MotoGP日本GPにワイルドカードとして参戦した、中須賀克行(ヤマルーブ・ヤマハ・ファクトリー・レーシング)。20番手という後方グリッドから追い上げ、ポイント圏内の14位フィニッシュを果たした。レース後半、後ろに迫った中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)の存在を知り、中須賀の闘争心に火がついたと言う。
初日、2日目のフリー走行3回目までいい流れをつくってきた中須賀だったが、フリー走行4回目で転倒。この転倒が響いて予選でもリズムを取り戻せず、獲得したグリッドは20番手と後方に沈んだ。
しかし、中須賀はグリッド位置について、あまり気にしていなかった。
「去年も(グリッドが)後ろだったので、あまり気にしてはいません。ただ、やっぱり予選グリッドというのは非常に大事なので、20番手、後ろから2列目っていうのは非常に辛かったですね。難しい現状はあるのですが、出る以上は負けたくないし、なんとかしていかないといけないなと思いました」
20番手から次第にポジションを上げていった中須賀は、11周目には16番手にまで追い上げていた。
「タイヤがたれても、コンスタントに後半でしっかりタイム出すこともできました。ただ、序盤のタイヤがおいしいうちにしっかり仕掛けることができませんでした。本当は(カレル・)アブラハム選手などをパッと抜いてハフィス(・シャーリン)たちの後ろにつきたかったのですが……。アブラハム選手がこけたときには、時すでに遅しの状態で、単独走行になりました」
しかし、その中須賀の背に、日本人のフル参戦MotoGPライダー、中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)が迫る。全日本ロードレース選手権でも、後ろに誰がついているのか、というサインは中須賀に出ないと言うが、今回は違った。
すぐ後ろに中上がいることを知らない中須賀に、チームは『中上が後ろにいる』というサインを出したのだ。
「(後ろに)誰かいるのは知っていて、誰かなと思ってはいましたが、中盤に“TAKA(中上)”ってサインが出たとき、なお火がつきました。お互いに負けたくないと考えていたと思いますから。そういったなかで、なんとか抑えられたのはひとつの収穫です」
「(サインは)勝手に出されたんですけど、みんな思いは一緒だったんじゃないかなと思います。(後ろにいるのは)日本人ライダーだぞ、って」
中須賀は、中盤に1秒以内の差で自身を追う中上に一度も前を譲ることなく、14位でチェッカーを受けた。
そんな中須賀が決勝レースでマシンに施したセッティングは、ヤマハのファクトリーライダーであるバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ・MotoGP)などと同じだったという。ヤマハのMotoGPマシン、ヤマハYZR-M1の開発ライダーといての役割も担う中須賀は、「こちらはこういうセッティングでいくよ、と情報を伝えたところ、あちらも同じだったんです」と明かした。
MotoGPクラスのワイルドカードとして、ヤマハMotoGPのテストライダーとして、日本GPで活躍を見せた中須賀。全日本のエースライダーとして、その実力を発揮した。