第11戦終了後、抱き合う菅波冬悟と吉本大樹 2018年のFIA-F4選手権第6大会が10月20~21日にオートポリスで開催され、予選では菅波冬悟(OTG DL F110)がWポールを獲得。決勝でも菅波が第11戦で後続を一切寄せつけず初優勝を飾ると、続く第12戦でも連勝を果たすこととなった。
2018年のFIA-F4はオートポリスが舞台の第6大会を前に、すでにチャンピオン候補が3人に絞られていた。しかもポイントリーダーの角田裕毅(HFDP/SRS/コチラレーシング)は、ランキング2位の名取鉄平(HFDP/SRS/コチラレーシング)にも40ポイント差、同3位の小高一斗(FTRSスカラシップF4)にも61ポイント差をつけていたこともあり、このふたりの結果次第では、もてぎでの最終大会を待たずしてチャンピオンを決める可能性さえあった。
木曜日と金曜日に行われた専有走行では、4セッションすべて角田がトップタイムを記していたこともあり、かなりそれが現実味を帯びたかのように思われていた。
しかし、土曜日になって予選を迎えると、状況は激変。まずベストタイム、セカンドベストタイム共にトップタイムを記して、初めてのポールポジションを2戦連続で獲得したのは菅波だった。
専有走行では一度もトップ10にさえ入っていなかったが、「練習までは苦戦していたんですけど、マシンのバランスを変えて、乗り方ももう1回徹底して見直したら、かなり気温が下がったコンディションとクルマがマッチして、タイヤのピークの時にミスなくまとめた周回が2回できて。それが良かったかなと」と菅波。
「ただ、今週はコロコロ(気温や路面)温度が変わるので、同じ状態では走れないと思うので、そこをいかにアジャストするか、そのへん心配ではあるんですが、自信を持ってレースも頑張りたいと思います」
一方、2番手から4番手までも、2戦とも同じ顔ぶれ。小高、角田、名取の順で並んだものの、このうち角田がコースアウトでリヤタイヤを痛め、2本とも交換を余儀なくされたため、なんと2戦とも最後尾スタートを強いられることとなってしまう。これで小高と名取には、願ってもないビッグチャンスが訪れたものの、菅波の存在が大きく影を落とした。
第11戦では初めてのポールスタートだったにも関わらず、鋭いダッシュを見せた菅波は小高と名取を抑えて1コーナーに進入。しばらくの間は3台でトップ争いを繰り広げていたが、4周目には菅波は1秒の差をつけるようになり、徐々に広げていくことに。
一時は2秒離すも、「ジェットコースターストレートの先で、ハーフスピンしかけるぐらいリヤが出」てしまい、小高をラスト2周で近づけた菅波だったが、辛くも逃げ切り果たして初優勝を飾る。
「予選とのコンディションの変化には上手く対応してもらいましたし、逃げるのに必死でしたが、意外とトップを走っていたら集中できたというか。飛び出さないように、ミスしないようにタイム刻むことだけ考えて走ることができました。86レースで経験させていただいていることが、大きく出ているとも思います」
3位は終盤、単独走行となった名取が、そして4位は川合孝汰(DENSOルボーセIPG F4)が獲得した。一方、最後尾スタートとなっていた角田は、激しく追い上げて8位でフィニッシュ。抜かれたドライバーは、まるで抗う術を持っていなかったかのような印象を受けたほどのオーバーテイクショーだった。
第12戦では「昨日は初めてポールからのスタートということで、少し気合が入りすぎていたんですが、一度勝ったことで余裕を持っていけました」と菅波が絶妙のスタートを決めて、今度はオープニングラップのうちに小高を引き離す。
その後ろでは名取も好スタートを切っていたが、小高の牽制を受けて前に出られなかったばかりか、虚を突かれる格好で大滝拓也(SRS/コチラレーシング)の先行を許していた。
早い段階から菅波と小高が単独走行となった一方で、激しく繰り広げられたのが大滝と名取、石坂瑞基(TOEI BJ Racing F110)と川合による3番手争いだ。それぞれ牽制し合う様子が何度も見られたものの、オートポリスは抜きにくいコースとあって、なかなか順位が入れ替わらず。だが、8周目の1コーナーでようやく名取が大滝をかわして3番手に浮上。
その間にも菅波はまったく危なげない走りを見せて、最後はほぼ3秒の差をつけて連勝を飾ることとなった。
「昨日とは気温とか路面とか、タイヤの磨耗具合とか、いろいろ違うところがあったのに、しっかりマシンをアジャストしてくれたチームに感謝です」と菅波。
「ただ、今日の後半もアンダーが出たりしたんですが、苦しい状態を練習で経験済だったんで、走りのレパートリーを持っていたように思うんです。そうなるのが分かって対応できたというか。だから昨日より勝つべくして勝ったかなと」
「今日は僕の前に、もう1台いると思って、最後までフルプッシュしたのが良かったです。こうなったら、決して簡単なことではないんですが、4連勝を目指したいと思います」
小高と名取が2戦とも2位、3位でゴールしたのに対し、角田は第12戦では11位に入るのがやっとで、ノーポイントに終わっている。その結果、角田の202ポイントに対して、名取は188ポイントと14ポイント差にまで迫り、小高も173ポイントで29ポイント差にまで迫った。
また、この連勝で菅波はランキング5位まで浮上。22ポイント差にまで詰めた川合を逆転できるかも焦点になる一方で、川合が第1戦から、ただひとり続けている入賞を全戦で達成できるかも、ツインリンクもてぎでの最終戦で注目すべき要素になりそうだ。
2018年のFIA-F4選手権、最終ラウンドとなる第7大会は11月10~11日にもてぎで行われる。