今季が創設初年度のシーズンとなるTCR UKは、10月13~14日にイギリス・ドニントンパークで最終戦を迎え、シリーズ前半戦で6連勝を達成したWCR(ウエスト・コースト・レーシング)のダン・ロイド(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)が予選ポールからレース1勝利を飾り、見事に初代チャンピオンに輝いた。
意外なことに、これが6月のブランズハッチ以来となるポールポジションを獲得したロイドは「チームにとって素晴らしい予選になった。これで明日の決勝はプレッシャーから解放された状態で戦えるし、そこで可能なかぎりのポイントを獲得して(タイトルを)決めてしまいたい」と、チームメイトであるアンドレアス&ジェシカのバックマン兄妹を従え、WCRが1-2-3を占める盤石のグリッドからレースを戦うこととなった。
さらに決勝レース1を前にサポートレースで大きなクラッシュが発生し、このアクシデントでタイムスケジュールが大幅に遅れる事態となり、大雨の天候とも相まってスタート時刻は予定の13時10分から15時へと1時間50分もディレイされることに。
これにより30分の決勝時間は15分へと短縮され、ロイドにとってはますます有利な状況が整った。
ようやく迎えたスタートでも、WCRのロイドとアンドレアスは慎重なスタートを切りワン・ツーで1コーナーへ。
その背後、ロイドにとって唯一の選手権ライバルであるパイロ・モータースポーツのオリー・テイラー(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR)がジェシカをかわして3番手に上がってくるも、オープニングラップでワイドランを喫し8番手に後退してしまう。
これで1-2-3体制を取り戻したかに見えたWCR勢だったが、その直後にジェシカ自身もホリウッド・コーナーでワイドとなり、彼女のゴルフGTIも集団後方までドロップ。代わって、テイラーのチームメイトでFK2型のシビックRをドライブするジョシュ・プライスが先頭2台に挑む展開となる。
そのプライスは5周目のオールドヘアピンでアンドレアスをオーバーテイクすると、チームメイトのためにもロイドを捉えるべく追撃体制に入るも、なんとここで彼のシビックが息絶えメカニカルトラブルによりストップ。
テイラー自身も4番手まで追い上げ、前を走るフィンレイ・クロッカー(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR)とともに2番手のアンドレアスに迫ったものの、ロイド護衛隊の役割を全うしたバックマン兄妹の長兄は、ミッションを完遂して2位を防衛。
これでロイドは悠々11周のトップチェッカーをくぐり、見事に初代シリーズチャンピオンの座を獲得。2位にアンドレアス・バックマン、3位にクロッカーの表彰台となった。
「今年は(開幕6連勝で)簡単に見られていただろうけど、結果を出すためには大変なハードワークと準備が必要なことはいつだって変わらない」と、タイトル獲得の喜びを語ったロイド。
「僕らのチームは年間を通じて本当に素晴らしいマシンを用意してくれた。今季は雨が降るたびに良いレースペースを見せていたから、今日も自信を持ってレースに挑めたんだ」
「チャンピオンシップを制することができてもちろんホッとしているし、夢のような気分だ。シーズン中盤からは常に60kg以上のバラストを搭載して苦しい場面もあったし、テクニカルトラブルで窮地に立たされたこともあったけれど、ここへきて本来のパフォーマンスが発揮できて良かったよ」
そして初年度シーズンの最終ヒートとなったレース2は、最初のレースを燃料ポンプトラブルのため失っていたプライスが奮起。
リバースポールのカール・スイフト(セアト・クプラTCR)と並びフロントロウからスタートしたプライスは、1コーナーのレッドゲート・コーナーでアウトサイドから首位に踊り出ると、そのままリードを保ってフィニッシュ。
2位にBTCCイギリス・ツーリングカー選手権でも活躍するベテラン、スチュワート・ラインズ(セアト・クプラTCR)、3位表彰台にはロイドが上がり、これで初代チャンピオンは選手権リードを61点とする514ポイントでシーズンを締めくくった。