日本TCRマネジメント株式会社(TCRJ)は10月27日、全日本スーパーフォーミュラ選手権/WTCR世界ツーリングカーカップ開催中の鈴鹿サーキットで、TCRを全世界的に統括するWSCとともに2019年から始まる『TCRジャパンシリーズ』の開催概要を発表した。19年は全6戦予定で、そのうち5戦はスーパーフォーミュラと併催となる。
ツインリンクもてぎで開催決定がアナウンスされ、いよいよ2019年からの開催に向けて動き出したTCRジャパンシリーズ。世界各国でレースが開催されているほか、全世界で650台ものレーシングカーが存在するTCR規定車両を導入した日本でのシリーズ開催に向け、WTCRとスーパーフォーミュラが併催される鈴鹿で、その概要が発表された。
この日、鈴鹿サーキットで行われた発表会には、メディアに加え国内外のマニュファクチャラーの担当やチーム関係者、WTCR関係者も出席するなど、会見場に入りきれないほどの人が訪れその注目の高さを伺わせた。
そんななか、スーパーフォーミュラを運営する日本レースプロモーション(JRP)社長でもあり、TCRJの社長も務める倉下明氏から、向こう6年間のTCRジャパン開催をWSCと合意し、横浜ゴムがオフィシャルタイヤサプライヤーを務めることが発表された。
■シリーズの5戦はSFと併催。レースはシルバー/ブロンズ対象
今回発表されたシリーズ概要は、レースカレンダー案とフォーマット、ドライバーカテゴライズについて。まずカレンダーは、3月26~27日に富士スピードウェイでテストデーが行われた後、全6戦を予定。そのうち5戦は、2&4ではないスーパーフォーミュラと併催となる。現在のところ第6戦は開催地・日程とも未定だが、具体的な時季とコースが明示されることになった。
ドライバーカテゴライズについては、すでにジェントルマンドライバーを優先する考え方が示されていたが、FIAからプラチナ/ゴールドと認定されたドライバー、またはTCRJが定めるプロ規定に合致するドライバーは参加不可。シルバー、ブロンズのドライバー、TCRJが別途定める基準に合致するドライバーが参加できる。ただしシルバー/TCRJが定めるドライバーは総合クラス、ブロンズにあたるドライバーはジェントルマンクラスとなる。
ただし、この規定は土日に開催されるシリーズ戦のみで、金曜日に行われるオフィシャルプラクティスは、登録されたすべてのドライバーが参加可能となっている。つまり、プラチナ/ゴールドも出走が可能ということだ。そのため、プロがセッティングやコーチングを行い、ジェントルマンが土日に走るということも可能ということになる。
・TCRジャパンシリーズ レースカレンダー(案)
テストデー:3月26~27日(富士スピードウェイ)
第1戦:5月18~19日(オートポリス/SF併催)
第2戦:6月22~23日(スポーツランドSUGO/SF併催)
第3戦:7月13~14日(富士スピードウェイ/SF併催)
第4戦:9月28~29日(岡山国際サーキット/SF併催)
第5戦:10月26~27日(鈴鹿サーキット/SF併催)
第6戦:TBA
・TCRジャパンシリーズ ドライバーカテゴライズ(案)
金曜オフィシャルプラクティス:登録された全ドライバーが参加可能(制限なし)
土曜/日曜:FIAプラチナ/ゴールド/TCRJのプロ規定に合致するドライバーは参加不可
■土日にそれぞれシリーズを開催
また、興味深いのはレースフォーマット。金曜にプラクティスが行われた後、土曜に『TCRサタデーシリーズ』、日曜に『TCRサンデーシリーズ』として、それぞれ20分間の公式予選、23分+1周の決勝レースが両日行われるスタイルがとられた。それぞれ総合のトップ3、ジェントルマンクラスのトップ3が賞典を得る。
このコンセプトは非常にユニークなもので、例えばジェントルマンドライバーで「土曜は仕事だけど日曜はレースができる」という場合、TCRサンデーシリーズのみに出走し、土曜は別のドライバーに参戦してもらう……ということを可能にするものだ。例えば金曜にプロにセッティングしてもらい、土日でふたりのドライバーがそれぞれ1日ずつ走るということも可能になる。ジェントルマンドライバーのニーズに合わせたスタイルだろう。もちろん両日ひとりで戦うことも可能だ。
チャンピオンについては、車両ゼッケンごとにポイントがかけられ、エントラントチャンピオンの1~3位、サタデー、サンデーのシリーズチャンピオン、チャンピオンチームの車両モデルにかけられるモデル・オブ・ザ・イヤーというタイトルがかけられている。
・TCRジャパンシリーズ レースフォーマット(案)
金曜日:オフィシャルプラクティス
土曜日:TCRサタデーシリーズ(予選20分/決勝レース1 23分+1周)
日曜日:TCRサンデーーシリーズ(予選20分/決勝レース1 23分+1周)
■「世界共通ルールの一員として盛り上げを」
エントラントにとっては非常に柔軟に参戦体制を組むことができそうなTCRジャパンシリーズだが、初年度に見込まれるエントリーは「10台程度でしょうか」と倉下社長は述べている。ただ、スーパー耐久車両の転用も可能になる施策も行われそうで、参加台数はもう少し増えるかもしれない。
「そもそもJRPがこのカテゴリーに関心をもってやろうとしているのは、SFとTCRを相乗効果で盛り上げていきたいということです。来年のカレンダーはスーパーフォーミュラの7大会のうち、2&4以外の5大会が併催となります。SFと一緒にやっていく、ということです。また、ヨコハマさんがオフィシャルタイヤサプライヤーになるのは、極めて自然なことです」と倉下社長。
「スーパーフォーミュラが頂点の頂点を極めるドライバーの争いだとするなら、TCRジャパンシリーズではジェントルマンドライバーにレースを楽しんで欲しいと思っています。ヨーロッパでは電気を使うETCRも発表されるなど、TCRは日々進化しています。我々もその波に飛び込んで、世界共通ルールのファミリーの一員として、盛り上げていきたいと思っています」
また、TCRの“生みの親”であり、WSCの代表であるマルチェロ・ロッティは「いまや世界でTCRの選手権は30ほどあり、650台ものマシンが走り、今年は700人ものドライバーが走っている。非常に興味深い数字だ」と語った。
「そしてTCRジャパンをスタートさせる時が来た。スーパー耐久とはすでにコラボレーションしているが、そちらは耐久レースだ。しかしやはり、TCRはバンパー・トゥ・バンパーのスプリントの戦いが相応しく、私もそれを愛している」
「来季から、TCRジャパンがいよいよ始まる。ホンダはタイトルを争うだろうし、アウディも参戦するだろう。そして他の日本のマニュファクチャラーにも、ぜひ参戦してほしいと思っている」
また、TCRジャパンシリーズのタイヤサプライヤーは、スーパーフォーミュラと同様にヨコハマが決定した。すでにWTCRをはじめ多くのTCRシリーズでタイヤ供給の実績があるだけに、ユーザーも安心して使うことができるだろう。
いよいよその具体像が見えはじめたTCRジャパンシリーズ。もちろん、すでにアジア各国でスタートしているTCRのシリーズとの交流も可能で、逆に日本のエントラントが海外に出場することもできるようになる。まずは来季、どんなシリーズが展開されるか楽しみなところだ。