財務省の財務総合政策研究所が障害者雇用の一環として事務補助員を募集した際、不適切な募集条件が設けられていたことがわかった。10月26日、読売新聞が報じた。
同研究所は、応募資格として「自力により通勤ができ、かつ介護者なしで業務の遂行が可能」と記載。障害者団体から10月22日に抗議を受け、同日中に修正した。
都内で障がい者の就労支援を行うNPO法人の職員は、「様々な状況に置かれた障がい者がいるにも関わらず、一刀両断にしてしまっている」と批判した。
「中央省庁にはきちんと障がい者雇用に取り組んでほしい」
「『自力により通勤ができ』とありますが、通勤には手助けが必要でも、業務はきちんと遂行できる人もいます。例えば、家族が車で送ってくれるという人もいるかもしれません。そうした人たちのチャンスを入り口の部分で閉ざしてしまうのは問題だと思います。もし業務遂行能力が不足しているのであれば、それを理由に選考で落とせばいいのです」
そもそも「自力により通勤」「介護者なしで業務の遂行が可能」という条件を設けるのにも、きちんとした理由があるのかどうかが問題だという。
障害者雇用促進法は、民間企業や国、自治体に対し、一定割合の障害者を雇用するよう義務付けている。2018年4月には、法定雇用率が民間2.2%、国や自治体で2.5%にまで引き上げられた。
こうした中、今年8月には中央省庁で長年に渡って人数が水増しされていたことが発覚。国の33行政機関のうち28機関で、計3700人が不適切に計上されていたのだ。うつ状態と自己申告した人を身体障害者に計上したり、近視の人を視覚障害者として計上したりしていたという。
「障がい者雇用が徐々に拡大していた矢先にこのような事実が発覚し、就労支援に取り組む人たちは皆肩を落としています。民間企業では、法定雇用率を守れないと納付金があるのですが、中央省庁はどう責任を取るのでしょうか。中央省庁にはきちんと障がい者雇用に取り組んでほしい」
法定雇用率が引き上げられたため、今後求人の数自体は増加する。しかし「数合わせで採用しても、受け入れる側の理解が不十分だと定着は難しい」という。
「例えば、社長や人事部が積極的に取り組もうとしても、現場で障がい者と一緒に仕事する人たちとの間には温度差があることがあります。実際に障がい者と接する人たちの理解と手助けが必要です」
「これでは民間がちゃんとするわけない」「記述を削除しても条件としては残る」
ネットでも財務省の対応に批判が殺到している。障がい者の法定雇用率が定められているのは「障害者が働ける環境の整備を促進して広げる効果も狙って制定されたわけで、仕事に障害者が合わせろ出来ない人は門前払いで終わっては、意味がない」という指摘もあった。
また「行政がちゃんとしなかったら 民間がちゃんとするわけないよね」「記述を削除しても条件としては残るよ。表面化しないだけ」といった声もあった。