全日本スーパーフォーミュラ選手権 最終戦『第17回JAF鈴鹿グランプリ』に自力王座獲得の権利を残す者は3人。ドライバーズポイントリーダーのニック・キャシディ(KONDO RACING)は、当然ながらチャンピオン候補の最右翼と言えるドライバーだ。今季中盤からシリーズの主役のひとりとなったニュージーランド出身の若き実力者は、このまま先頭でゴールテープを切る手応えを感じているようだ。
スーパーGT500クラスではすでに2017年、シリーズチャンピオンに輝いているキャシディ。今季もGT500のタイトルを争いつつ、自身参戦2年目のスーパーフォーミュラでも第4戦富士で初優勝、そして24歳の誕生日(第5戦もてぎ決勝日)にタイトルレースのトップへとおどり出た。
スーパーGTでは残り1戦の時点でランキング1位タイ、スーパーフォーミュラは残り1戦時点でトップと“ダブルリーダー”の座にあり、ダブルチャンピオン、日本最高峰2冠が目前に迫っている。
「この2つのシリーズでともにトップに立っている状況(コメント時点)は、とてもスペシャルだよね。特にこの終盤に来ての状況だけに、そう思うよ」と、キャシディは2018年のクライマックスに向けて意気込む。
初戴冠を目指すスーパーフォーミュラは、最終戦鈴鹿を残すのみだ。その最終戦では、リーダーのキャシディのみならず、シリーズランキング2~3位の石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)と山本尚貴(TEAM MUGEN)にも自力王座の可能性が残っている。
キャシディは、圧倒的有利とはいえない4ポイント差でのランキングトップだが、「その状況は僕にどうこうはできないことだよね」と言って微笑む。ドライバーレベルもレースのクオリティも高度接戦が名物のスーパーフォーミュラで、独走戴冠など現実的ではないことを、キャシディは熟知しているのだ。
キャシディの鈴鹿でのスーパーフォーミュラ実戦は、開幕戦以来今季2度目。鈴鹿への印象について、キャシディは「必ずしもクルマのセットアップが合っているとは言えないだろうね」と、ライバルとの差を踏まえて客観的に答えた。
実際、今季開幕戦は7位、昨季開幕戦ではポイントを獲得できておらず(昨季最終戦は決勝レース中止)、確かに鈴鹿実績という意味では、タイトル争いのライバルで鈴鹿マイスターともいわれる山本(今季開幕戦を含め鈴鹿で4勝)に見劣る。
ただ、キャシディのコメントは「実績的には合っているとは言えない」と読み変えて考えるべきだろう。「今の我々は強くなっている。だから最終戦に向けても自信をもっているよ」と彼が言うように、今シーズンの開幕戦時点と今現在とで、タイトル有力候補3人のなかでもっとも成績が伸びているのがキャシディ&KONDO RACINGであることに疑いの余地はない。
ニック・キャシディ陣営に関しては、鈴鹿への適性云々よりも、現在の勢い、そしてマシンのベースの速さの向上を重視することは間違いなく、開幕戦の結果が"あてにならない"度合いが高いだろう。実際、過去にもそういった例はあった。
「自分自身としては、鈴鹿では全日本F3時代、そして、GT500でもスピードを発揮してきたと思っているし、今年のスーパーフォーミュラ開幕戦だって、我々のレースペースは優勝したヤマモトさんと比べてもそんなに遜色なかったと記憶している。そのことも自信につながっているよ」
さらにキャシディは続ける。
「(自力王座を狙う)3人にとっては、メンタル面の戦いにもなるだろう。そして僕は、強いメンタルで戦うことには自信をもっている。だから、あとはマシンのコンディション(セットアップ)に集中していくだけだ」
王座獲得経験のある先輩ふたりを向こうにまわしての戦いにも、この若武者に気後れはまったくない。
鈴鹿でのスーパーフォーミュラ初勝利を飾って堂々初王座へ、キャシディからは、確かな手応えが伝わってくる。2年目の初戴冠達成、その可能性は充分にありそうだ。