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「Touché SE」「Joué」「LinnStrument」「Fire」ユニークなMIDIコントローラー4選

2018年10月16日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

 毎回気になる楽器や機材を紹介する本コラム。今月は、鍵盤の演奏などに新たな表現力をもたらす、ユニークなMIDIコントローラーを4つピックアップしてみた。


(参考:「WAVEDRUM」シリーズ最新モデルから変わり種まで 気になるパーカッション・シンセサイザー4選


Expressive E「Touché SE」
 まずは、Expressive E社が10月に発売する「Touché SE」(トゥシェ・エス・イー)。まるでフットペダルのような、極めてシンプルな形状だが侮ることなかれ。パッド状のコントローラー本体を、タップしたり押し込んだり、表面を指で滑らせたりといった直感的な操作で、例えばピッチベンダーやモジュレーションホイール、アフタータッチなど、これまでの操作では出来なかったような、新しいパフォーマンスが可能になったのだ。


 Touché SE本体のMIDI出力を、手持ちのハードウェア・シンセサイザーのMIDI入力に接続。ソフトウェア「Lié(リエ)」を使ってコントロール・チェンジがシンセへと送信させるように設定するだけでOK。ユーザー・インターフェースも分かりやすく、独自のマッピングもわずか数回のクリックで完了する。微細な振動や圧力も敏感に捉える木製の「スキン」によって、不穏なドローンサウンドから天上の調べのようなキラキラとしたサウンドまで、幅広い表現が楽しめる。


 Touché SEを駆使することにより、これまで使っていたシンセサイザーから新たなポテンシャルを引き出すこと請け合いだ。


Joué SAS「Joué」
 フランス語でPLAYを意味する「Joué」(ジョウエ)は、ラバーパッド状の「モジュール」を自由に交換できる革新的なMIDIコントローラー。クラウドファンディング「kickstarter」で資金を募ると、なんと1100万円以上も集まったという期待のコントローラーだ。


 Joué本体には3つのスロットがあり、そこにラバー状の「モジュール」を差し込んで操作する。各モジュールにはチップが埋め込まれており、専用コントローラーソフトウエア「Joué Editor」側で自動的に認識して各種セッティングが可能だ。例えば、ギターのフレットのような形状をしたモジュール「Fretboard」をJouéスロットに差し込めば、ギターを弾くような感覚で音を出すことができるし、ドラム、パーカッション、メロディー、またはクリップを起動するための「Pads」を使えば、リズミックな演奏が直感的に楽しめる。


 Joué本体には、ノートオンはもちろん、ビブラート、スライド、アフタータッチなど指先の微妙なニュアンスに反応し、鍵盤とは一味違った演奏が楽しめる。今後、ユーザーからのリアクション次第で新たなオプション・モジュールが追加される可能性もあり、なお一層の期待が集まる。


Roger Linn Design「LinnStrument」
 こうした革新的なMIDIコントローラーの先駆けとなったのが、Roger Linn Designにより2017年に発表されたLinnStrumentである。


 LinnStrumentは、独自のマルチ・タッチ・テクノロジーにより、指の動きを「3D」で捉えるパッドが並ぶ。すなわち、押す強さによって「音量」を、左右に揺らすことによって「音程」を、前後に動かすことによって「音質」をコントロール。3つの信号は同時に送信されるため、まるでアコースティック楽器のような豊かな表現が可能となっている。


 すでにTouché SEやJouéが発表された今、3Dパッドそのものは珍しくないかも知れない。が、本機がユニークなのはそのキー配列である。白鍵と黒鍵が並ぶピアノというよりは、複数の弦が並ぶ弦楽器に近い。各列は、それぞれ2オクターブの範囲で半音ごとにパッドが並び、しかもギターのチューニングのように、各列間の音程を変えられる。例えばバイオリンやチェロのように5度ごとにすることも、変則チューニングのようにすることも出来るわけだ。


 自分だけのキー配列を編み出し、オリジナル楽器にカスタマイズできると思うと、ワクワクしてくるのは筆者だけだろうか。


AKAI Professional「Fire」
 最後に紹介するAKAI Professionalの「Fire」は、Image-Line Softwareの音楽制作ソフト「FL Studio」専用のコントローラー。例えば、オーディオサンプルをナビゲート/オーディション/ロードしたり、プロジェクト・ファイルを呼び出したり、プラグインを開いたりといったブラウザ機能を備えており、グラフィカルなOLEDディスプレイによって、セッション内のファイルやメニュー、パラメーターを簡単にブラウズし、コントロールすることができる。


 FL Studioのチャンネルとパターンをコントロールするために必要な全ての作業を、パソコンのマウスに触れることなく本機のみで出来るのが最大の強み。さらに、「ノート・モード」や「ドラム・モード」に切り替えれば、FireのRGBパッドを4オクターブの鍵盤や、MPCスタイルの16パッドとして演奏することもできる。


 他にも、ライブパフォーマンスが可能な「パフォーマンス・モード」や、FL Studioのステップシーケンサーへダイレクトにアクセスできる「ステップ・シーケンス」などを搭載。「FL Studio」をより自由に、より強力に使いこなすためのツールとして、「Fire」が大活躍してくれるのは間違いない。


 以上、ユニークなMIDIコントローラーを4機種ピックアップした。単にMIDI情報を送るだけのコントローラーとは全く次元の違う、新たな「楽器」ともいえるラインナップ。是非ともチェックしてみて欲しい。


(黒田隆憲)