MotoGPタイGPで、ヤマハは復調の兆しを見せた。マーべリック・ビニャーレスが3位、バレンティーノ・ロッシが4位。そしてモビスター・ヤマハ・MotoGPのふたりに続き5位に入ったのがヤマハのサテライトチーム、モンスター・ヤマハ・テック3のヨハン・ザルコだ。ヤマハにとってタイGPはどのようなレースだったのだろうか。MotoGP日本GP開幕を直前に控え、ザルコの目から見たタイGPでのヤマハ躍進の理由を探った。
ヤマハのファクトリーチーム、モビスター・ヤマハ・MotoGPのロッシとビニャーレスが今季、苦戦を強いられているように、ザルコも特に後半戦で厳しいレースが続いていた。
「シーズンの始めは2回表彰台に上ることができてよかった。ただ、5月以降は多少難しい戦いになっているところはある」
そう語るザルコが今季、自身の目標に掲げているのはインディペンデントチームのトップライダーになることだと言う。ザルコは現在、インディペンデントチームのライダーランキングで3番手。ただ、トップのカル・クラッチロー(LCRホンダ・カストロール)との差はわずか3ポイントだ。
「困難な部分はあるけれど、インディペンデントチームのトップライダーとしての戦いはしっかりとできてきている。シーズン全体としては、力強い戦いができているよ。もちろん難しい部分もあるけれど、そういうときこそ心を強く持っていけるように自分をプッシュしていかなければならないと思っているんだ」
まさに後半戦の数戦はザルコにとって苦難のときだっただろう。アラゴンGPでは14位という下位に沈んだ。しかし、5位入賞に返り咲いたタイGPはそのアラゴンGPの翌戦だったのだ。その要因は何だったのだろう。
「タイGPで上位入賞を果たすことができたひとつの要素として、サーキットが典型的なレイアウトだったことがあると思う。走りやすくて、いい結果につながったのではないかな」
ザルコが『典型的』と評するチャン・インターナショナル・サーキットは右コーナーが5、左コーナーが7のレイアウト。コース前半は長いストレートで構成されているが、中盤はコーナーが連続するテクニカルなサーキットだ。この連続するコーナーが、ヤマハのマシンが現在抱えるウイークポイントにとって有利に働いた。
「今季、ヤマハのバイクが苦しんでいるのは加速面なんだ。タイGPが開催されたチャン・インターナショナル・サーキットはコーナーが多く、コーナーの進入速度がかなり速かった。その反面、そのあとのコーナー脱出の際に加速をする必要があまりなかったんだ」
「そういう意味で、ヤマハバイクのウイークポイントがあまり露出しなかったんだよ。逆にコーナー立ち上がりのときの安定性はあるので、そのアドバンテージを使うことができた。それで僕は5位を獲得できたんだ」
そんなヤマハYZR-M1の印象をザルコに聞くと、「(2017年から)2年間ヤマハのバイクに乗っているけれど、僕の人生のなかでもベストバイクだよ」という答えが返ってきた。
「なぜかというと、一番スピードが出るバイクだということがひとつ。時速300キロを超えるバイクはすごいフィーリングを与えてくれるんだ。もちろん乗りこなすのに苦しむこともあるけれどね。バイクの安全性という点でもよい感覚がつかめているよ」
ザルコにとってMotoGP日本GPは、目下、彼が評する『人生のなかでもベストバイク』でツインリンクもてぎを走る最後のレースになる。ザルコは2019年にレッドブル・KTM・ファクトリーレーシングへの移籍が決まっているからだ。
「もてぎは好きなコースだよ。2011年、125ccクラス参戦時代に初めて優勝した場所なんだ。そのあと2015年にはMoto2クラスのタイトルをもてぎで決めたし、2017年にはMotoGPクラスでポールポジションも獲得した」
「もてぎに行くとすごくフィーリングがよくてパワーを与えられているような気がするんだ。心が自由になる感覚がある。ツインリンクもてぎでのいい印象と、ヤマハのバイクが合わされば、いい結果が出せると思うよ」
開幕を直前に控えるMotoGP日本GPに向け、そう意気込みを見せたザルコ。再びファクトリーライダーをしのぐ走りを見せ、日本のMotoGPファンを魅了してほしいところだ。