ヤマハ発動機は10月17日、都内で総合楽器メーカーのヤマハとのコラボレーションイベントを開催。10月19日から21日にかけてツインリンクもてぎで行われる日本GPを直前に控え、モビスター・ヤマハ・MotoGPのバレンティーノ・ロッシやマーべリック・ビニャーレスなどのヤマハライダーが登場し、二輪ロードレースと音楽の意外な接点などを語った。
この日開催されたイベントはオートバイを製造するヤマハ発動機と、楽器・オーディオ製品を扱うヤマハがコラボレーションしたもの。両社は2018年より、ヤマハ発動機とヤマハ、双方の設立記念日である7月1日、10月12日を『ヤマハデー』とし、その前後の日程で様々な活動を行っている。
今回のイベント『Two Yamahas, One passion - RIDERS MEET PIANIST - ~ピアノ×バイク!? Yamahaだからできる異色のコラボレーション~』もその一環で、『感動をつくり出す』というキーワードのもと、バイクとピアノが持つ共通点を中心にヤマハ発動機とヤマハならではのコラボレーションイベントとして開催された。
ヤマハ発動機のMotoGPマシン、YZR-M1とヤマハのグランドピアノが壇上に並ぶなか、登場したのはMotoGPライダーのロッシ、ビニャーレス、ヤマハのサテライトチームであるモンスター・ヤマハ・テック3のヨハン・ザルコ、ハフィス・シャーリン。そしてMotoGP日本GPでワイルドカードとして参戦する中須賀克行だ。
集まったファンに向け、まずザルコとビニャーレスが「もてぎでは活躍をしたいね」と語り、ロッシも「今日は集まってくれてありがとう」と笑顔でコメント。
さらにピアニストであるフランチェスコ・トリスターノ氏が登場し、トークはイベントのテーマである『感動』を中心に進められた。
そのなかでロッシは「MotoGPファンのみんなの期待があるからね。僕はその期待に応える責任があるんだよ」と語り、自らのレースで感動を生み出すライダーとしての重責を思わせた。
また、レース前やレース中の心境について話が及ぶと、ロッシは「グリッドでは嵐の前の静けさのような感じなんだ。レース中はいいレースをしているときとそうでないときで違うね。いいレースをしているときはポジティブな感情を抱くけれど、その反対の場合はそうはいかないんだ」と明かす。
中須賀もレース中の集中について、その難しさを語った。「レースは40分から45分にわたります。こんなに長い時間、普通は集中力が持たないです。僕は(レース中)集中するときと、抜くときを分けていますね」
また、ロッシは自身が駆るMotoGPマシンYZR-M1の役割をピアノという“機器”に絡めて説明。それはただの“機器”ではなく、関係性を築いていくことが大事だと言う。
「ピアノとバイク、物は違うけれど“機器”との関係は大事だよね。バイクはただの金属の塊ではないと僕は思っている。そのなかの魂が延々と引き継がれていくものなんだ。バイクとコンタクトすることが大事なんだよ。“機器”から引き出していくんだ」
イベントでは、ピアニストのトリスターノ氏がMotoGPのレースからインスピレーションを受けたという新曲『Time Grid(タイム・グリッド)』を披露。グランドピアノとシンセサイザーという複数の鍵盤楽器を用いたアナログと電子音のコラボレーションに、MotoGPライダーはもちろん、会場中がその音色に聞き入った。
さらに趣味でピアノを弾くというザルコも、トリスターノ氏に続いてピアノの腕前を披露。「トリスターノさんのすばらしい演奏の後で、僕が弾くのはやりづらいよ」と苦笑を浮かべていたザルコだったが、いざ演奏が始まるとその腕前はかなりのもの。演奏後にはトリスターノ氏同様に、会場からは長く温かい拍手が贈られていた。
ヤマハ発動機とヤマハによる異色のコラボレーションイベントは、MotoGPライダーとピアニストというまったく違う分野の才能たちが混じりあうもの。それはどのような分野であろうと、頂点を極める者たちには感じ合う共通点があることを感じさせるものだった。
壇上でロッシは笑顔でトリスターノ氏と言葉を交わし、詰めかけたファンたちも終始、大きな興味をもって壇上のMotoGPライダーとピアニストの交流を見つめていた。