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MTVは音楽の楽しみ方をどう変えた? 「MTV VMAJ 2018 -THE LIVE-」から功績を振り返る

2018年10月14日 11:41  リアルサウンド

リアルサウンド

 新木場スタジオコーストで10月10日、「MTV VMAJ 2018 -THE LIVE-」が開催された。


 同イベントは、MTVジャパンの主催により、年間の優れたミュージックビデオ(MV)を表彰する音楽アワード「MTV Video Music Awards Japan(略称:VMAJ)」のスペシャルイベント。受賞アーティストによるライブパフォーマンスに加え、全16部門の中から最も投票数を獲得した「最優秀ビデオ賞」の発表が行われ、今年のMVの頂点として米津玄師「Lemon」が選出された。


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 ライブには「最優秀邦楽女性アーティストビデオ賞」を獲得したaikoから、アン・マリー、Official髭男dism、SKY-HI、DEAN FUJIOKA、Little Glee Monsterといったジャンルの異なるアーティストたちが集結し、それぞれの魅力や持ち味を見せつけるパフォーマンスを披露。さらにE-girls、BLACKPINK、三浦大知といったダンス系アーティストや、アイドルからは欅坂46も登場し、刺激的なステージングで会場を盛り上げていた。


 そもそもMTVは、「MUSIC TELEVISON」を意味するその名の通り、24時間ビデオクリップを放送する番組として1981年にアメリカで誕生したものだ。それ以前からMVの概念は存在しており、プロモーション目的のビデオを初めて制作したのはザ・ビートルズだという説が一般的に浸透している。1960年代、あまりに多忙だったビートルズは、様々なテレビ番組に出演することが困難だったため、演奏シーンとイメージ映像を組み合わせた映像作品をテレビ局へ配布することを考えた。そして1965年11月23日、イギリスのトゥイッケナム・スタジオにて「アイ・フィール・ファイン」、「涙の乗車券」、「ヘルプ!」、「デイ・トリッパー」、「恋を抱きしめよう」の5曲が撮影され、この日が世界で初めてプロモーションビデオ(PV)が撮影された日と言われているようだ。


 「PV」がいつからか「MV」という言葉に変換されるようになったのは、MTVの功績が大きい。1984年に米MTV主催で「MTV Video Music Awards」が初開催されて以来、ビジュアルを重視するアーティストが増加していくとともに、ビデオは単なる音楽の宣伝ツールから映像作品としての色合いが濃くなっていった。そしてこの祭典の日本版「VMAJ」が2002年から開催されるようになると、日本でもMVは楽曲単体とはまた別の、アーティストとクリエイターが組んで制作する独立した作品としての見方が強まっていき、それは音楽の“新たな楽しみ方”にもなった。


 特にダンスやアイドルといったジャンルは音楽だけではなく視覚的な魅力も重視されるカルチャーであるため、CDや音源と同じくらい、むしろそれ以上に「音楽+映像」を組み合わせた表現に重きを置いている。そう考えると、近年MVがクリエイティブなものとして扱われるようになったことと、ダンス・アイドルカルチャーの発展には繋がりがあるとも考えられる。


 さらに「VMAJ」がスタートした2002年以降は、インターネットの発展でさらにMVの需要が高まっていく。今やアーティストが楽曲リリースの度にMVを制作し、YouTubeを始めとする動画サイトやGYAO!などのネット配信番組で公開することは当たり前の流れとなっており、インディーズからメジャーアーティストまで毎日様々なMVがネット上にアップされている。ネットにアップしたMVをきっかけに、世界的にブレイクするアーティストも少なくなく、近年、K-POPが国外でも大いに人気を博しているのも、MVの力によるところが大きい。そうした流れを踏まえると、今回の「VMAJ」にてBLACKPINKの楽曲「DDU-DU DDU-DU」が「最優秀ダンスビデオ賞」を受賞したのも、時代の変化を象徴していると言えるかもしれない。


 なお、『MTV VMAJ 2018 -THE LIVE-』のライブ映像ならびにコメント映像は、本日10月14日より「GYAO!」にて無料配信される。


(渡邉満理奈)