2018年10月23日 09:42 弁護士ドットコム
IT長者の象徴ともいえる「ストックオプション」。会社が上場して、株価が上がれば、巨額の富を得る可能性があります。行使する時期によって金額は変わるし、行使しなければただの紙切れですが、離婚の際の財産分与ではどう扱われるのでしょうか。
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弁護士ドットコムにも具体的な質問が寄せられています。相談者(女性)によると、夫が結婚後にベンチャー企業に転職し、現在は役員をしているそうで、「ストックオプションを会社からもらっていて近々上場予定であり、行使すればかなりの額」になるといいます。それを踏まえ、ストックオプションの行使により得た利益が財産分与の対象になるのかを気にしているようでした。
ストックオプションは、離婚時の財産分与の対象になるのでしょうか。川見未華弁護士に聞きました。
「財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産です。ストックオプションも、結婚後に取得したのであれば、原則として、財産分与の対象になるでしょう。
結婚前の取得であれば、夫婦が協力して形成した財産とは言えませんので、仮に結婚後に行使したとしても、財産分与の対象とはならないと考えられます」
では、結婚後に取得した場合について、価格はどうなるのでしょうか。
「価格については、結婚後に取得したストックオプションを婚姻中に行使した場合には、通常の株式と同様に、現在の株価が基準となるでしょう。
ただ、離婚時に行使していない場合には、単なる『新株予約権』であり、その価格(利益)が確定していないため、いくらと評価すべきかが問題となります。
特に、ストックオプションに譲渡制限がついている場合は、妻が譲り受けることは難しいと思われるため、金銭での分与を受けるしか方法はなく、価格評価がより重要となります」
どのような評価方法が考えられるのか。
「ストックオプションの評価額算定にあたっては、権利行使価額、株式の時価、行使期間、株価変動率等様々な要素が関連すると考えられ、複雑で不確定な部分が多いところです。暫定的に、離婚時の株価と行使(予定)価額との差額を基準とすることも一応考えられますが、本当に利益が出るかは、行使してみないとわからないという不安定さもあります。
最終的には、当事者間の話合いで決めていくことが必要になるでしょう。ストックオプションの行使期間の終了が近い場合には、あらかじめ、分与割合を決めておき、行使後にその確定した金額にしたがって分与を受ける旨の合意をしておく方法も考えられます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
川見 未華(かわみ・みはる)弁護士
東京弁護士会所属。家事事件(離婚、DV案件、親子問題、相続等)及び医療過誤事件を業務の柱としながら、より広い分野の実務経験を重ねるとともに、夫婦同氏制度の問題や福島原発問題等、社会問題に関する弁護団にも積極的に取り組んでいます。
事務所名:樫の木総合法律事務所
事務所URL:http://kashinoki-law.jp/