ヤマハファクトリーが長いトンネルを抜けた。MotoGP第17戦オーストラリアGPで、マーべリック・ビニャーレスが優勝を飾ったのだ。ヤマハファクトリーにとって今季初であり、約1年半ぶりの勝利だった。
モビスター・ヤマハ・MotoGP、そしてビニャーレスの調子は第15戦タイGPから上向きつつあったのかもしれない。ビニャーレスはタイGPで、予選4番グリッドから3位表彰台を獲得。ビニャーレスはこのとき、ブレーキングで自信を持つことができたと言い、「(次戦の)日本GPでも同じなら、僕たちが問題を改善することができたということだ」と語っていた。
しかし日本GPでは苦戦。ビニャーレスは予選7番手からスタートし、決勝レースを7位で終えている。このときチームメイトのバレンティーノ・ロッシは4位、そして日本GPにワイルドカードとして参戦した中須賀克行は14位フィニッシュ。
ヤマハのMotoGPテストライダーでもある中須賀は、日本GPウイーク中には加速面の問題解決に取り組んでいるともコメントしていた。
日本GPの翌週に迎えたオーストラリアGPで、ビニャーレスは初日から好調だった。各セッションでは上位につけ、2日目のフリー走行3回目までを終えて総合3番手。予選では2番グリッドを獲得する。
レースは序盤から混戦となった。ビニャーレスはスタートで順位を落とし、1コーナーの飛び込みでは10番手にまで後退する。しかし、ビニャーレスはそこから再びポジションを回復。
トップ集団で走っていたマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)やヨハン・ザルコ(モンスター・ヤマハ・テック3)が接触リタイアを余儀なくされるなか、7周目には2番手に浮上し、先頭を走るアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)の背後につける。
ビニャーレスは8周目の4コーナーでドヴィツィオーゾのインに入りするりとオーバーテイク。今季、マルケスとの激しいトップ争いを何度も演じたドヴィツィオーゾだったが、このときはビニャーレスの追撃をあっさりと許している。
トップに立ったビニャーレスはそのまま独走状態に入り、一時は2番手以下に4秒以上のアドバンテージを築いてついに優勝を飾った。ビニャーレスにとっては2017年の第5戦フランスGP以来、モビスター・ヤマハ・MotoGPにとってはロッシが2017年の第8戦オランダGPで優勝して以来の勝利だった。
「正直、すばらしい気持ちだよ!」と、ビニャーレスは久々に立った表彰台の頂点によろこびを表す。
「ずっと暗闇の中にいたんだ。けれど突然、光のなかに出ることができた! ここ最近のレースでは充分なポテンシャルを見せることができなかったけれど、今日はそれができた」
「ここで勝って、ヤマハが勝てなかった期間にピリオドを打てたこともよかった!(2番手でセッションを終えた)フリー走行4回目のときのようにバイクに乗っていられたんだ。バイクの感触はとてもすばらしく、レース中盤には1分29秒台のラップタイムを維持できた」
トップに立ってからはひとり抜け出したビニャーレス。しかしレースでは終始快走というわけではなかった。
「タイヤが最後までは持たないだろうということはわかっていたんだ。ギャップを広げることが難しいだろうということもね。バイクが揺れたりもしていたし、苦労もしたシーンも何度かあったよ。けれど、それを乗り越えて優勝できた。本当にすばらしいよ!」
ついに表彰台の頂点に返り咲いたヤマハファクトリーとビニャーレス。フィリップアイランドで、ヤマハが復活ののろしを上げた。