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台湾・列車脱線事故で結婚式帰りの一家8人犠牲に 遺族が悲痛な叫び

2018年10月24日 17:23  Techinsight Japan

Techinsight Japan

最も被害が大きかった8号車(画像は『聯合新聞網 2018年10月23日付「普悠瑪ATP關閉 轉彎超速 司機員聲押」(記者鄭超文/攝影)』のスクリーンショット)
台湾北東部にある宜蘭県で21日午後4時50分頃、台湾鉄路の特急「普悠瑪(プユマ)」号が走行中に脱線し18人が死亡、190人が重軽傷を負う大事故が起きた。車両は8両編成で8両すべてが脱線、当時車内には366人の乗客がいた。『蘋果日報』『自由時報』『聯合新聞網』など複数のメディアが伝えている。

事故があったのは、新北市の樹林駅発台東駅行きの特急列車「プユマ6432次」。宜蘭県蘇澳鎮にある新馬駅付近で、高速スピードのままカーブに入り脱線した。検察当局は、初期段階の調査で事故の主要原因は速度超過とし、業務上過失致死容疑で運転士の身柄拘束を宜蘭地方裁判所に要求、運転士の取り調べを行っていた。

運転士は、動力系統に異常があったため自動でブレーキを動作させる自動列車防護装置(ATP)を切って動力を上げようとしたことを認め、次の停車駅で起動させなければならなかったが、異常報告のため司令員と通話しており、ATPを起動せずに運行を続けたという。裁判所は23日午前、運転士が口裏合わせによる捏造などを行う恐れはないとし、50万元(約180万円)で保釈し、出国を制限した。

なお運転士は、事故発生前に何度も異常を報告しており、通信記録から花蓮駅で列車を交換する予定になっていたことが分かっている。異常を知りながらなぜ運行を続けさせたのか、司令部は異常をどの程度把握していたのかなど、台湾鉄路の危機管理体制が問われている。

また報道によれば、この事故で亡くなった18人のうち9人は、結婚式帰りの家族と隣人だという。台東で海鮮料理レストランを営んでいた董進興さん(66歳)は1男3女の父親で、20日に行われた次女の結婚式に出席するため新北市を訪れ、帰りの列車で事故に遭った。一行は親戚や隣人、従業員など合わせて17人で、先頭車両の8号車と3号車に分かれて乗車していた。進興さんは最も被害の大きかった8号車におり、同車両にいた妻の王綠雲さん(64歳)、弟の董進發さん(65歳)、孫の董益良さん(9歳)と佳惠さん(12歳)、妹の董玉蘭さん(60歳)とその夫・何發仁さん(67歳)、姪の何青宴さん(36歳)、隣人の曾訓孺さん(69歳)が死亡、そのほか親戚や従業員の4人が重傷、1人が軽傷を負った。董進興さんは漁船の船長でもあり、台東の漁業界では名の知れた人物だったそうだ。妻の王綠雲さんも漁業組合の理事を務めるなど、漁師の権益保護のため夫婦で積極的に活動し、地元の人々から慕われていたという。

事故後、現地メディアの取材を受けたのは、進興さんの長女・董小羚さん(43歳)だ。小羚さんは現在高雄に住んでおり、結婚式の後に一行を駅で見送ると、一人高雄行きの新幹線に乗った。しかし高雄に着いたところで、三女である妹からの電話を受けたそうだ。三女は事故当時3号車に乗っており、横転した列車から自力で脱出したという。

小羚さんが三女から聞いた話では、列車は台北を出発してから3度停電のトラブルがあり、乗客らは顔を見合わせ不安を募らせていたそうだ。3回目の停電の後に列車が停止し、車両の異常を伝えるアナウンスが流れた。電気が復旧すると再び発車したが、宜蘭駅を出てまもなくすると突然加速、そして脱線したとのことだ。

「当初はこの列車に乗る予定ではなかった」と話す小羚さん。実は結婚式の後、すぐに台東へ帰ることになっていたそうだ。しかし進興さんが「せっかく遠出をしたのだから、もう一日遊んで行こう」と言い、急遽予定を変更したという。小羚さんは、「病院に来てみたら亡くなった18人のうちの半分が自分の身内だった。やりきれない」と泣き崩れ、慰問した蔡英文総統に一刻も早い事故原因の究明を求めた。

益良さんと佳惠さんの父親であり、進興さんの唯一の息子である董民海さんは結婚式に出席した後、別の用事のため中国に向かっており、列車には乗車していなかった。益良さんの遺体回収にあたった捜索隊員によれば、益良さんは恐怖に怯えた表情のまま亡くなっており、いたたまれずに「怖くないよ。家に帰ろうね」と何度も声をかけながら運んだという。両親と我が子を一度に失った民海さんは、スピードを上げた運転士の判断や、列車の異常を知りながら運行を続けさせた台湾鉄路の判断に疑問を感じずにはおられず、明確な説明を求めている。

画像は『聯合新聞網 2018年10月23日付「普悠瑪ATP關閉 轉彎超速 司機員聲押」(記者鄭超文/攝影)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)