ホンダが前戦アメリカGPに続いて、2戦連続でエンジン(ICE)交換を行うことが明らかになった。
今回、交換されたエンジンはピエール・ガスリーに搭載されたもので、メキシコGPで新しく投入されるエンジンは、アメリカGP同様、スペック3のままだ。
では、なぜガスリーのエンジンのみを同じスペック3に交換するのか。
アメリカGPで行われた交換は、日本GPで悩まされたオシレーション(共振)を抑えるために通常とは異なるセッティングでエンジンを使用したことによるダメージだった。しかし、今回の問題はそれではないと田辺豊治ホンダF1テクニカルディレクターは説明する。
「パワーユニットに組み立て品質上の懸念が確認されたためで、スペックに起因するものではありません」
ホンダはレースに投入したパワーユニットと同じ仕様のものを研究所のテストベンチで、日々何台も耐久テストを行なっている。そのテストの結果、第18戦アメリカGP後に問題が発覚。原因をたどっていくと、ガスリーに搭載されたパワーユニットを組み立てた工程でなんらかの問題が潜んでいた疑いが出てきた。
いっぽう、ブレンドン・ハートレーのパワーユニットに問題が起きていないのは、別の工程で組み立てられたものだったからだ。
ホンダとしては、できるだけグリッドペナルティを受けない方法で対処する道も模索した。それは、アメリカGPでガスリーが使用したパワーユニットを至急、栃木県にあるホンダ技術研究所HRD Sakuraに返送して、テストで問題が出た箇所を非破壊検査などで封印を解かずにダメージが起きているかどうかを確認するという作業だ。
しかし、アメリカGPとメキシコGPは2週連続開催のために、たとえダメージがなかったとしても、HRD Sakuraからメキシコに送り返すまでの時間を考えると木曜日までに間に合わない可能性があるため、今回はグリッドペナルティを受けて、アメリカGPとは異なる工程で組み立てた新しいスペック3を、メキシコGPでガスリー車のみに投入するという苦渋の決断を下した。
今回、ガスリー車に搭載された未使用のパワーユニットは、エンジンとともに、ターボとMGU-H(熱エネルギー回生システム)も未使用のものが投入された。これにより、ガスリーは15番手以上のグリッドペナルティを受けることになったため、この時点で日曜日のレースは最後尾からのスタートが決定した。