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戸田恵梨香が語る、ムロツヨシと築く『大恋愛』のアプローチ 「2人の仲で大事なものを大切に」

2018年10月19日 06:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 TBS金曜ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』の放送が10月12日よりスタートし、初回視聴率は平均視聴率10.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。主演の戸田恵梨香とムロツヨシの演技に注目が集まった。


【写真】『大恋愛』戸田恵梨香とムロツヨシの名シーン


 本作は、“ラブストーリーの名手”大石静が紡ぐ完全オリジナルドラマ。戸田が演じる34歳で若年性アルツハイマーに侵された女医・北澤尚と、ムロが演じる健気な売れない小説家・間宮真司が、愛と死に向き合っていく純愛物語だ。今回リアルサウンド映画部では、ムロとの共演や本作を通じて考える恋愛観について、北澤尚役で主演を務める戸田恵梨香に話を聞いた。


■「瞬間的に素の私たちである部分がすごくある」


ーー本作は大石静さんの“オリジナル脚本”ですね。


戸田恵梨香(以下、戸田):原作物が当たり前のようになってきている中で、オリジナル作品に携われることは本当に嬉しいです。撮影しながらも可能性がどんどん広がっていくような気がしていて、やりがいを感じます。台本で尚が話す言葉を追っていくと、話が突然変わったり、テンポが変わったりすることを感じることがあって、その間に何が起きたのか、その隙間を考えなければいけないことが、今回のストーリーや役には多い印象を受けました。だから、尚の言葉や行動一つひとつを細かく考えてやらないと、成立させることが難しくて、すごく頭を使います。


ーー第1話の居酒屋のシーンは、戸田さんが「素で笑っているんじゃないか」と放送後にネット上でも話題になっていました。


戸田:居酒屋のシーンや、2人で歩いている場面など、何気ないところで監督にアドリブを任されることがあって、私とムロさんの普段の雰囲気が実際に出ているんじゃないかなと思う瞬間は多いです。居酒屋のシーンもそうですが、第3話で、私が真司のホクロを押すと彼が変顔をしてくれるシーンがあるんですけど、その2人のやりとりも、私とムロさんが実際にやっていたことでした。作品に入る前、大石さんが私とムロさんと別々に食事をして、私たち2人のエピソードなど、2人の性格を知った上で脚本を起こされているんです。だから、瞬間的に素の私たちである部分がすごくあるんですよね。お芝居をしていて、今まで他の作品で感じたことがないような、現実と非現実の境目が分からなくなる瞬間がよくあります。だから、私の素の部分が出過ぎないように気をつけています。


■「ムロさんの人としての魅力が溢れている」


ーー戸田さんからみて、ムロさんはどんな方でしょうか?


戸田:ムロさんは本当に優しいし、すごく周りを見ていて、頭がキレる方です。ある意味ガードが固いなというのは今までも感じていたんですけど、その奥を今回見せてくれているような気がしています。今回の作品で一緒になってみて、ムロさんの器の大きさが尋常じゃないというのは、新たな発見でした。


ーー試写会でのトークショーでは、「ムロさんの目が魅力的」と話していましたね。


戸田:真司もムロさん自身である部分がたくさんあるんですよね。全部魅力的ですが、その中でも私は“目”だと思います。第1話でいうと、尚と真司が初めて出会って、引っ越し作業が終わって、引越し屋の3人がトラックの中で会話をしているシーンで、『砂にまみれたアンジェリカ』の本の回想開けの真司の目が、私は一番好きなんです。すごい目をするなと。真司はムロさんの人としての魅力が溢れている人物だと思います。


■「尚は恋愛を知らなかった」


ーー戸田さんは尚という役を悩みながら演じていると伺いました。


戸田:今までやってきたいろんな作品の中でも、とにかく繊細で難しい役を演じているんだなと実感しています。第1話で、理性的な尚が真司と出会うことによって、本能を知り、自分の今までの価値観がまるっきり変わってしまって、どうすればいいのか分からないと言っているシーンは、尚自身が「分からない」ということは、私にもやっぱり分からなくて。第1話の台本を読んだときに、尚のことを「この人は二重人格なのかな?」とも思ったんです。尚がどういう人なのかさっぱり分からなくて、2話、3話を読んでも、分からなかったんです。徐々に病気が進行していき、真司だけではなくいろんな人と深く会話をしていく尚を見たら、ようやく、この人は分離している人ではないんだなと気づけて、腑に落ちたというか。第4話の台本を読んでから、ようやく「あ、尚を演じられそう」と思いました。だから、すごい時間がかかりましたね。それでも自分の中で明確になっていない部分はたくさんあったので、監督と現場で話をしながら、共通認識を持った上で撮影しています。


ーー第1話では、尚が侑市(松岡昌宏)と合理的な結婚を目前にしたところで、真司との運命的な出会いに走っていきましたが、過去に尚はどういう恋愛をしていたのかが気になりました。


戸田:たぶん、尚は恋愛を知らなかったんですよね。いろんなものを理論で考えていたときに、考え方が一緒かどうか、そこで合うか合わないかのジャッジをしていっただけで、少なからず合うということは、「この人のこと好きなのかな」って思った瞬間でもあったじゃないかなと思うんです。人を愛することがどういうことなのかは理論じゃないと思っているので、その答えを尚はきっと持っていなかったんじゃないかなと。


■「自分自身が幸せだなと思える生き方をしたい」


ーー戸田さん自身は愛についてどう考えていますか?


戸田:本当に難しいことだなと思います。家族には間違いなく愛はあるけれど、もちろん、パートナーに対しては、最初からそこを求めていないわけで、どれだけ一緒に長くいる夫婦でも実は上手くいってない部分もあるし、我慢している部分もあるし、隠しているところとかもたくさんあると思うんですよね。私には、本当の愛を持っている恋人たちがどれぐらいいるのかは分からないですけれど、本物の愛を一緒に見つけていくのは、すごく難しいことだと思います。けれど、本物の愛かどうか分からなくても、幸せは確かにあると思っていて。私は今の段階では、たとえ周りに幻想と思われても、2人の仲で大事なものを大切にしていけたら、愛は見つけられるのかもしれないと思います。


ーー尚を演じて、戸田さん自身が影響を受けたところはありますか?


戸田:私も一生懸命に生きたいと改めて思いました。真司のナレーションに「いつも走ってた」とあるんですが、「私は走っているのかな?」と考えると、走ってる瞬間と走ってない時の差がすごい激しいなと思って。いつ死んでもおかしくないというのは、みんな多分わかっているとは思うんですけど、実感があまりないですよね。もし万が一、明日死ぬとなった場合、後悔しないかと言ったら、そうではない気がするので、自分自身が幸せだなと思える生き方をしたいです。


ーー恋愛モノが多い秋ドラマのなかで、戸田さんが考える『大恋愛』のオリジナリティーを教えてください。


戸田:恋愛ドラマもそうですし、アルツハイマーをテーマにしたドラマや映画も世の中にはたくさんある中で、私とムロさんが演じるからこその違ったアプローチの仕方はあると思っています。純粋にそこを面白がって観ていただきたいです。ただ病気や恋愛ということではなく、すごく大きな愛を描いているので、この作品が、観てくださる人たちの幸せになるための手助けに、少しでもなればいいなと思います。


(大和田茉椰)