9月16日に決勝レースが行われたスーパーGT第6戦スポーツランドSUGO。山本尚貴/ジェンソン・バトン組RAYBRIG NSX-GTが優勝を飾ったレースだが、ファイナルラップにトップ争いをするRAYBRIG NSX-GTと、2番手のARTA NSX-GTの前方コース上に出現したSUGOのドクターカーについて、GTアソシエイションの坂東正明代表が第7戦オートポリスのGTA定例記者会見で説明した。
このトヨタ・プリウスαのドクターカーは、スポーツランドSUGOが所有する車両。通常、スーパーGTでは全戦に帯同しているファースト・レスキュー・オペレーション(FRO)の車両とサーキットのドクターカーが両方配備され、アクシデントに対応する。また、技術委員等の面でもGTアソシエイションが派遣し、サーキットとGTAが併催という形をとる。
そんななか、レースも大詰めというタイミングでコースインしてサーキットをほぼ1周回り、トップ争いを演じるマシンの前方に出現しドライバーも驚かせたドクターカーだが、坂東代表によればコースインの目的は、14番ポスト手前でクラッシュしたEpson Modulo NSX-GTのドライバー救出にあったという。
このSUGOのドクターカーは14番ポストの奥に配置されており、「ドクターから見ると振り返る方向(GTA坂東代表)」だった。ただクラッシュ後、ドライバー(ベルトラン・バゲット)がコクピットからなかなか脱出してこなかった。また、ヘアピンではKeePer TOM'S LC500がコースアウトし、FRO車両がすでに出動している状況があった。
コントロールタワーからは、無線でドクターカーに対して待機の指示が飛んでいたが、ドライバーの生死の確認がドクターに要請された。近い場所ではあるが、ドクターカーで向かうにはコースを1周する必要がある。そこでドクターとドライバーは、「『行かなければ』と正義感で動いた」状態だったという。
FIAの規定では、ドクターカーが出動するケースはイエローフラッグではなく、レッドフラッグ=赤旗中断の状態でなければ出動してはならない。スーパーGTでは、さらに迅速にドライバー救出に対応するためにFROというシステムを導入しているが、今回コースインしたドクターカーは、自分の判断でコースインしてしまったという。
「1周まわらなければならず、他のFROも基本的に他で作業していた。あの状況でコースインしたことにより、二次災害が起きる可能性もあった」と坂東代表は説明した上で、コースインしてしまったドクターカーの意志も理解を示した。
「自分としてはあのドクターに対する“咎め”とかはないが、組織として動いているので、それに従って欲しいと思う。ただドクターの“ドライバーを助けなければ”という強い意志は尊重したい」と坂東代表。
「ただ、我々はインターナショナルなレースをやっているわけで、あの白いクルマが映像を通じて世界に発信されてしまったのは事実。スーパーGTは認知度を向上させクオリティを高め、東南アジアに進出するレースとしては、残念な動きになってしまった」
現状では、スーパーGT開催中でも無線がうまく届かなかったり、昨年もSUGOのみならず、オフィシャルがコントロールタワーからの指示の前にクラッシュ車両の撤去に入ってしまったりということもあったと坂東代表は明かし、「指示系統の徹底をより強化しなければいけない」と今後に対する反省を述べた。
「オフィシャルやドクターの意欲は感じるので、それを尊重しながら、体制を作り上げていきたいと思います。今回の件は非常に残念ではありますが、二次災害が起きなかったのは良かったというのが本音です」