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チームが本格的に始動 中島健人『ドロ刑』泥棒が刑事に説教する不思議な光景はなぜ成立する?

2018年10月21日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 空き巣の大物“キツツキのマサ”を捕まえたことで鼻高々の斑目(中島健人)は、新設されたチームに配属されることが決まり意気揚々。ところが蓋を開けてみれば、集められたのは各部署のお荷物とされていたクセが強い面々。すっかり意気消沈してしまった斑目は、いつものバーで煙鴉(遠藤憲一)に愚痴り、そして絡む。そんな斑目に、煙鴉はこう語る。「三課はチームプレイだ。チームがひとつにならないとホシはあげられない」。


 泥棒が刑事に説教するという不思議な光景は、かたや自分の仕事に誇りを持った“プロ中のプロ”で、もう一方はやる気の浮き沈みが激しい“新米”だからこそ成立するのであろう。それと同時に、刑事が皆そろってやる気がなく、泥棒は皆強いプライドを持って罪を犯す。このシュールにも映る対比がどう掘り下げられていくのかというのが、このドラマの1つの見どころとなっていくことだろう。


 『ドロ刑 -警視庁捜査三課-』は10月20日に放送された第2話から、新米刑事&泥棒のバディドラマとしてではなく、「第13係」というチームの物語として本格的に動き始める。鯨岡(稲森いずみ)を筆頭に、捜査一課から左遷された皇子山(中村倫也)にケンカっ早い勝手田(丸山智己)、ギャンブル好きの宝塚(江口のりこ)にアル中の左門(板尾創路)、さらに極度の人見知りの細面(野間口徹)と刑事経験ゼロの小平(石橋杏奈)と、見るからに“寄せ集め感”で“息の合わなさ”を併せ持ったメンバーだ。斑目が煙鴉のサポートを受けながら刑事として成長していくと同時に、このチームが結束感を持つという流れになるのがドラマとしての常套ではあるが、現時点ではとても想像しがたいものがある。


 それにしても、第1話では主人公である斑目が挑む最初の事件として、煙鴉とのコンビ結成と、泥棒の特徴や心理が物語の展開を左右させることを示すほか、こうして13係に配属される各登場人物が何らかの形で登場するなど、充分すぎるほど整理された導入エピソードとしての役割を果たしていた。一方で第2話では新たにメインキャラクターとなる13係のメンバーについては序盤の斑目のモノローグでさらりと触れつつ、今回の犯人である“黒蛇”こと大堂(笹野高史)との因縁を持つ勝手田に繋げる。強烈な個性を持ったメンバーのバックグラウンドは、エピソードを重ねながら順に紐解かれていくことになりそうだ。


 ところで、今回登場した“ノビ”と呼ばれるタイプの泥棒について触れておきたい。来年映画化される横山秀夫の小説『影踏み』でも描かれている“ノビ”は空き巣と違い、あえて家人が家にいる時間帯を狙って忍び込む。それは、見つかりやすいリスクと引き換えに、確実に財布などの貴重品が家にあるというリターンの大きさを狙っていると言われているのだ。


 今回の大堂は熟練された技を駆使してスピーディーに仕事をこなし、わざと痕跡を残す。クライマックスで対峙し、カッターを向けられた斑目が「絶対のプライドがあるから」と、危害を加えてこないことをわかっていたのは、大堂がスリルを楽しむ余裕を持つほど自分の腕に絶対の自信を持っているということを、斑目が“泥棒の気持ち”に立って考えた証であるといえよう。(久保田和馬)