展覧会『田根剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Digging & Building』が、本日10月19日から東京・初台の東京オペラシティアートギャラリーで開催されている。
フランス・パリを拠点に世界各地でプロジェクトを手掛ける建築家の田根剛。20代でドレル・ゴットメ・田根としてエストニア国立博物館の国際設計コンペに勝利し、選出から約10年を経た2016年に竣工を迎えたほか、2012年に行なわれた『新国立競技場基本構想国際デザイン競技』では「古墳スタジアム」を提案し、ファイナリストの11人に選ばれた。「場所の記憶」から建築を考えるという考古学的アプローチをテーマとしている。
『田根剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Digging & Building』展では、田根が用いるイメージとテキストを使ったリサーチの手法を天井高6mの空間を使って展示するほか、エストニア国立博物館、古墳スタジアムを含む7つの代表作を大型模型を使用して紹介。エストニア国立博物館については設計競技に提出された模型の実物が登場する。
さらに「建築は未来の記憶をつくること」という田根の思想に共鳴したアーティストの藤井光が、各プロジェクトの映像制作で参加。撮影は藤井が竣工プロジェクトやパリにある田根のアトリエを訪問して行なった。
なお東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間では、『田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research』展を同時開催。同展では建築における思考と考察のプロセスが展開され、田根の全てのプロジェクトで実践されているという「考古学的リサーチ」の方法論を展観する。
■田根剛のコメント
まだ誰も見たことのない、経験したこともない、想像すらしたことのない、そんな建築をつくりたいと思っています。でもそれは奇抜な未来型の建築とは違う、場所の記憶からはじまる建築、そんな途方もないことを考えています。
私はいつも考古学者のように遠い時間を遡り、場所の記憶を掘り起こすことからはじめます。そこでは今日の世界から忘れ去られ、失われ、消えてしまったものに遭遇し、それらを発見する驚きと喜びがあります。その時、記憶は過去のものではなく、未来を生み出す原動力へと変貌するのです。
場所には必ず記憶があります。建築はその記憶を継承し、未来をつくることができるのです。未来は必ず訪れます。建築はこの時代を動かし、未来のその先の記憶となります。まだ誰も見たことのない未来の記憶をつくること、建築にはそれが可能だと信じています。