2015~2017年にかけてル・マン24時間レース3連覇、ならびにWEC世界耐久選手権3年連続シリーズチャンピオンを獲得したポルシェのLMP1マシン『ポルシェ919ハイブリッド』が10月25日、トリビュートツアーの終着点であるポルシェミュージアムに入った。
2014年のデビューからわずか4年間に計6つのWECタイトルと、ル・マンの優勝トロフィー3つをメーカーにもたらしたポルシェ919ハイブリッド。2017年限りで第一線から退いたマシンはその後、世界中のファンにお別れを告げる“919トリビュートツアー”の名のもとにアメリカ・ニューヨークや日本、スイスなど世界各地でその勇姿を披露した。
なかでもLMP1という枠組みを打ち破り、スポーツカーの限界に挑戦したポルシェ919ハイブリッドEvoでのタイムアタックは、ベルギーのスパ・フランコルシャンで当時のF1レコードタイムを破ったことで大きな注目を集めた。さらに、ニュルブルクリンク北コース、“ノルドシュライフェ”では35年前にポルシェ956が記録したレコードを50秒以上短縮する5分19秒546をマークし、ふたたび脚光を浴びている。
その後もイギリスのグッドウッド・フェスティバルやアメリカ、ラグナ・セカで行われたポルシェ・レーシング・レユニオンといったイベントに参加した919ハイブリッドは25日、ついにツアーのフィナーレを迎えることとなった。
同日、919ハイブリッドと919ハイブリッドEvoの2台は、ドイツ・バイザッハの研究センターからシュトゥットガルトにあるポルシェミュージアムまで、約25kmの道のりを一般公道を自走して移動。この際のドライバーにはポルシェワークスドライバーのマルク・リーブと元F1ドライバーで現在はポルシェのアンバサダーを務めるマーク・ウェバーが務めている。
「今日のドライブは、ポルシェにとってだけでなく919ハイブリッド、そして自分にとっても最高のフィナーレだった」と語るのはシュトゥットガルト出身で、2016年のル・マンウイナーであるリーブだ。
「僕はいつも、ポルシェ・カイエンで今日のルートの一部を使ってオフィスに通っているんだ。だけど今日、919ハイブリッドの低いシートポジションから見た風景をいつまでも覚えておきたいと思ったよ」
■ウェバー「919エボをポルシェに持ち帰る役目は名誉なこと」
また、919ハイブリッドEvoをドライブしたウェバーは「ドイツの公道で“猛獣”を操るのはクレイジーな体験だったけど楽しかった」とコメント。
「このような試みとクルマを管理し続けるという姿勢がいかにもポルシェらしくてクールだよね」
「ふり返ってみると919ハイブリッドでWECのチャンピオンを獲得した2015年は、僕にとって大きな意味のある1年だった。今(その919から派生した)919ハイブリッドEvoを“ポルシェの実家”に持ち帰る役目を果たせたことを名誉に感じているんだ」
ポルシェLMP1副社長のフリッツ・エンジンガー氏は近年のWECでもっとも成功を収めたマシンをポルシェミュージアムのアヒム・ステヤスカル館長に引き渡した後、次のように語った。
「まず、919ハイブリッドによるツアーフィナーレの実施を可能にしてくれたドイツ当局に最大限の謝意を送りたい」
「チーム全体にとって、このミュージアムへの移転はひとつの時代の終わりを告げる、特別な意味を持つものだ」
「我々は2015年から2017年までに3度のル・マン総合優勝と合計6つ世界選手権タイトルを獲得した。さらに2018年にはスパでの成功に続いて、ノルドシュライフェでも歴史を塗り替えることに成功している」
「このことに対し関係各位ならびにポルシェファミリーと、多くのサポーターに心から感謝しているんだ」
また、チーム代表のアンドレアス・ザイドル氏は「919ハイブリッドプロジェクトでは、ポルシェの持つ技術力をもって最新のハイブリッド技術の性能を世界中に紹介することができた」と満足げに語った。
「この技術力の披露は、最終的に2018年のトリビュートツアー内における919ハイブリッドEvoでのラップレコードチャレンジによって達成されている」
「この点においても、我々はチームを支援してくれたさまざまパートナーに特に感謝している。彼らのサポートがなければ、我々のプログラムの成功はなかったはずだ」
ル・マン3連覇という公式記録とともに非公式ながらスポーツカーの限界に挑み、偉大な記録を打ち立てたポルシェ919ハイブリッド。2台の歴史的マシンは今後、ポルシェの輝かしい歴史を彩ってきた名車たちとともにポルシェミュージアムで展示されることとなる。