メキシコGPの土曜日が終了した時点で、2019年のドライバーラインアップが決定していないのは、3つのシートとなっている。そのうちのひとつであるトロロッソ・ホンダの2019年シーズンの体制がほぼ固まった。
トロロッソ・ホンダは、すでにロシアGP期間中に、かつてチームに所属していたダニール・クビアトの復帰を発表。また8月にはピエール・ガスリーのレッドブル移籍も決定しており、もうひとつの枠がだれになるのか注目されていた。
現在、トロロッソ・ホンダに所属しているブレンドン・ハートレーは「僕には来年以降も走ることができる契約がある」と語ってきたが、ガスリーが28点を稼いでいるのに対して、ハートレーは4点しか獲得しておらず、チームは早い段階から2019年に向けて、さまざまなドライバーと接触してきた。
そのひとりがマクラーレンの育成ドライバーのランド・ノリスだったが、マクラーレン側の交渉している最中にその事実を公表する不手際と、ジェームス・キーの引き抜きを行なったためにご破算となった。
またレッドブルの育成ドライバーであるダニエル・ティクタムは、ヨーロッパF3でタイトルを逃したため、スーパーライセンス取得が難しい状況となっている。
当初、マルコはフォーミュラ4・SEA(東南アジア)シリーズへティクタムを緊急参戦させ、スーパーライセンスを獲得させようと目論んだが、レッドブルのオーナーであるデートリッヒ・マテシッツの鶴の一声で状況は一変した。
第2の母国タイに目をつけたデートリッヒ・マテシッツ
マテシッツが推したドライバーは、現在F2選手権でランキング2位につけているアレクサンダー・アルボンだ。イギリス生まれのアルボンだが、母親がタイ人であるため、イギリスとタイの二重国籍を持っており、モータースポーツはタイ国籍で戦っている。
それに目をつけたのがマテシッツだった。というのも、レッドブルはもともとタイで開発された清涼飲料水を元に、マテシッツがオーストリアの本社で製造を開始したという歴史があり、レッドブル社にとってタイは第二の母国のような存在であり、マーケティング的に重要な国だからだ。
そこでマテシッツはタイ人のパートナーを通してアルボンとの接触をマルコに要請。アルボンも快諾したという。これでトロロッソのもうひとつのシートはアルボンで決定したが、発表できないのには理由があった。
それは、アルボンはすでに2019年からフォーミュラEに参戦するため、日産e.damsと3年間の契約を結んでいたからだ。
すでにアルボンはフォーミュラEのプレシーズンテストを回避し、トロロッソ・ホンダとの契約に向けた準備を行なっているが、アルボンとの契約解消に関するレッドブルと日産との交渉は継続中だ。情報筋によれば、現在レッドブル側が多額の違約金を支払うことで話が進んでいるという。
レッドブル側は最終戦アブダビGP後のテストでアルボンをテスト走行させたいため、ブラジルGPまでには妥結したいと考えているが、発表が最終戦までもつれる可能性もある。