スーパーGT第7戦オートポリス、GT500クラスを制したKeePer TOM’S LC500 10月21日 (日)、大分県・オートポリスでオートバックス・スーパーGT第7戦・決勝が行われた。秋らしい好天に恵まれたサーキットには、多くの観客が来場。当日券を購入しての来場も多く、サーキット周辺は朝から渋滞が発生。盛況のうちに、65周・300kmの決勝が行われた。
タイトル争いもいよいよ大詰めにさしかかっているということで、各所で迫力あるバトルが展開されたこのレースを制したのは、KeePer TOM'S LC500。2位にはau TOM'S LC500とトムスが1-2フィニッシュ。3位には2ピット作戦を成功させたWedsSport ADVAN LC500が入った。前回のSUGOで優勝し、ポイントリーダーとしてオートポリスを戦った山本尚貴、ジェンソン・バトン組のRAYBRIG NSX-GTは5位入賞となっている。
午後0時25分から20分間に渡って行われたウォームアップ走行で、決勝に向けてのクルマの状態を確認した各チームは、続いてダミーグリッドに着く。大勢の観客がグリッドウォークを楽しむ中でも、チームは決戦に向けてギリギリまでグリッド上で、あるいはピット内で作戦面を含めて準備を進めた。
気温17℃、路面温度35℃というコンディションのもと、いよいよ午後2時に大分県警の先導によるパレードラップがスタート。それに引き続きフォーメーションラップが行われた。2周の隊列走行が終わり、シグナルグリーンになると、1コーナーに向けて一気に加速していく。
ここでホールショットを奪ったのは、ポールスタートのARTA NSX-GT、伊沢拓也。2番グリッドのKEIHIN NSX-GT、小暮卓史もそれに続いた。その後方では、早くもポジションに動きが。スタート直後の1コーナー手前でau TOM'S LC500の中嶋一貴が、予選3番手につけていたRAYBRIGのバトンを攻略。3番手に浮上する。その後方、予選5番手からスタートしたKeePerのニック・キャシディも一貴に続くべく、バトンに仕掛ける。
キャシディは2コーナーでダートにはみ出しながら、バトンの前に出ようとしたが、ここはバトンも譲らず。キャシディは5番手のまま周回を重ねることに。一方、一貴の勢いは、その後も衰えず、2周目には前を行くKEIHINの背後にピタリ。攻略のタイミングを計っていた。また、その後方では6番手争いの集団が超接近戦のバトルとなった。
その後、トップが5周目を終えたあたりからは、トラフィックが現れ始め、順位にも変動が出てくる。まず7周目にはスタート直後から争っていたKeePerがRAYBRIGを攻略し、4番手に浮上してくる。ほぼ同じ頃、2番手争いも白熱。auの一貴が8周目の1コーナー手前でアウトからKEIHINに並びかけたが、ここは小暮がポジションを守った。
また後方では、7周目にカルソニック IMPUL GT-Rのヤン・マーデンボローがWedsSportの山下健太をオーバーテイクし、9番手まで浮上してきたが、その後、山下がポジションを取り返した。WedsSportは、さらに8周目にはWAKO'S 4CR LC500を交わして8番手まで浮上。また、同じ周にはZENT CERUMO LC500の立川祐路がMOTUL MUGEN NSX-GTの武藤英紀を攻略して6番手まで浮上してくる。予選で上位を占めたホンダNSX勢がタイヤの摩耗の影響からかペースダウンし、代わってレクサスLC500勢が順位を上げてくる形となった。
■auの中嶋一貴がオーバーテイク連発でトップへ
さらに、10周目に入ると周回遅れのGT300クラスなどのトラフィックの影響もあり、トップ3の戦いが接近。1つの集団となる。その中で、再三チャンスを狙っていたauの一貴が11周目の第2ヘアピンでKEIHINのインに飛び込むと、ジェットコースターストレートで真横に並びかけながらオーバーテイクに成功。この時、2台はサイド・バイ・サイド状態で軽く接触。KEIHINは左側のミラーを失っている。対する一貴は、その勢いを保ったままARTAに追いつくと、メインストレートで並び、1コーナー手前までにトップに躍り出た。一旦トップに立つと、auは2番手以下に対して、どんどんギャップを築いていった。
スタートから15周を終えると、ピットでは早くも動きが。11周目にMOTUL NSXを捉え、その時点で7番手まで浮上していたWedsSportがピットイン。給油とタイヤ交換だけを終えると、ドライバーは山下のままコースに戻った。WedsSportはドライバー交代のためにもう1回ピットに入らなければならない2回ピット戦略が判明したが、この1回目に入ったタイミングがのちに生きてくることになる。
この頃、コース上で争いが激しくなっていたのは3番手争い。KeePerのキャシディが、1コーナーのブレーキングでKEIHINに迫ると、第1ヘアピンでも攻略のチャンスをうかがう。さらに、その後方では、8番手争いも激化。MOTUL NSXを先頭に、カルソニック、DENSO KOBELCO SARD LC500、MOTUL AUTECH GT-R、フォーラムエンジニアリングADVAN GT-Rまでが1つの集団となっていた。
その中で、18周目の最終コーナーに差し掛かったところで、MOTUL NSXがコースオフ。DENSOが上手く隙をつき、8番手に浮上。カルソニック、MOTUL GT-R、フォーラムエンジニアリングが続いた。また、20周目には、1コーナーでZENTがRAYBRIGをインから並んでオーバーテイク。5番手まで浮上してきた。
ちょうどその周、GT300クラスのTOYOTA PRIUS apr GT 30号車が最終コーナー手前でコースアウト。グラベルに捕まり、脱出できなくなってしまう。そのため、コース上にはセーフティカーが導入された。トップのauは、この時点で2番手のARTAに8秒余りのマージンを稼いで一人旅となっていたが、それがリセット。レースは振り出しに戻ることになってしまった。
さて、このセーフティカーランは4周余り続き、24周を終えたところでレースはリスタート。それと同時にピットに飛び込んできたのは、RAYBRIGとEpson Modulo NSX-GT。その翌周、25周を終えたところではKEIHIN、26周を終えたところではARTAがピットイン。上位を走っていたNSX勢がモニター上で37~38秒の制止時間のなかで、KEIHINの作業は約32秒ともっとも速く、KEIHINはARTAの前に出ることに成功する。NSX勢がピットに入ると、上位はレクサス勢が固めることに。トップからau、KeePer、ZENT、WAKO'S 、DENSOというオーダーとなった。
そのレクサス勢では、29周を終えたところで、auとKeePerが同時ピットイン。いずれもKEIHINとARTAの前でコースに戻る。その翌週にはZENTがピットイン。アウトラップで一旦KEIHINとARTAの先行を許したが、その翌周には第2ヘアピンでARTAを抜き返した。
さらに32周を終えたところでWAKO'SとMOTUL NSX、33周を終えたところでDENSOもピットへ。これで見た目上のトップに浮上したのはWedsSport。セーフティーカーで前とのタイムギャップがなくなった彼らは、ここからレース距離の3分の2まで引っ張る作戦だった。
■2ストップ戦略を選んだWedsSportに好運が舞い込む
この頃、次第に追い上げを開始したのは、RAYBRIG。レースでは劣勢に見えたNSXだったが、スティント序盤にタイヤを温存していたRAYBRIGは、41周目にARTAを攻略。さらに42周目の最終コーナー手前で、第2ヘアピンでKEIHINもかわして、NSX勢の最上位まで浮上してくる。KEIHINは同じ周の第2ヘアピンでZENTにもかわされるなど、ペースアップに苦しんでいた。
その42周を終えたところでは、WedsSportが2回目のピットイン。彼らは長い時間、クリーンエアの中で好ペースを保って走れたことが幸いし、コースに戻った時には3番手。表彰台圏内で戻った。そして、これで全車が規定のピット作業を終えると、トップはau、2番手はKeePer。これにWedsSport、ZENT、RAYBRIGというオーダーに。
予選ではNSXが上位を独占はしたが、決勝ではレクサスが上位をきっちり固めることとなった。さらに、その後方では、アクシデントも発生。ARTA、WAKO'S、フォーラムエンジニアリング、MOTUL GT-R、DENSOまでが6位争いの集団となっていたが、47周目の第1ヘアピンでMOTUL GT-Rがフォーラムエンジニアリングをパス。
さらにWAKO'Sをかわそうと第2ヘアピンのブレーキングでインに飛び込んだMOTUL GT-Rだったが、松田次生は止まり切れず、2台前にいたARTAのサイドに激突。2台はコース上にストップした。それを避けようとしたWAKO'Sは目の前で止まったMOTUL GT-Rに軽く追突している。その脇をすり抜けていったのが、DENSOとフォーラムエンジニアリング。これにWAKO'S、ARTAが続くことになった。
MOTUL AUTECH GT-Rは接触によってタイヤにダメージを負ったため緊急ピットイン。タイヤ交換を行なってコースに戻ったが、ARTA NSX-GTとの接触に対して、のちにドライブスルーペナルティを科され、最後尾まで後退。これによって、ニッサンGT-R勢のエースチームが実質、今年のチャンピオン争いから脱落することになった。
その後、ポジションの大きな入れ替わりがないまま、レースは推移。だが、60周目の第2ヘアピンでKeePerがauの前に出る。そのあと2台はそのままランデブー走行。コンマ数秒差で最後まで走り続けた。
結果、65周のレースを走り切り、KeePerがトップチェッカー、auが2位。以下、WedsSport、ZENTとレクサス勢がトップ4を独占。RAYBRIGは5位、KEIHINは6位と、表彰台には届かなかった。また、ニッサン勢最高位はフォーラムエンジニアリングの7位。以下、DENSO、WAKO'S、Epsonまでがポイントを獲得している。
今回の結果を受け、ランキングトップはRAYBRIGとKeePerが67点で同ポイントで並び、そこから8ポイント差でauの関口雄飛と続く。最終戦はウエイトハンデなしのイコールコンディションでのバトルだが、チャンピオン争いはホンダのRAYBRIGとレクサスKeePerの一騎打ちとなる、まさに"仁義なき戦い"となりそうだ。