最終戦を前にヨッヘン・ハーン(ヨッヘン・ハーン・レーシング/IVECO)の歴代最多5度目のチャンピオンが決まっているETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップは、10月5~7日にスペイン・ハラマでシーズン最終戦が開催され、王者ハーンが土曜のレース1、日曜のレース3を制し貫禄の年間12勝を記録した。
土曜最初の予選で今季の定位置となったポールポジションを確保したハーンは、レース1スタートでもそのアドバンテージを最大限に活用。わずか4つのコーナーをクリアしたところでトラックヘッドの隊列は大混乱となり、いきなり赤旗中断のアクシデントが発生する。
引き金となった2番手争いの渦中にいた地元スペイン出身のアントニオ・アルバセテ(トラックスポーツ・ルッツ・ベルナウ/MAN)、ノルベルト・キス(チーム・タンクプール24レーシング/メルセデス・ベンツ・トラックス)、そして昨季王者のアダム・ラッコ(バギラ・インターナショナル・レーシング・システムズ/フレートライナー)らに対しては、すぐさま審議対象となることが通告された。
さらに巻き添えとなったアンドレ・クルシム(Don’t Touch Racing/IVECO)ら多くのトラックが戦線離脱を余儀なくされるなか、キスにはレース2での5グリッドダウンのペナルティが課され、レースは再開。
アルバセテは地元ファンの声援を背になんとかリスタートの隊列に加わったものの、キスはトラック修復のためレース1再出走を断念し、5グリッドダウンのペナルティを実質無効化する決断を余儀なくされた。
こうした波乱と無縁の立場で再スタートを切った王者ハーンは、またも快適なリードを維持して12周のレースを走破。見事に今季11度目のトップチェッカーを受け、2位にアルバセテ、3位にサッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ/MAN)の表彰台となった。
続く土曜午後のレース2は、リバースポールからスタートしたショーン・ブレアートン(TORトラック・レーシング/MAN)が終盤まで首位を守ったものの、シュティフィ・ハルム(チーム・シュワーベントラック/IVECO)からのプレッシャーにさらされていたレネ・ラインアート(ラインアート・レーシング/MAN)が7周目にトップを捉えて今季3勝目をマークしている。
明けた日曜、2018年ETRCシーズン最後の1日も午前のスーパーポールセッションでハーンが当然のように今季8度目のポールを確保すると、前日に続いてフロントロウに並んだ地元の英雄アルバセテを封じる好走を披露する。
2秒以上のマージンを持った最終ラップの最終コーナーでは、トレードマークでもある“パワースライド”を決める余裕でタイトル獲得に華を添える12勝目をマーク。2位のアルバセテ、3位のラッコにチャレンジする隙すら与えない完勝を飾った。
前日のリピートを見ているかのようなレース3に続いて、今季最終ヒートとなったレース4も土曜の再現のような展開となり、ブレアートンを先頭に8台のトラックが数珠つなぎに。
テール・トゥ・ノーズのアクションが続いたパックで変化が起こったのは6周目で、ラインアートが再びブレアートンを仕留めて首位に浮上。同じラップで3番手につけていたホセ・ロドリゲス(ロボコノート・トラック・レーシングチーム/MAN)も2番手に上がり、新たなレースリーダーを追走する展開となる。
幾度かインサイドにダイブする動きを見せたロドリゲスも、トップを捉えるには至らず。そのままラインアートがトップでフィニッシュラインを通過し、シリーズ復帰初年度で4勝目を飾ってみせた。
2位のロドリゲスに続き最後の表彰台スポットを確保したのは、昨季までラインアート"代表"のもとでレースを戦ってきたハルムで、オープニングラップで彼女のマシンはワイドとなり、2番手から3つポジションを落としたものの、かつての恩師とともに今季最後の表彰台に並ぶべく力強く挽回するレースマネジメントを披露した。
最終戦を終え、早くも2019年暫定カレンダーを公開したETRCは、まだFIAの最終承認前の段階ながら今季開催の8戦に加え、TBAとなる1戦を加えた全9戦を予定。現時点では、2019年5月25~26日にイタリア・ミサノで開幕戦を迎えるスケジュールとなっている。