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ヒカルと怪盗ピンキーの音楽ユニット・カルxピン ラファエルとともに“YouTuberとしての音楽”を提示できるのか

2018年10月26日 08:42  リアルサウンド

リアルサウンド

 人気YouTuber・ヒカルと怪盗ピンキーが結成したユニット・カルxピンが9月29日、1stシングル「Next…」のMVをYouTubeに公開した。プロデューサーに同じYouTuberでふたりとの交流も深いラファエルを迎え、彼らのチャンネルではプロジェクトの進行状況が随時更新されていた。カルxピンが音楽活動で目指すものとは一体なんなのだろうか。


(参考:YouTuber・カジサックは登録者100万人を達成できるのか? ラファエルらとのコラボからみる“キングコング・梶原”との違い


 検証系YouTuberとして人気のヒカルだが、元はゲーム実況者として2013年チャンネルを開設。その後2016年から今のメインチャンネルとなる「ヒカル(Hikaru)」で動画投稿を始め、惜しげもなく大金を使っていスタイルで、小・中学生を中心に絶大な人気を得る。1本あたり20~30分とYouTuberとして比較的長い動画作りとなっているが、饒舌なトークから生まれるテンポのいいやり取りによって視聴者を惹きつけている。


 一方、爽やかなルックスから女性層を中心に人気を得ている怪盗ピンキー(以降ピンキー)は、多彩なジャンルを武器に活動してきた。いわゆる“YouTuberらしい”検証動画から、実の妹や弟を巻き込んだドッキリ、ツイキャスなども頻繁に行っている。 また「歌ってみた」の活動も勢力的に行っており、あるあるネタや下ネタを取り入れた替え歌動画は人気を博している。


 そんなふたりのユニット・カルxピンをプロデュースしているのが、同じく人気YouTuberのラファエルだ。YouTuberコンサルタントとしての顔も持つラファエルは、キングコング・梶原のYouTubeデビューの後見人としても知られている。


 元NestStageの3人が再び集まり始動した音楽ユニット・カルxピンは、これまで「Next…」「仮面武闘会」の2曲をYouTubeに公開した。急な発表に当初、視聴者は少し困惑した様子だった。


 カルxピンのデビューにおいて特筆したいところはそのスピード感だ。9月9日付けの動画で発表されたこのプロジェクトは、当事者であるヒカルとピンキーにも突如知らされたものだった。ラファエル主導のもと、ユニット名、レコーディング、ライブが次々と発表されていった。


 ヒカルとピンキーも戸惑いながら、12月19日、ヒューリックホール東京でのライブを目指し準備を始めた。その様子はヒカルのチャンネルを中心に随時公開されていっている。「明日がボイトレで3日後にレコーディングがあります」と通常では考えられないスケジュールだが、ここにラファエルの考えるエンターテインメントが隠されているのではないだろうか。


 始動から3ヶ月でライブを行うというのは無謀な話でもある。だが、進行状況を共有することでこのプロジェクトは、視聴者とともに作り上げていくというエンターテインメントへと昇華している。楽曲やパフォーマンスの完成度はもちろんだが、そういったものを度外視したステージが生まれるのではないかという期待も持たせてくれる。


 ヒカルのチャンネルでは、ボイストレーニングや衣装の購入など、ラファエルに無茶振りされ戸惑いながらも従う2人がコミカルに映し出されている。「見切り発車なところもあるため視聴者の意見も多く取り入れていきたい」とラファエルが語るように、カルxピンYouTuberらしい視聴者との関係性を重視したプロジェクトと言えるだろう。


 この言わば“視聴者との共感性”は、行き届くまで時間のかかるものだ。VALU騒動、活動休止と一時は活動自体が危ぶまれることもあったNextStageのメンバーだけに、コメント欄では厳しい意見も飛び交っている。


 しかしここ1ヶ月で2曲が公開され、いよいよ視聴者側にもこの企画が現実味を帯び始めてきた。「Next..」では半々に割れていた評価も、3週間後に発表された「仮面武闘会」では高評価の数が増えてきており、このプロジェクトが徐々に浸透してきた証拠だろう。今後、発表される楽曲によって方向性や活動軸となるものも見えてくるはずだ。


 「Next…」は公開から4日で100万回再生を突破した。話題性を含め順調な滑り出しだが、問題はここからと言える。音楽活動、もちろんYouTube活動にも言えることだが継続的にトピックスを提示していくことは何よりも重要になってくる。初動に勢いがあった分、尻すぼみになることだけは避けたい。


 現状、カルxピンは12月にライブを行うためのユニットのように映っている。動画でも語っていたがラファエルが目指しているものはYouTuberならではのやり方でお茶の間に浸透させる音楽である。そのためには視聴者に長期ビジョンを提示する必要がある。


 HIKAKIN&SEIKINを始め、VAZ(彼らが所属している事務所)内でもスカイピースや歩乃華など音楽活動を行なっているYouTuberは多くいる。しかしラファエルの言うような“YouTuberとして”の活動を提示できている者はそういない。そしてお茶の間に浸透させるとなると果てしない話になってくる。


 しかし業界に精通し、荒波をくぐり抜けてきた彼らであれば、前例にないYouTuberとしてのやり方を見せてくれるかもしれない。これからも続報が公開されていくとは思うが、ひとまずは12月のライブの成功を願いながら見守っていきたい。(馬場翔太)