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『レッド・デッド・リデンプション2』評 「面倒さ」すらも演出になる、“手触りのある”世界観

2018年10月31日 09:12  リアルサウンド

リアルサウンド

 長い長い開発期間を終え、いよいよ10月26日に『レッド・デッド・リデンプション2』がリリースされた。この記事では本作の序盤をプレイしたうえで、ストーリーや操作感などについての印象をまとめる。


(参考:『レッド・デッド・リデンプション2』“放っておけば髪が伸び、不摂生だと太る”というリアリティ


あらすじ:物語は雪山から幕を開ける


 今作の物語は、前作『レッド・デッド・リデンプション』の前日譚にあたる。主人公アーサー・モーガンをはじめとしたギャング団・ダッチギャングは、強盗に失敗し極寒の雪山へと逃げ込んでくる。


 ゲームは極限状態から始まる。ダッチギャングには金も食料も無い。雪解けまで耐え忍ぶには何らかの方法で食料を得なければならない。そこでチュートリアルとしてプレイヤーは、探索や狩りを体験することになる。


 足をとられるほど深く積もった雪、息も凍りつくほどの寒さ、吹きつける風。『レッド・デッド・リデンプション2』の自然は美しいが、プレイヤーがまず思い知るのは本作における自然の美しさではなく、自然の厳しさだ。


操作感:全体的にもっさりしたアクション しかしリアリティは抜群


 本作のアクションは全体を通して非常にもっさりとした、テンポの悪いもののように感じられる。しかしそれは、ゲームだから許される描写の省略やご都合的な演出を可能な限り排除したからこその不自由さだ。


 戸棚を開けて中のアイテムを取るという動作を経験するだけでも、本作の独特の操作感とアクションのテンポを味わえる。まず戸棚の扉を開けてから、もう一度ボタンを押すとようやくアイテムを手に入れられるという二重の手続きが必要なのに加えて、それぞれの動作にそれなりの時間がかかるのだ。同様に倒した敵の死体からアイテムを入手する際も必ずワンアクションを挟むため、これには時にイライラさせられる。


 だが戸棚の中の缶詰に手を出して、缶詰をバッグの中にしまうまでの動作がしっかりと描写されているのは感動的だ。オープンワールドゲームでありがちなオブジェクトの近くでボタンを押すと、効果音と共にそのアイテムが画面から消えてインベントリに移動するという省略された演出とは一線を画している(もちろん、そのタイプの場合ゲームのテンポ自体はかなり良くなるのだが)。


面倒臭さすらも演出になっている


 このゲームのプレイ時間のうち、かなりの部分は馬での移動に消費される。ミッションの際も、行きはもちろん帰り道もワープなどはなく馬で帰ることを求められる。


 良くも悪くも本作のマップは広大だ。ファストトラベルが解放されるまでは移動だけでかなり苦労することだろう。


 それにステータスの回復速度を保つには定期的な食事をとる必要がある。そのためには弓を持って狩りに出かけなければならない。そして時にはギャングとして悪事に手を染めることもある。賞金首としてつけ狙われることもあるだろう。


 『レッド・デッド・リデンプション2』は面倒事の多いゲームだ。いや、精確に言えば面倒なのは西部時代のギャングの暮らしなのである。本作はプレイヤーが、面倒さも含めて西部劇の世界の手触りを感じられるようデザインされている。


手触りのある世界に没頭しよう


 『レッド・デッド・リデンプション2』はもっさりとした操作感や独特のスローテンポさが気になるものの、それらの要素のほとんどは作品世界に没入するための演出として効果的に機能している(ただしダッシュのできないキャンプや建物内での移動には、ストレスを感じざるを得ない)。


 ゲームとしての快適さを重視するなら、本作のゲームデザインはいくらでも改善の余地がある。だが、本作がどれだけのリソースと時間をかけて作られたかを考えれば、不親切にも思える本作のシステムが意図的なものであることは想像がつく。


 例えるならば本作は、熱い風呂のようなゲームだ。足先だけつけた時は熱すぎてとても入りたいとは思えないが、意を決して肩まで浸かれば極楽が待っている。


(脳間 寺院)