今年3月、アイドルグループ「愛の葉Girls」のメンバー・大本萌景(ほのか)さん(当時16)が自殺した。所属事務所は萌景さんが脱退したいと告げると、LINEで「次また寝ぼけた事言いだしたらマジでブン殴る」などと返していた。
遺族はパワハラや過酷な労働環境が自殺の原因だったとして、所属事務所を相手に訴訟を起こしている。これだけでなく、アイドルと所属事務所の間で訴訟に発展するケースはあとを絶たない。
10月17日放送の『モーニングCROSS』(TOKYO MX)でもこの問題を採りあげた。10代でマーケティング企業を創業した椎木里佳(20歳)さんは、アイドルを商品として扱う、「アイドルになりたい女の子たちを利用する大人たち」を批判した。(文:okei)
「レッスン料など費用がかかっている」と安月給や無給を強要
椎木さんは、アイドルが搾取される理由として、事務所側に「売れない間もサポートする」という大義名分があると説明した。
「レッスン費や教育費、ライブ費用がかかっているよね、それをまかなっているから安月給でもしょうがないだろという理由と、実は韓国ではもっと酷くて、合宿所に住まわされ(中略)費用がかかるため、デビューしてから返してねとなっている。最初の2年は無給で働くんですよ」
そのため「アイドル業界はそういうもの、海外でも当たり前になっているんだから」などと押し付けられてしまうという。
アイドルは「夢を与えるビジネス」のため、アイドルが給料アップを事務所に訴えても「ファンが聞いたらどう思うかな?」などとプレッシャーをかけてくることも。椎木さんは、「お金にがめついと思われてはいけないという、強迫観念があるのではないか」と推測している。
「契約書を正しく見られない若者」に、「金ヅルを探す」スカウトたち
さらに、「アイドル志望の子たちは15~20歳の学生が多く、契約書を正しく見ることは厳しい。親も子どもの夢を応援するため、おかしいと思っても承諾してしまう」とも指摘する。
それつけ込む「事務所が悪質」で、椎木さんが特に感じると話すのは、東京・原宿にいるスカウトの悪質さだ。
「竹下通りのスカウトの方が、本当に全ての女の子に声をかける勢いなんですよ。 声をかけて引っかかった子に全部仕掛けるみたいな感じなので」
「声かけられた子は嬉しいけど、スカウトした方は彼女たちが可愛いというよりは、とにかくもう金ヅルを探してるみたいな」
その上で椎木さんは、「アイドルは商品ではない」、彼女たちには「学校があるし人生がある」と主張した。改善すべき点として、
「大人が契約書をサポートする」
「握手会など運営負担が少ない所は全額ボーナスのように支払う」
「学業優先にする」
を掲げた。特に学業については、「一番大事で、親も間違えがちになる」と強調。学校を辞めてまでアイドル活動をする人が多いことを危惧し、改めて周囲がサポートする必要性を説いていた。
世の中が「夢を諦めにくいシステム」であることの弊害
ライターの金泉俊輔氏は、自らの取材経験から、「アイドル市場は需給が狂っている。 アイドルが好きな人の数は限られているのに、アイドルになりたい人が多い。そこを大人がビジネスに使ってしまっている。だから悪循環なんですよね」とコメントした。つまり、アイドル市場は飽和状態なのだ。
さらに、「いま世の中の教育が『ナンバーワンよりオンリーワン』になっているので、なかなか『夢を諦めにくいシステム』になってしまっている」と辛い状況を指摘。誰だって自分が主役の人生を送りたいものだが、夢をかなえる人は一握りだ。
椎木さんはこれに同意し、大学でも「ユニドル」など無所属で活動している人が多いが、「そこにつけこんでくる大人がいることをわかっておくべき」と、再び念を押していた。