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なぜ「ボトムズ」をボードゲームに? “むせる”ほど作品愛に満ちた「VOTOMS TACTICS」制作秘話を聞く

2018年10月25日 19:22  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

なぜ「ボトムズ」をボードゲームに? “むせる”ほど作品愛に満ちた「VOTOMS TACTICS」制作秘話を聞く
カードゲームの大会を始めとする各種イベントが盛んに行われたり、様々なボードゲームなどが楽しめるゲームカフェが増えるなど、最近密かなブームとして盛り上がりを見せている「アナログゲーム」。

国内外でコンスタントに新作もリリースされる中、ゲームファンのみならずロボットアニメファンも気になるタイトルが登場。それがリアルロボットアニメの傑作『装甲騎兵ボトムズ』を原作としたボードゲーム『VOTOMS TACTICS』だ。

ボックスアートは、ガンプラなどで有名なイラストレーター森下直親氏が担当


劇中で繰り広げられたアーマードトルーパー(AT)の戦いをボードゲームという形でどう再現しているのか? 気になるゲーム内容などについて、今作のゲームデザイナー・鈴木拓也さん、発売元の国際通信社・松井克浩さん、監修を務めたサンライズ・渋谷誠さんに実際のゲームを交えながら話を伺ってみた。

■なぜ『ボトムズ』をボードゲームに?

市街地や砂漠、そしてバトリング会場などのマップシート上でコマを動かし、劇中のエピソードを再現した様々なシナリオの下で戦いを繰り広げるのが基本のゲームスタイルだ。

まず気になるのは何故『ボトムズ』をゲーム化することになったのかという企画の発端だ。根底にあったのはやはり原作アニメへの思い入れである。

鈴木「学生時代には色々なアニメを見てきましたけど、唯一リアルタイムで全話視聴したアニメが『ボトムズ』だったんです。放送時は中学3年生で高校受験に必死だった時期だったんですけど、あのミリタリーテイストのATやストーリーに異様に心惹かれてしまって、見ないわけにはいかなかったんです」

翻訳会社の役員などを務めた後にフリーランスのゲームデザイナーとして活動を始めた鈴木さんは、ゲームマーケット(毎年春と秋に東京ビッグサイト、関西地方で2~4月に開催されるアナログゲーム専門イベント)用の新作を準備していたが、それが意外な形で『ボトムズ』へと繋がることに。

鈴木「最初は古代ローマの闘技場で剣闘士が戦うゲームを考えて製作を進めていたんですが、それが行き詰まってしまいまして。その時にふと、もし『ボトムズ』のバトリング(劇中で描かれたAT同士によるバトルゲーム)をテーマにしたゲームを作ったら? という発想が生まれたんです。ボードゲームファンには『ボトムズ』をリアルタイムで見ていた世代も多いし、イケると思って勢いでα版を作りました。そこからサンライズさんにコンタクトを取ったのが企画の始まりです」

■『ボトムズ』らしいリアルな戦闘の再現と、複雑にならないよう遊びやすさの両立に苦心

鈴木さんは、以前からの知己でありシミュレーションゲーム(SLG)をコンスタントにリリースする国際通信社をサンライズに引き合わせ、そこから製品化に向けて本格的に開発が進んでいった。

国際通信社・松井「アニメとコラボしたSLGは以前にツクダホビーから多数リリースされていて、その中に『ボトムズ』もあったので、内容的に被らないか、とか、昔のような複雑なルールになっていないかと、お話をもらったときは懸念していました。でも、カードなどを用いた最近のトレンドに合わせた内容になっていたので、商品化を進めることにしたんです」

ここからはボードゲームファン以外の『ボトムズ』ファンにも楽しんでもらうための改良が加えられていく。

サンライズ・渋谷「最初はバトリングをするだけのゲームだったので、それだと複雑なルールなどで敬遠されてしまうと思いました。それで劇中のシナリオを再現できるようなスタイルに改良してもらいました」

膨大なデータやルールを駆使してリアルな戦闘を再現するのがボードゲームSLGの特徴だが、あまりに複雑すぎるとボードゲームビギナーや『ボトムズ』ファンが遊べないゲームになってしまう。
その点を改善しながら『ボトムズ』らしい戦闘を楽しめるようにするのが、このゲームの苦心した部分だという。

鈴木「物陰に隠れているATは、普通は相手から見えないはずだけど、ボードゲームだとプレイヤーの目には見えているので、それを見越した動きなどを取れてしまう。それを回避するために導入したのが、プレイ中に取れる行動を限定する『ミッションディスク』カードです」



自分のATをどう動かすかは選んだミッションディスク次第。カードを選んで行動計画を立てていくのだ。

プレイヤーはターン毎に行動できる内容が書かれたミッションディスクカードを3枚選択。「高速前進」は3マス分移動できるけど攻撃は不可、「中速/低速前進」なら移動しながら前方に攻撃可能だが命中率低め、「停止」なら広範囲に攻撃可能で命中率も高くなるといった違いがあり、たとえ相手の場所が分かっていても、これらをうまく組み合わせて攻撃範囲に捉えなくてはならない。
このミッションカードの選択の駆け引きで、戦場で神経を研ぎ澄ませながら敵を探りながら戦うAT乗りの気分が味わえるのだ。

サンライズ・渋谷「ボードゲームに馴れている人は複雑なルールでも大丈夫だろうけど、初心者はそれだとせっかくゲームを買っても投げ出してしまいますからね。そうならないように、できる限りシンプル・簡単に遊べるように監修しました」

国際通信社・松井「鈴木さんや私はSLGに馴れてしまっているので、初心者がひっかかってしまう部分になかなか気付きにくかったんですよね。今回の『VOTOMS TACTICS』のブラッシュアップでそれを実感しました」

ウドの治安警察VSキリコのスコープドッグ・レッドショルダーカスタムの戦いを描いた一人プレイ用入門シナリオをテストプレイ。数に分はあるが動かぬ戦闘車両を追い込んでいきながら、ルールやゲーム運びの基本が学べる。

■あの名バトルが蘇る! 劇中シナリオを多数収録

今回のゲームでは地上戦が展開された「ウド編」「クメン編」「サンサ編」の印象深いバトルの数々がシナリオとして収録。
ウド編は市街戦、クメン編は密林戦、そしてサンサ編では砂漠戦とそれぞれ異なる条件下のフィールドでの戦いを楽しめる。使用できるATも劇中に登場する主要機種16種類が揃っている。




ATごとに細かなパラメータや武装が設定されている。主役機といえるスコープドッグのバリエーションや、秘密結社のL級AT・ツヴァークなんてマニアックなATも用意されている。

鈴木「各ATのパワーバランスの調整が大変でしたね。改めて全話見直しながら、それぞれの強さを再確認しつつ、パラメータを調整していきました」


限定版にはATのミニチュアコマが付属。3Dプリンターで整形されているので小さいながらも緻密な造形となっている。

ルールを理解するための一人プレイ用シナリオや、バトリングのみに的を絞った「トライアルバトリング」も用意されているので、ボードゲーム初心者でも簡単にルールを学びながら楽しめる『VOTOMS TACTICS』。
追加ルールやシナリオなど、ゲームを更に拡張していく可能性もあるとのことなので、『ボトムズ』ファンはぜひとも遊んでみて、硝煙の匂いにむせるような戦いを堪能してほしい。

トライアルバトリングは、ゲームが難しすぎると感じる人のためにルールの一部だけを使って遊べるようにしたもの。初心者でもすぐにプレイ可能だ。

「VOTOMS TACTICS」

■発行:国際通信社
■発売日:2018年10月25日発売
■定価:4,600円+税
■内容物
●コマ117個(20mm角)
●カード48枚(44.5x68mm、3シート)
●マップ2枚(A2判・両面)
●ATデータシート26枚(16機種)
●6面体ダイス2個
●ルールブック1冊(24P)
●簡易ルール「トライアルバトリング」1枚

「VOTOMS TACTICS限定版」


■発売日:2018年10月25日発売(通常版と同時発売)
■定価:8,200円+税
■内容物
通常版の内容+ATミニチュア駒4種類(スコープドッグ、ブルーティッシュドッグ、ストライクドッグ、ファッティー)を同梱。

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