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ど田舎ドライブ中、ホテル拒否の女性を「置き去り」 非道男への罰を考える

2018年10月24日 10:52  弁護士ドットコム

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「ど田舎」をドライブデート中、車から降ろされ「置き去り」にされたーー。想像するだけでもつらい体験にあったという女性から、弁護士ドットコムに相談が寄せられた。


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相談者は、交際していない男性の車に乗ってドライブデートをしていたという。途中で、ホテルに連れて行かれそうになったため「頑なに拒否」したところ、男性は激怒。車から降ろされて、見ず知らずの田舎に置き去りにされたという。


「どこだかわからない田舎で、私は交番や駅を探すのにひと苦労でした」と相談者。こうした仕打ちをしてきた男性を罪に問いたいと考えている。こうした場合、男性を何らかの刑事罰に問うことはできるのか。吉田要介弁護士に聞いた。


●立証ハードルは高いが、監禁罪は成立する可能性

ーー男性を刑事罰に問うことはできるでしょうか


「置き去りにしたことから、保護責任者遺棄罪(刑法218条)に問えないかが考えられますが、同罪は『老年者・幼年者・身体障害者・病者』を保護する責任がある者にしか成立しません。おそらく相談者の方は、『老年者・幼年者・身体障害者・病者』には該当しないと思われますので、同罪は成立しないと思います。


次に、そのような場所に連れて行ったと考えて、遺棄罪(刑法217条)に問えないかが考えられますが、同罪は『老年・幼年・身体障害・疾病のために扶助を必要とする者』を遺棄しないと成立しませんので、『老年者・幼年者・身体障害者・疾病のために扶助を必要とする者』に該当しない今回のケースでは、同罪は成立しないと思います」


ーー他に何か可能性はありませんか


「監禁罪(刑法220条)は成立する可能性があります。監禁とは、人が一定の区域から出ることを不可能又は著しく困難にすることをいい、被害者が自らが監禁されているとの認識を持たなかった場合でも、騙された被害者を、一定の区域から出ることが不可能又は著しく困難にしていれば、監禁罪は成立します。


本件でも、男性が女性をホテルに連れて行くつもりでドライブデートに誘い、車に乗せて、移動していれば、女性を騙して、車という一定の区域から出ることを不可能又は著しく困難にしているといえ、監禁罪が成立します。ただ、実際には、当初から男性にその意思があったという立証することは容易ではないと思われます」


●置き去りに伴う交通費など、賠償請求は可能

ーー民事で慰謝料請求するなど、何かできることはあるでしょうか


「監禁罪の成立とは別に、見ず知らずの田舎に置き去りにされれば、そこから自宅等まで帰るために必要な交通費等、置き去りにされたことによって、増加した損害については、損害賠償を請求することは可能です。


もっとも、慰謝料については、認められるとしても少額にとどまると思います。ただ、監禁罪が成立する場合であれば、示談交渉の中で、罪を軽くするべく、高額な慰謝料を相手が認める可能性はあると思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
吉田 要介(よしだ・ようすけ)弁護士
千葉県弁護士会所属。日弁連子どもの権利委員会事務局次長、千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。法律を「知らないこと」で不利益を被る人を少しでも減らすべく、刑事事件、少年事件、家事事件、一般民事事件等幅広く手がけ、活動している。
事務所名:ときわ綜合法律事務所
事務所URL:http://www.tokiwa-lawoffice.com