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Nintendo Switchと『Nintendo Lab』がアメリカの小学校で教材に 学びと遊びの融合を実現か?

2018年10月25日 08:31  リアルサウンド

リアルサウンド

 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』『スプラトゥーン2』といったヒットタイトルをリリースして任天堂の復権を印象づけたゲーム機Nintedo Switchが、アメリカで新たな分野に進出する。進出に際しては、ダンボール製のあのキットも同行する。


(関連:プラモ愛好者が驚愕した『Nintendo Labo』の“説明”


学びと遊びの融合のために
 任天堂アメリカ法人は、23日、先進的な教育方法を研究するPlay研究所と共同してアメリカの小学校におけるSTEAM教育を支援する目的で、授業にNintendo SwitchとNintedo Laboを提供することを発表した。授業の対象者は、2018-2019年度の8~11歳の児童2,000名となっている。


 この発表に関して、同研究所の共同エグゼクティブ・ディレクターであるArana Shapiro氏は、「わたしたちは最良の学びと遊びの精神を結びつけるような道具とテクノロジーを常に探し続けているのですが、Nintendo Laboが学びと遊びの両方について刺激的かつ革新的なアプローチとなっていることに気づきました」と述べている。


 アメリカ国内のいつくかの小学校ではすでにパイロットプログラムが実施されており、このプログラムの成果を生かして教師用ガイドが作成される。パイロットプログラム終了後は、さらに100校の小学校でプログラムが実施される予定だ。そして、現在、このプログラムへの参加を希望する小学校を募集している。


好意的なアメリカメディア
 テック系メディア『The Verge』は23日、以上の任天堂の発表を報じた記事のなかでゲームが教材として利用された事例を紹介している。そうした事例にはMinecraftやCivilizationがあり、2016年にはサンフランシスコ公共図書館においてスーパーマリオメーカーのステージデザインを教えるクラスが設けられたこともあった。


 CNNは、コンサルティング会社WedbushのアナリストMichael Pachter氏によるNintendo Switchの批評を報じている。同氏が言うには、Nintendo SwitchはXboxやPlayStationと比べて、子供がプレイしていても親は安心するだろう、とのこと。というのも、Switichの多くのコンテンツが、アメリカのゲーム認証団体ESRBが定めるレーティングで6歳以上が対象とされる「E」であるからだ。


 アメリカ大手メディア『USA TODAY』は、パイロットプログラムを実施したアメリカ・ニュージャージー州のハイアワサ湖畔小学校の校長を務めるStephen Figurelli氏の発言を報じた。パイロットプログラムを目の当たりにした同氏は、「Nintendoの商品を使っていたので児童はすぐに授業にのめりこんでいました。何より児童がダンボールに命を吹き込んでいる姿を見ると、学びの体験が全く違う次元になっていることが分かりました」と絶賛している。


21世紀の人材に求められる「STEM」「STEAM」とは?
 任天堂の発表において言及されている「STEAM」の意味を理解するには、まず「STEM」を知らなければならない。STEMとは、「科学(Science)」「テクノロジー(Technology)」「エンジニアリング(Engineering)」「数学(Mathematics)」を意味する英単語の頭文字を集めた造語である。この4つの分野に関するスキルが国際競争力を左右するという認識のもと、こうしたスキルを伸ばす教育として「STEM教育」という言葉も生まれた。STEAMとは、STEMに表現力やデザイン思考を司る「芸術(Art)」を加えたものだ。STEAMの精神を体現している著名人には、筑波大学准教授の落合陽一氏やアーティストのスプツニ子氏が挙げられるだろう。


 現在、世界各国がSTEAM教育を重視した政策を実施している。日本において2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されるのも、STEAM教育政策の一環と見ることができる。また、文部科学省が作成した世界各国のSTEM教育に関するレポートによると、アメリカでは2020年までにSTEM分野の教員を10万人養成する計画を2013年に発表している。


 以上のように将来の国際競争力を左右するSTEAM教育の現場にNintendo SwitchとLaboが進出することは、任天堂のブランド力を大きく高めることにつながるだろう。


(吉本幸記)