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【崖っぷち折原コラム】わずか3パーセントでコントロールするスーパーGT。ドライビングシューズとペダルのセンシティブな関係

2018年10月24日 11:51  AUTOSPORT web

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富士スピードウェイで行われたWEC第4戦富士6時間耐久選手件の現場で、スーパーGTでTEAM IMPULのカルソニック IMPUL GT-RからスーパーGTに参戦している佐々木大樹を見かけた。

 大樹の足元を見ると、レーシングシューズを履いていた。今回のWEC富士で、大樹はWECにエントリーをしていたわけではない。ということは、新品のシューズの慣らしをしていることは理解できるのだが、雨上がりでまだ路面が濡れている状況でどうしてなのか。声をかけてみた。

佐々木大樹(以下、大樹)「この前のもてぎのテストで、シューズの底に穴が空いちゃったんですよ。ここで慣らしておかないと、(翌週のスーパーGT)オートポリスに間に合わないんですよ」

──慣らしは大事だよね。でもGTだからクルマは重いし、フォーミュラほど気を使わないんじゃないの?

大樹「そんなことないんですよ。今のGT500のマシンは、すごくナーバスなんです。たとえばアクセルも5%踏むと踏みすぎることが多いんです」

──えっ、5%で? 5%って全開から全閉まで20分割だから、それ以上の感覚でアクセルワークしてるということ?

大樹「はい。コーナリングのボトムスピードを限界まで上げると、3%くらいでコントロールしないとリヤが出ちゃいます。もちろんマシンの状態、路面のコンディション、コーナーのキャラクターにもよりますけど、だいたい3%くらいの感覚でコントロールしてますね。」

──レース終わったら、足がつりそうな話だな。

大樹「はい。弁慶の泣きどころの筋肉が、ヤバイことになります」

──そうか、1トンのマシンでもパワーウェイトレシオ(重量出力比/加速性能の目安となる)は1.3kg/psくらいだもんな(市販車の平均は15~18kg/ps、F1マシンで約0.8kg/psと言われる)。

大樹「だいたいそのあたりですかね。パワーウエイトを考えるとスロットル操作は、そういう数字になるんです。これはブレーキでも言えることで、アクセルほどではないけど微妙にコントロールするんですよ」

──そうなると、より馴染んだシューズが必要だよな。だいたいどれくらいで、馴染んだ感じになるの?

大樹「新品でレースに使ったことがないので、2-3テストくらい使えばなんとかいけると思います。馴染むといってもアッパーの皮の部分だけじゃなくて、ソールの硬さも重要なんです。硬いときと使い込んだときでは、フリクションが違うので、だいたい使いやすくなったころに穴があくんですよ」

──『レーシングシューズあるある』だな。それにしても、本当に微妙な操作が要求されるんだな。外からだと、そこまで分からなかったよ。

大樹「あんなに大きくて重そうに見えるクルマですからね、そんな細かい操作してるとは思いませんよね」

──そうなると、タイヤも同じようにマネージメントしてるの?

大樹「もちろん同じような数字で、考えながら操作してます。でもタイヤはもっと奥深いですよ」

 タイヤの話はまた、次回聞くことにしてその場は別れた。それにしても、今のスーパーGT500クラスのマシンは、なんと繊細なコントロールが必要なことか。しかも、その繊細さでほとんど失敗しないのがGT500ドライバーなんだそうだ。これから、レースの見方が、さらに変わりそうな面白く奥深い話を聞けた。

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折原弘之 1963年1月1日生まれ
1980年の東京写真専門学校中退後、鈴鹿8時間耐久レースの取材を皮切りに全日本ロードレース、モトクロスを撮影。83年からアメリカのスーパークロスを撮影し、現在のMotoGPの撮影を開始する。90年からMotoGPに加えF1の撮影を開始。現在はスーパーフォーミュラ、スーパーGTを中心に撮影している。