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河合塾の雇止めに労働局「待った」…元講師男性「無期転換逃れの歯止めに」

2018年10月26日 20:12  弁護士ドットコム

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大手予備校「河合塾」で29年間働き、今年3月に雇止めされた男性講師について、福岡労働局が「有効性に疑問がある」と文書で指摘していた問題。当事者の男性が10月26日、厚労省記者クラブで会見を開き、「雇止めの歯止めになることを期待しています」と話した。


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労働局は文書で「雇止めについて、労働者と改めて話し合うこと」を助言しており、男性は所属する河合塾ユニオン(首都圏大学非常勤講師組合の分会)を通じた団体交渉を求めている。


一方、文書には法的な効力はない。河合塾は「男性にはこれまで幾度も説明しているが、認識に差がある。『これ以上の話し合いで歩み寄れるものはない』という考えを福岡労働局に答えている」と述べた。


ただし、「労働組合からの団体交渉の申し入れがあった場合には、応じる考えはある」という。


●男性側は「無期転換逃れ」を主張

男性は、世界史の講師だった松永義郎さん(68)。1989年から河合塾で働き、業務委託から有期雇用に変わった2010年以降、1年契約を7回更新している。福岡校や北九州校で教えていたが、今年3月、雇止めにあった。


河合塾の説明は、生徒からの授業アンケートの結果が全国平均より悪く、注意・指導にもかかわらず、改善されなかったというもの。


しかし、松永さんは指導を受けた覚えがない。そもそも、アンケート結果は受け持つ講座によって変わる。その1年前、松永さんが担当していたある講座では、平均を大きく上回る8割超が「満足」と回答していた。


松永さんは、「無期転換逃れ」だとして、福岡労働局に相談した。今年4月から、同じ職場で5年以上働く有期雇用者が望めば、次の更新から無期雇用になれる「無期転換ルール」の適用が始まったが、権利が発生する直前での雇止めが多く報告されている。


松村比奈子委員長(首都圏大学非常勤講師組合)は、「5年だからとは言えないので、つまらない理由で雇止めする。具体的に答えてもらず、確認のしようがない事例が多い」と傾向を指摘する。


●労働契約法19条がポイントに

福岡労働局が9月6日付で河合塾に交付した文書は、労働契約法19条を根拠に、雇止めの有効性に疑問符をつけている。


同条では、有期雇用について、契約更新が反復されているなど、継続雇用の期待が高い場合には、「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当」でなければ、雇止めは無効になるとされる(雇止め法理)。


教科書通りの解釈と言えるが、適用は必ずしも容易ではなかった。松村委員長は、「こんなにクリアに指導してもらったのは初めて。5年(無期転換逃れ)に限らず、簡単には雇止めできませんよ、ということ。汎用性が高く、さまざまな交渉で使える」と意義を語っていた。


(弁護士ドットコムニュース)