさらに増加することになりそうだ。
イバン・ミューラー率いるYMR(イバン・ミューラー・レーシング)やBRCレーシング、ミュニッヒ・モータースポーツなどはまだ来季体制を公式にアナウンスしてはいないものの、これらトップチームは大きなシャッフルが見込まれており、今季1年限りでの現役復帰を果たしたミューラーはヒュンダイからのスイッチを匂わせると同時に「今も自分がドライビングやタイトル争いを楽しめていることに驚いた」と、来季の現役続行にも意欲を示している。
2019年に向けては数名のドライバーがすでに去就を発表しており、2017年のWTCCチャンピオン、テッド・ビョークは“古巣”シアン・レーシングに復帰。ボルボの親会社である中国の吉利汽車(ジーリー)グループ傘下のブランドLynk&Coと、元ポールスターの開発部隊が新たに製作した新型モデル『Lynk&Co 03 TCR』での参戦をアナウンスしている。
このLynk&Co Cyan RacingのWTCR参戦が2019年シリーズに最大の影響を及ぼすビッグウェーブとなり、ビョークを含めた3台体制の残る2台を、ミューラーとその甥であるヤン・エル ラシェールがドライブすることが濃厚と見られている。
急造チームとして今季WTCRに参戦したYMRは、そのチームオペレーションや技術パートはシアン・レーシングの延長線上だったと考えられており、ほぼすべてのクルーやスタッフが元WTCCチームからの流れを汲んでいた。
YMRが2018年に走らせたヒュンダイi30 N TCRは、年間を通じて唯一のスポンサーとなる“100-0-0-0”のロゴをボディサイドに掲げて戦ってきたが、この文字列が表しているのは印刷に用いられる4色表現“C・M・Y・K”に照らすと「100%のCyan(シアン)」となり、ミューラーがボルボ・ポールスターで開発ドライバー兼アドバイザー職を担当していた過去とも符合する。
「私はこれまで2年間にわたってポールスター・シアン・レーシングと仕事をしてきたが、その成功を引き継ぐべく未来に向けた話し合いもしているよ」と、まだ確定事項はないながらも関係性を認めたミューラー。
「シアンとの関係性は大きな成功を収め、(シアン・レーシングCEOの)クリスチャン・ダールとも素晴らしい関係を築いてきた。私は彼らがこれまで培ってきたことや、現在進行形で起きているすべてに敬意を払っている」
さらにグローバルラウンチの席上では3台体制としていた『Lynk&Co 03 TCR』は4台に拡大する可能性も残されており、その最後の1台にはこちらも元WTCCドライバーのニッキー・キャツバーグが座る可能性がささやかれている。
しかしキャツバーグに関しては、同じようにヒュンダイ・モータースポーツがサポートするBRCレーシングも4台体制にチームを拡大する計画を進めており、そのプログラムに合流する選択肢も残されているという。
ミューラーと同様に、そのBRCレーシングでWTCRの初代王座を争う57歳のガブリエル・タルキーニはヒュンダイ陣営に残留。同じくノルベルト・ミケリスもチームに留まると見られるが、残る2台のうちのひとつには、かつてのWTCCパドックを沸かせたビッグネーム、アウグスト・ファーフスの加入が有力視されている。
BMWのワークス活動撤退とともにWTCCを去って以来、約8年ぶりのツーリングカー復帰となるファーフスは、その後もBMWのファクトリードライバーとしてDTMドイツ・ツーリングカー選手権や耐久イベントでのGTプログラムを中心に活躍。母国の人気シリーズ、SCBストックカー・ブラジルにも複数回のゲストエントリーを果たしているが、このWTCRが前輪駆動レースカー初体験になると見られている。
また同じく南米アルゼンチン出身でSCBにも参戦し、今季は母国のスーパーTC2000に里帰りしている元WTCCドライバーのネストール・ジロラミもWTCRへの復帰を予定しており、ポールスターとの関係性で『Lynk&Co 03 TCR』をドライブするか、それともアルゼンチン同様にプジョースポールのバックアップを受けるかは未知数となっている。
そしてBTCCで名門WSR(ウエスト・サリー・レーシング)のBMW125i Mスポーツをドライブし3度目の戴冠を果たしたコリン・ターキントンは、すでにいくつものオファーを受けていることを明かしており、こちらも2019年グリッドに並ぶことが確実視されている。
創設初年度はグリッド台数上限を26台としたWTCRだが、こうした動きによるエントリー台数増加を見込んで、2019年は30台まで上限枠を拡大する可能性が出てきている。