F1第19戦メキシコGP初日のトロロッソ・ホンダは、いつものグランプリ以上に忙しい一日となった。理由は2つある。
ひとつはピエール・ガスリーに未使用のスペック3が搭載されたからだ。アメリカGP後にガスリーのパワーユニット(PU/エンジン)だけに、組み立て品質上の懸念が栃木県にあるホンダ技術研究所HRD Sakuraで確認されたためだ。
しかし、その新しいパワーユニットを搭載してコースインしたガスリーは、フリー走行1回目はわずか2周の走行のみに終わった。これはメキシコGPに持ち込んだスペック3は、この週末に使用はせず、残るブラジルGPとアブダビGP用にストックしておくためだ。
今回、ホンダがメキシコGPで使用するエンジンは2台ともスペック2で、すでにスペック2を搭載したブレンドン・ハートレーは、フリー走行1回目から順調にプログラムを開始。
一方、ガスリーはセッション中にスペック3からスペック2に交換しなければならず、フリー走行1回目はスペック3のインスタレーションラップを2周しただけでピットインし、あとはガレージの中で交換作業を行っていた。
この日、トロロッソ・ホンダが忙しかったもうひとつの理由は、ハートレーがアップグレードされたフロントウイングとフロアを使用していたからだ。
これは先週末のアメリカGPでガスリーが使用したものだった。アメリカGPは金曜日が雨のためにほとんど走行できず、フリー走行3回目でも引き続き、ガスリーは新しい空力パッケージを走らせたが、データの収集不足とそれに合わせたセットアップを行う時間が足りないという理由で、予選以降は旧スペックに戻していた。
■新パッケージの性能にブレンドン・ハートレーは好感触
今回のメキシコGPではその新しい空力パッケージをチームメイトのハートレーが使用。さまざまなテストメニューをこなし、新パッケージの性能をしっかりと学習していた。
「新パッケージは、僕のドライビングスタイルには合っているようで、今日は自分の思い通りのセットアップ作業ができた。だから、もちろん、土曜日以降もこのパッケージで行くよ」
一方、フリー走行2回目から本格的な走り込みを開始したガスリーは、アタックラップをうまくまとめられずに14番手に終わった。
「フリー走行2回目はトラフィックやちょっとしたドライバビリティの問題であまりいいセッションではなかった。確かにグリッドペナルティは理想的だと言えないけど、シーズン残り2戦を考えての戦略的な動きだから、受け入れるしかない」
そして、その決断を下した田辺豊治F1テクニカルディレクターは、初日を終えて、次のように語った。
「予定どおり、何事もなく初日を終了しました。ブレンドンが後半のセッションで6番手につけたことは励みになります。ピエールがドライバビリティに不満を感じていた件は、いま調査中ですが、PUのセッティングに致命的に問題はありませんでした」
「ドライバビリティに関してはエンジンだけでなく、クラッチも関係しているところなので、これから詳細をチェックして土曜日以降に備えたいと思っています」
最後に土曜日以降についての意気込みを尋ねると、こう答えた。
「われわれとしては、PU側の基本的なセッティングが見えてきたので、あとは予選とレースに向けて、エネルギーマネージメントをしっかりと見直して万全の準備をするだけです」