2018年10月25日 15:42 弁護士ドットコム
信号機がない横断歩道を歩行者が渡ろうとしても、9割以上の車が一時停止しないーー。日本自動車連盟(JAF)が10月25日発表した調査で心配な実態がわかった。止まってくれないことへの苛立ちに加え、渡っている際に急かすように詰めてくる車を不快に感じたことがある人もいるだろう。歩行者の通行を妨げる行為は、場合によっては、道路交通法違反で検挙される可能性があることを改めて認識したほうがよさそうだ。
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10月初旬の休日昼間のこと。東京都内の会社員女性(30代)が子どもを乗せたベビーカーをひいて、信号のない横断歩道を渡ろうとしていた。横断歩道の前で止まってくれる車はなく、5分近く待ってようやく車の往来が途切れ、渡ることができた。
ただ、渡り始めると別の不快感を抱いた。高級車がじりじりと横断歩道内まで迫ってきたのだ。運転手に目を向けると、「早く渡れ」と言わんばかりの厳しい表情。さらに、逆方向からもトラックが横断歩道内に入ってきて、他の歩行者が渡るのを急かしているようだった。
歩行者の中には、申し訳なさそうに頭を下げて横断歩道を渡る人もいた。ただ、女性は「別に信号を無視してこちらが渡っているわけでもないのに、なぜ歩行者側が頭を下げたり、車に急かされたりしなければいけないのだろう」と腑に落ちない様子だった。
道路交通法38条は、「歩行者や自転車がないことが明らかな場合を除いて、横断歩道の直前の停止位置で止まれる速度で進行しなければならず、歩行者や自転車がある場合には一時停止して、その通行を妨げてはならない」と定めている。違反すれば、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金に処される可能性がある。
警察庁交通企画課も弁護士ドットコムニュースの取材に「横断歩道における歩行者の優先が、運転者により励行されることが最も重要」とし、歩行者の横断を妨げるのは違反であり、取り締まりを行なっていることを強調した啓発をしているなどと回答している(昨年12月)。
JAF調査は、全国94カ所(各都道府県2カ所ずつ)の信号機がない横断歩道で、2018年8月15日~9月13日(平日のみ)を期間として行われた。対象となった1万1019台のうち、歩行者が渡ろうとしている際に一時停止した車は948台(8.6%)にとどまった。2016年の調査開始以降、7.6%(2016年)、8.5%(2017年)、8.6%(2018年)と増加傾向であるものの、依然として9割以上の車が止まらない結果となった。
8.6%は全国平均の数値だが、都道府県別でみるとどうだろうか。一時停止する率が低い順に並べたワースト10は、栃木県(0.9%)、広島県(1.0%)、三重県(1.4%)、和歌山県(1.4%)、青森県(2.1%)、東京都(2.1%)、岐阜県(2.2%)、宮城県(3.4%)、福島県(3.5%)、京都府(3.8%)だった。
一方、一時停止率が高い順に並べたトップ10は、長野県(58.6%)、静岡県(39.1%)、石川県(26.9%)、島根県(26.5%)、鳥取県(25.6%)、愛知県(22.6%)、福岡県(18.4%)、神奈川県(14.4%)、新潟県(13.8%)、千葉県(11.9%)だった。
調査場所は非公表とされており、この順位を見て「自分の実感と違う」と感じる人もいるかもしれない。JAFは「調査場所は各都道府県内で2箇所ずつですので、都道府県内すべての市町村の箇所で同様の数値(傾向)とは限りません」としている。
ただ単純計算で、長野県では100台のうち58台が一時停止するのに、栃木県では100台のうち1台が停止するかどうかというレベル。地域差が大きいことについて、JAF広報は「純粋に調べた数値を示しているだけで、その背景までは分析していない」と話している。
(弁護士ドットコムニュース)