福岡県内の福祉施設で働く20代男性と元職員の30代男性が、経営者に24時間・365日労働を強いられたとして10月24日、残業代や未払い賃金など約3470万円の支払いを求め提訴した。
訴状によると、職員は2015年1月から勤務していて、元職員は2014年11月から今年4月まで勤務していた。2人は、8時30分から16時まで就労移行支援施設で勤務した後、16時から翌朝8時30分までは同社が経営する障害者向けグループホームで、泊まり込みで入居者対応を行っていた。
職員らの両親には「私が、息子さんを一人前の男にします」と説明
グループホームでの宿直勤務には、深夜徘徊する利用者の対応、不眠気味の利用者の話し相手なども含まれていた。土曜日も、就労移行支援施設かグループホームで利用者の対応をしていたという。
日曜日と祝日は就労移行支援施設の定休日だが、職員らは休みを取れず、グループホームで昼夜問わず利用者対応や食事の準備をしていた。住み込みで働く状況で、この2年ほどは「自宅に帰ることは無かった」という。
原告と同社が締結していた労働契約は、勤務時間が7時間、休憩が1時間で、土日が休日というもの。有休は10日付与され、給与はそれぞれ20万円と18万円だった。労働実態と契約はかけ離れていたようだ。
職員らは、勤務時間などの改善を経営者に要望したという。しかし、経営者は
「休みは人を駄目にする」「土日と深夜はボランティアだ」
「俺たちは家族じゃないか」「いつか給料をあげてやる」
などと伝えるだけで改善されなかった。家に帰らない職員らを心配した原告の両親に対しては、「私が、息子さんを一人前の男にします」などと言っていた。
原告の弁護士は、
「本件で行われている24時間365日労働は、これまでの労働者の戦いの歴史、判例、法整備の趣旨を根底から否定するものです。働き方が議論されている現代において、時代に全く逆行するもので断じて許されるものではありません」
とコメントしている。