2018年10月21日 10:12 弁護士ドットコム
日本の中高年男性の自殺は月曜朝に多く、失業率が上がると早朝から通勤時間にかけての自殺が増加するーー。こんな研究結果を早稲田大と大阪大の研究グループがまとめた。
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これまで自殺がどの時間帯で多く発生するかについての研究は、国内外で実施されていなかったという。結果を受け、早大の上田准教授(政治経済学)は「自殺が増えるタイミングに相談体制を充実させ、見守りを強化することが不可欠」と話している。
研究グループは厚生労働省の人口動態調査の個人票を元に、1974~2014年に自殺した約90万人について、若者(20~39歳)、中高年(40~65歳)、高齢者(66歳~)の年齢グループと男女別に死亡時刻・曜日データを集計。それぞれ1994年まで(20年間)と95年以降(21年間)の二期に分けて分析した。
その結果、40~65歳の中高年男性の場合、95年以降は月曜日の朝(4:00~7:59まで)に大きな自殺のピークがあり、週末の土曜と比べると1.55倍だった。また朝(4:00~7:59まで)の自殺が一番多く、深夜(20:00~23:59)と比較すると1.57倍だった。
1994年以前は曜日や時間帯による違いはなく、上田准教授は「95年以降、勤労世代の自殺が月曜日の朝に集中している。個人票から職業は分からなかったが、仕事に行きたくないという理由がおそらくあるのではないか」と推測する。95年ごろは、バブル崩壊の影響で日本の景気が低迷していた。
また、女性は全年齢層で昼間の自殺が多かった。この傾向は、1994年までと95年以降で変化はみられなかったという。
中高生の自殺は9月1日がもっとも多く、夏休み後半から集中的に自殺防止の対策が取られている。今回の研究結果で特に傾向が如実に表れた中高年男性については、どのような対策を取ればいいだろうか。
上田准教授は「いのちの電話は夜から早朝にかけて行なっていることが多いが、朝の通勤時間帯や昼間に相談体制を充実させることが大事。リスクが高い人をひとりにしないことも重要だと思います」と話していた。
今回の研究結果は、2018年9月17日に科学研究出版社のエルゼビア(Elsevier)「Journal of Affective Disorders」電子版に掲載された。
(弁護士ドットコムニュース)