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コーネリアス、さらに完成度高めたパフォーマンスで新たなステップへ 東京国際フォーラム公演レポ

2018年10月29日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 遂に始まった『Mellow Waves Tour 2018』ツアー。会場に向かいながら、10年前に同じく東京国際フォーラムで行われた『SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW』のことを思い出した。昨年行われた『Mellow waves Tour 2017』ツアーに国際フォーラムは入っていなかったが、『SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW』の印象が強烈なので、この会場がコーネリアスのホームグラウンドのようにも思える。


参考:ドレイク「Passionfruit」は“ジャンルレスな音楽”の象徴に Corneliusカバーが示す楽曲の現代性


 開幕を待つ間、ステージの正面のスクリーンには、粒子が円を描いて渦巻く映像が流されている。スクリーンの背後にメンバーがスタンバイしていて、会場が暗転すると、ドラムの音に反応してスクリーンの映像が変化。スクリーンに3人のシルエットが映し出され、観客から大きな歓声があがる。痺れるようなオープニングだ。ステージ左から、堀江博史(Gt/Key)、あらきゆうこ(Dr)、小山田圭吾(Vo/Gt)、大野由美子(Ba/Syhth)とバンドメンバーの4人が並ぶ。


 オープニングナンバーは昨年のツアーと同じく「いつか / どこか」。曲にあわせてスクリーンに映し出された「いつか / どこか」は、曲に合わせて、宇宙空間を縦横無尽に動き回るカメラのアングルが心地良い。そこにビッグバンのように弾ける小山田のギターソロ。演奏とペアになる映像はこれまでのライブと同じものだが、「Audio Architecture」のように初めて見るものもある。この曲では、映像にムービングライトも加わってスペクタクルな演出だ。ライブの前半で強烈な印象を残したのは「Another View Point」。映像はライブ用に制作されたもので、今の日本の社会を切り取った毒気たっぷりの映像に、コーネリアスのパンクなアティテュードを感じさせて痛快だった。


 映像と照明と演奏の奇跡的なシンクロニシティがコーネリアスの醍醐味だが、時にこれらは暴力的なパーティーを繰り広げる。「Count Five Or Six」では、ビートに合わせて次々と変化する映像と照明に荒々しいバンドサウンドが入り乱れる。そこから、「I Hate Hate」「Surfing On Mind Wave (Pt. 2)」 とインストナンバーが3曲続くが、圧巻は「Surfing On Mind Wave (Pt. 2)」だ。4人の緻密なアンサンブルが、大きなうねりを生みだして観客に迫ってくる。その迫力は、メロウウェイヴどころかビッグウェイヴだ。そこから、仕切り直しのようにポップな「夢の中で」。歩くテンポとリズムがシンクロし、サビで空を飛ぶ開放感も「Count Five Or Six」の前に演奏された「未来の人へ」に通じるものがある。そして昨年のツアー同様、「Star Fruits Surf Rider」から「あなたがいるなら」という流れ。2つの曲の間には20年の月日があり、青春の輝きを放つ前者とメロウな後者の並びには感慨深いものがあった。


 今回の選曲は昨年のツアーとほぼ同じで、『Mellow Waves』を中心に、ほとんどが『POINT』以降の楽曲。新作『Ripple Waves』からは2曲(「Audio Architecture」「Sonorama 1」)演奏された。昨年のツアーで磨きをかけたバンドの演奏は素晴らしく、難易度の高い曲を息が合ったアンサンブルで次々とこなしていく。いつも通りMCは一切なしで、アート作品としてライブを作り上げていくようなスマートさにコーネリアスの美学を感じさせた。


 アンコールでは、少しリラックスした雰囲気の小山田が、この日、初めてのMC。来年、50歳になること。そして、コーネリアスが結成25周年、デビューから活動30年を迎えることを伝えると会場から拍手が起こった。様々な節目を迎えるなか、昨年よりさらに完成度を高めたパフォーマンスで、新しいステップに進む小山田圭吾と仲間達の姿が頼もしい一夜だった。(村尾泰郎)