2018年10月19日 11:02 弁護士ドットコム
もはや引っかかる人はいないと思うマルチ商法。しかし、大学生のケイタさんは最近、サークルの仲のいいマサオ(自他ともに認める「意識高い系」)の言うことを信用した結果、50万円の投資ノウハウDVDを購入する羽目になってしまいました。
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マサオは、サークルの仲間に「会わせたい人がいる」と、次々に声をかけ、ケイタさんも「まあいいか」と思って、東京都内のカフェに行ったところ、マサオとともにいたのは、高級スーツをまとった自称「投資家」の男(20代)でした。
最初は自己実現や社会人としてのノウハウを伝授され、信頼しかけたところで、ある日突然、「大事な話がある。一緒に投資をしないか」と切り出されました。男が話す投資話は魅力的で、「手始めにこのDVDを買えば、投資のノウハウが理解できてすぐに儲かる」と約50万円のDVDを勧められ、ケイタさんは消費者金融からお金を借りた後、購入してしまいました。
「どうして信用してしまったのか」と後悔するケイタさん。その後、マサオとは絶縁したそうですが、このような販売手法のどのような点が問題なのでしょうか。舟木諒弁護士に聞きました。
ーーこのような売り方は、どんな法律上の問題があるのでしょうか
営業所等以外の場所で契約などを行う行為は訪問販売として、特定商取引に関する法律の規制を受けます。
また、近年、契約した後に、別の者を紹介すれば、利益が得られるなどとする被害(いわゆる後出しマルチ)が報告されており、当初から紹介料を得られるような仕組みであれば、特定商取引法上の連鎖販売取引(いわゆる「マルチ商法」)に該当する可能性もあります。
このような取引自体は、一応は合法とされているのですが、様々な規制があり、違反すると、業務改善指示や業務停止命令、禁止命令などの行政処分の対象になる可能性があります。
ーーどのような規制があるのでしょうか
例えば、特定商取引法3条、33条の2などでは、勧誘を行うという目的を明示しなければならないとされています。商品等の販売の勧誘である旨を伝えず食事に誘った場合などが該当します。今回の「会わせたい人がいる」といったマサオの誘い文句も、問題があると考えられます。
他にも、知識、経験、財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行うことや、不実のことを告げて勧誘することが禁止されます。本件では、借金をさせてまでDVDを購入させた点や、DVDをみれば投資が儲かるというようなことはおよそ現実的でない点で、問題となりえます。
ーーこれまでに、どのような被害報告があるのでしょうか
似たような事例として、56万円の投資用高額DVDを大学生に売りつけ、紹介料を配当していた悪質事例において、東京都が業者に対して業務停止命令などの行政処分(平成26年11月27日)を下しています(http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2014/11/20obr900.htm)。
ーーケイタさんはお金を取り戻すためにどのようなことができるのでしょうか
「すぐに儲かる」などとした勧誘は、契約の取消事由に該当します。また、法律で定められた書面が交付されていないため、クーリング・オフの主張をして、契約者である男に対し代金の返金を求めることが考えられます。さらに、勧誘者であるマサオさんに対しても、違法な勧誘をしたという点で損害賠償を求めていくことが可能でしょう。
ご自身が泣き寝入りせず、被害回復等を求めることは、将来同種の場面における対処方法を身につけることにもなります。また、別の被害者を生まないためにも重要なことです。「おかしい、困った」と思ったら最寄りの消費生活センターに相談するなどの対処が望ましいでしょう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
舟木 諒(ふなき・りょう)弁護士
2007年弁護士登録、弁護士法人龍馬(在籍弁護士9名)所属。適格消費者団体の理事を務めるなど消費者問題を取り扱う一方、多数の顧問会社の企業法務を取り扱う。
事務所名:弁護士法人龍馬ぐんま事務所
事務所URL:http://www.houjinryouma.jp/