2018年10月22日 11:02 弁護士ドットコム
会社の「飲み会」参加のために、宿泊する人はいないはずだ。しかし、物流系企業の営業支店で働く山本さん(千葉県在住、30代女性)は半年に1度、東京本社の幹部たちが夜に開く「慰労会」に参加するため、いつも自腹で近くのビジネスホテルに宿泊することになる。終電には間に合わないからだ。
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山本さんによれば、「営業スタッフのための慰労会」という名目で招集される。「実際は今後の方針を聞いたり、業績の振り返りをしたりする業務色の強い場です。支店の位置付けを知ることもできますし、幹部たちに名前を覚えてもらう大切な機会になっているのですが、問題は時間帯です」と話す。
18時に都内の飲食店で始まり、そのまま2次会、3次会と続き、だいたい1時すぎに解散となるそうだ。参加するのは関東近郊の各支店から約20名ほど。山本さんの勤務地は都心までのアクセスが悪く、14時には営業所を出る必要があるが「この日の業務は14時まで。それ以降は移動の時間として認められています」と話す。普段の終業時間は18時だ。
「全員が3次会まで出席しますし、大切な話もあるので、誰も途中で帰りません。体力も落ちており、ネットカフェやサウナで止まるのは無理。結局、1万円くらいのビジネスホテルに泊まらざるを得ません」と山本さんは悔しそうな様子だ。
業務色の強い飲み会のようだが、こうした場合、ホテルの宿泊費用を会社が負担する義務はないのだろうか。大西敦弁護士に聞いた。
「ホテルの宿泊費用を会社が負担する義務があるかどうかは、飲み会へ参加していた時間が『労働時間』に当たるかどうかによって、異なってきます。
労働時間に当たるということになれば、ホテルの宿泊費用は経費となりますし、午前1時過ぎまで飲み会が行われていたということであれば、宿泊費用だけではなく、残業代も認められるということになります」
労働時間かどうかは、どのように判断されるのか。
「労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。今回のケースでは、飲み会への参加が義務付けられていたか、参加が余儀なくされていたかが問題となります。会社が飲み会への参加を命令していない、飲み会へ参加しなかったとしても、人事考課には影響しないということであれば、労働時間には該当しないように思います。
しかしながら、本来は18時終業であるが、移動のため14時に業務を終えることを支店側が容認しているとのことです。14時以降の給与も支払われるわけですから、会社が移動時間を労働時間と評価しているということになります。
移動時間を労働時間としておきながら、飲み会へ参加していた時間を労働時間としないのは、不自然なようにも思いますし、会社が積極的に飲み会への参加を促しているような場合は、飲み会への参加時間が労働時間であるとの判断に傾くのではないかと思います」
結論として、山本さんは会社に対して、懇親会への出席は「労働時間」にあたるとして、残業代、宿泊費用を請求するべきだろう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
大西 敦(おおにし・あつし)弁護士
2004年弁護士登録、東京弁護士会所属。2015年に千代田区神田神保町において、大西法律事務所を開設。労働組合の顧問弁護士を始め、労働事件を労働者側、使用者側で多数受任している。
事務所名:大西法律事務所
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