10月21日に決勝レースが行われたMotoGP日本GPで優勝を飾り、2018年のチャンピオン獲得を決めたマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)。MotoGPクラスで5度目、通算7度目のチャンピオンをもてぎで獲得した。レース後、会見に臨んだマルケスは2018年のタイトルを手にしたよろこびを語り、そのなかでウイニングラン中の“裏話”も飛び出した。
マルケスは、チャンピオン獲得に王手をかけて日本GPに挑んだ。マルケスはアラゴンGP後、2018年のMotoGPタイトルを獲得できるだろうと感じていたと言う。その翌戦のタイGPでは、ランキング2番手のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)との差を広げた。日本GPでは、ドヴィツィオーゾの前でゴールすればタイトルを獲得できるという状況だった。
「もてぎでは勝つことが一番の目標だった。スタートから改善しないといけない部分もあると思っていて、さほど満足はしていなかったんだ。不安もあったけれど、今日のウオームアップ後、3人のエンジニアと一緒に予定通りの戦略でいこうと決めて、レースに臨んだ」
「僕らのチームは家族のようなんだ。常に話し合うし、すごく環境がいい。ひとりでも調子が悪いとその影響を受けてしまう。優れた結果を出せる、秘訣のひとつだよ」
今シーズン、日本GPでの優勝を含めてマルケスはこれまでに8勝を挙げており、表彰台を逃したのは2回のみにとどまっている。「安定したシーズンだったと思う。求める結果を出すことはできたし、安定した走りは昨年のドビから学んだんだよ」と語るマルケス。今シーズンで唯一、苦戦したのは16位で終えたムジェロだったと言うが、「それ以外のレースはよかった」と振り返る。
「楽しむことが一番重要なんだ。僕は楽しみながらレースをしているし、楽しみながら勝つことを追及している」
2017年の日本GPでは最終ラップの最終コーナーまで、ドヴィツィオーゾと優勝を争い、チャンピオンシップも最終戦までドヴィツィオーゾとの戦いを繰り広げた。そんな2017年と比べて、2018年はチャンピオンシップのポイント差において、大きなアドバンテージを築いた。
「ドゥカティは昨年後半から強くなって、今年もかなり強敵だったよ。でも、僕がひとつ歳を重ねて、成熟したということも(チャンピオン獲得の要因として)あるんじゃないかなと思うんだ」
マルケスがホンダの母国である日本GPでタイトルを獲得した回数は、今回を含めて3度。「(日本でタイトルを獲得すれば)予算が上がりそうだよね(笑)」とジョークを飛ばしつつ、「(レース前に)ホンダの(八郷隆弘)社長に会ったとき、『わかってるよね?』と言われて。僕は『ハイ……』と言うしかなかったよ」と、おどけてみせた。
「でも、僕はプレッシャーがすごく好きだし、そう言われることでモチベーションが上がるんだよ」
期待に応えて見事、もてぎでタイトルを決めたマルケスだが、ウイニングラン中にアクシデントが発生していた。ウイニングランの最中のマルケスを追う国際映像には、コースサイドで仰向けに寝転がるマルケスの姿が映し出されている。タイトル獲得のパフォーマンスの一環かと思いきや、実はこのとき、マルケスは左肩を脱臼していたのだ。
「(ウイニングランで)コースにスタッフが来てくれたんだけど、そのなかのひとりを抱きしめようと思ったら左肩が抜けてしまったんだ。これは今年、度々あってね。その場には(弟のMoto2ライダー)アレックス(・マルケス)もいたんだけど、彼も慣れているから、寝転んで骨を戻してもらったんだ」
「12月にはドクターに“ピットイン”するつもりだよ。手術して治したいと思ってる。だから、来年はよりいいコンディションで(もてぎに)来られるね」
「僕は夢を生きている。MotoGPクラスのタイトルを、5回も獲得したんだ。夢を見ているようだし、目覚めたくないよ」と笑っていたマルケス。会見後は、レプソル・ホンダ・チームのピットから、マルケスが「家族のよう」と語るチームスタッフとチャンピオン獲得を祝っているらしい歓喜の声がこぼれていた。