トップへ

『このマンガがすごい!』『プリティが多すぎる』……秋の深夜ドラマはテレ東と日テレに注目!

2018年10月18日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 10月クールのドラマがようやく出揃ってきた。野木亜紀子、さらには大石静に浅野妙子、そして井上由美子と女性脚本家の精鋭、ベテランたちが凌ぎを削っているとも言える今期ドラマは、どれも見逃せないもの、確実に面白いものばかりである。だが、忘れてはならないのが、深夜ドラマだ。今期はいつにもまして注目すべきものが揃っている。そのいくつかを厳選して紹介したい。


●ドラマ25『このマンガがすごい!』(テレビ東京)
 『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京系)、『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』(テレビ東京系)の松江哲明監督が手がけ、ナビゲーターを蒼井優が務める。俳優たちが実写化したいマンガを選び、独自のアプローチでキャラクターと一体化する過程を1話にまとめている。第1回「森山未來の『うしおととら』」における、自らが役になりきった獣の姿でオーディションを開催し、何十人もの女性たちのタックルと渾身の演技を受け止め続けることで、その役と物語を自分の身体に落とし込んだ森山未來。第2回「東出昌大の『龍-RON-』」における、「嫌い」と言いつつ敬意と名状し難い感情を持つ自身の剣道体験を友人たちとの取り組みを通して振り返っていき、さらにはそれを「役者」という仕事への向き合い方とも重ね、実写化に臨む東出昌大。2人の実に対照的な役に対する取り組み方の違いは、それぞれの性格の違いも垣間見え興味深いものがあった。


 そもそも、「マンガの実写化」という言葉を聞くだけで眉をひそめる人は少なくないだろう。特に原作ファン、さらには映画ファンの多くは、似たようなキャスト・スタッフで日々増えていく「実写化」という言葉を肯定的に受け入れられない人は多い。第1回で蒼井優が森山未來に「マンガの実写化がとても増えていること」について問いかけ、「そう(原作モノ)じゃないと企画が通らないぐらいでしょ」と答えるように、今の日本映画(テレビドラマもそうだが)は、マンガの実写化に頼りきりの部分が大きい。ではなぜ、このドラマは、俳優たちに好きなマンガの実写化を試みさせるのか。蒼井優による同業者ならではの問いかけと、彼ら自身が役に近づこうとするアプローチを観察することによって、今の日本映画界においてよくも悪くも避けては通れない「マンガの実写化問題」と俳優たちがどう真摯に向き合おうとしているのか、さらには1つの役を自分のものとして身体に落とし込むための過程から垣間見える、それぞれの演技論が浮き彫りになってくる。


●ドラマ24『忘却のサチコ』(テレビ東京)
 『孤独のグルメ』(テレビ東京系)を皮切りに始まった“飯テロドラマ”には正直食傷気味だったが、このドラマは一味違う。このドラマの面白さは、食の部分だけでなく、ドラマ部分もしっかりと作りこんでいるところにある。脚本が『あなたには帰る家がある』(TBS系)の大島里美であることも大きいだろう。結婚式当日に新郎が逃亡した過去をどうしても忘れることができず、忘却しようと美食への道をひた走るヒロイン・幸子(高畑充希)が、時に突拍子もなく、時にシュールに、仕事や食べ物に打ち込み、前に進もうとする。吹越満はじめ出版社の編集部で働く幸子の周りを取り巻く個性豊かな作家や同僚たちも魅力的で、ご褒美のように最後にやってくる本当に美味しそうな“飯テロ”映像も妥協しないところがとてもいい。確実にお腹をすかせにくるドラマである。


●『ブラックスキャンダル』(読売テレビ・日本テレビ系)
 昨年10月期同枠放送の木村多江主演ドラマ『ブラックリベンジ』(読売テレビ・日本テレビ系)の第2弾にあたる。“ゲス不倫”などのスキャンダルを追う週刊誌の編集部から“謝罪会見”を行う側の芸能事務所に舞台を変え、ワイドショー的なベタさはあるが、やはり展開が衝撃的で見逃せない。なにより、『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)での怪演、『おんな城主 直虎』(NHK総合)のなつ役での好演をはじめ、ありとあらゆる役を好演してきた山口紗弥加の初主演作である。『ブラックリベンジ』は後半のどんでん返しに次ぐどんでん返しが見ものだったが、山口紗弥加は、今度はどんな顔を見せてくれるのだろう。


●『プリティが多すぎる』(日本テレビ)
 10月18日より放送される千葉雄大主演『プリティが多すぎる』も注目の1本だ。脚本は『ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語~』(NHK総合)の荒井修子。原宿系ファッション誌の編集部を舞台にしたカワイイ至上主義の世界で悪戦苦闘するカワイイ千葉雄大というメインビジュアルが強烈で内容が頭に入ってこないが、『家売るオンナ』、『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)の小田玲奈プロデューサーが手がける新たなお仕事ドラマに期待したい。


 こちら4本の深夜ドラマをピックアップした。他にも木村佳乃と水野美紀の競演が気になる『あなたには渡さない』(テレビ朝日系)、相葉雅紀主演癒し系ドラマ『僕とシッポと神楽坂』(テレビ朝日系)など挙げていたらキリがないが、どれも必見である。


(藤原奈緒)