F1第18戦アメリカGPにおけるキミ・ライコネンの優勝は、フェラーリが強さを取り戻した兆しのようにもみえる。だがセバスチャン・ベッテルによると、今回のパフォーマンスの上昇やその背景について考えると、良い知らせと悪い知らせの両方が読み取れるという。
フェラーリとベッテルのタイトル獲得が難しくなった要因は、部分的には夏休み明け以降続いていたパフォーマンスの低調にある。この事態に直面したフェラーリのエンジニアたちは、数カ月分に相当するアップデートをいちど破棄して、フェラーリSF71-Hをそれ以前のスペックに戻すことを決断した。
この決断が正しかったことは、オースティンにおけるマシンのペース上昇やライコネンの優勝によって実証された。ただベッテルについては、1周目でレッドブルのダニエル・リカルドとホイール・トゥ・ホイールで接触を起こし、後方に転落。勝利の可能性は早々に遠のいていた。
ベッテルは、結果論ではあるものの、SF71-Hのスペックを戻すという決断が遅すぎたのだと考えている。
「決断するまでが長すぎた。これは良い知らせでもあるけれど、悪い知らせと見ることもできる」とベッテルは話す。
「考えてみれば、競争力が高かった3、4カ月前のマシンに戻さなければならないということは、良い知らせとは言えないからね」
「僕たちとしては、技術面において何が悪くなってしまったのかを理解することが重要だ」
ベッテルは、チームとしてマシンのアップデートとパフォーマンスレベルを的確に比較し、査定しきれなかったのだと語った。
「当然、僕たちはマシンが以前ほど強くないと感じていた。だけど、特に悪い箇所が見つからなかったから、何が問題なのか分かりようがなかったんだ」
「検証した全工程で問題はないように見えたんだけど、今思えばそうではなかったということになる」
「明らかに僕たちは何かを見落とした。しかもなぜ、どこで間違いが始まったのかを、まだ自分たちで把握できていないんだ」
「だから僕たちにはやるべきこと、理解すべきことがたくさんある。けれど必要な作業を行えば、問題を乗り越えられると確信しているよ」
夏以降、ベッテル自身が関わったいくつものミスやアクシデントも、おそらくはチームの技術的問題と相まっていたであろうことを、本人も否定しない。
「技術の問題に加えて、自分もいくつものミスを犯していたことは事実だよ」
「いくつかの出来事があって、どれも僕たちには良い作用をもたらさなかった。だけど、そのなかでも決定的だと思うのは、シーズンの後半からコース上で全力で戦うためのスピードがなくなったということだ。そこに他の出来事が重なって、さらに悪くなったんだと思う」
「全体としてみれば、僕たちはもっと強くなる可能性を持っているはずだ。まだまだ成長し、学んでいく必要がある。だからシーズンオフを通して、僕自身を含めたチーム全員が、多くの要素を再検証していかなければならない」