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義理の親戚と縁切る「姻族関係終了届」急増 「死後離婚」というメディアの呼び方に違和感持つ人も

2018年10月18日 07:11  キャリコネニュース

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配偶者が亡くなってから義理の両親や親戚と縁を切るため「姻族関係終了届」を出す人が増えている。この5年間で急増していて、2017年度は4895件にものぼる。10月15日放送の「あさイチ」(NHK総合)で特集され、注目を集めた。

なぜ義理の両親と縁を切るのか。ある女性は、夫の死後、遺族年金とパートの収入で子ども2人を育てている。義理の母との関係は良好だが、とても介護をする余裕はなく、「姻族関係終了届」を提出したという。ただ義理の母の介護を完全に放棄するわけではなく、最終的な責任から心理的に逃れたかったという。(文:篠原みつき)

「夫のことは愛しているが、金を要求してくる親族に耐えられず」


姻族関係終了届は、配偶者の死後いつでも提出することができる。提出に当たって、義理の親族の承諾は不要で、親族に通知がいくこともない。また名字が旧姓に戻ることもなく、遺児年金などの行政サービスは引き続き受けることができる。

夫に病気で先立たれたある女性は、「夫の親族がお金を取ろうと向かってきた」と明かす。原因の一つとして多い、「遺産トラブル」だ。

義両親は、夫の生前には「お金の心配はいらない」と言ってくれていたが、夫の死後、急に「お金がない」と頻繁に口にするようになった。お金に困っているため、「早く遺産相続の手続きをして」と要求され、女性は弁護士を立てて法に従い処理をした。

ところが、義母や義妹から「私たちの分がもっとあるはずだ」などと根拠のない言いがかりをつけられてしまう。女性は、仕方なく「姻族関係終了届」を出し、縁を切ることを選んだ。しかし、「夫のことは愛していたので、夫との縁が遠くなってしまうようで迷いがあった」と苦悩を漏らす。

番組では、姻族関係終了届を「死後離婚」という別の名前で紹介していた。しかし、女性は今も「亡くなった夫と離婚したつもりはない」ため、「死後離婚」という言葉には違和感があるという。

このように「親戚関係を切っただけで、夫と離婚したとは思っていません」という当事者は多い。司会の博多大吉さんも「死後離婚という言葉が強い」と、違和感に同意していた。

本当の「死後離婚」は、もとの姓にもどす「復氏制度」では?

そもそも「死後離婚」は制度の名前ではない。言葉自体は2016年、他局の法律バラエティ番組に登場していて、ネットでは2017年頃から検索され始めた。いかにも夫の死後に義理の親戚関係を断ってスッキリしたい妻の気持ちを表しているようで、分かりやすくはある。

一方で、夫とは死別しただけで、関係は良好だった人にとって「死後離婚」という言葉に違和感があるのは当然だろう。届けはあくまで義理の父母などと縁を断つもので、夫とは死後も別れる気持ちなどないのだ。

離婚問題に詳しい弁護士の中里妃沙子さんも、「私も違和感を持っていまして、そもそも法律用語でもない。この機会に言い方を見直してもいいのでは」と提案していた。夫の死後、夫と関係を断ちたいということなら、「復氏(ふくうじ)という制度のほうが死後離婚という言い方になじむ」と指摘した。

「復氏」は、配偶者の死後、結婚前の苗字や戸籍に戻す手続きだ。相続や遺族年金の受給はそのままだが、子どもと戸籍や苗字が別々になるので注意が必要とのこと。子どもが幼く、戸籍や姓を同じにしたい場合は新たに自分の戸籍をつくり、その後子どもの戸籍を移す必要がある。

事例として登場した女性は、夫の浮気が原因で離婚しようとしていた矢先、夫にガンが見つかり看病せざるを得なかった。闘病を支えるうちに絆が回復したと思っていたが、夫の死後、病院の荷物から若い女性との笑顔の写真が出てきて心が折れた。

女性は「夫の姓を名乗って生きていくのはもうムリ」と、新たな出発をするため復氏に踏み切ったという。これぞ本来の「死後離婚」というものだろう。