トップへ

福田雄一節にも注目 賀来賢人主演『今日から俺は!!』はナーバスな気持ちを吹き飛ばすドラマに

2018年10月14日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 “ツッパリ”について、今の若い世代が詳しくなくてもおかしくはない。当時ツッパっていた彼ら、彼女らが、何を好み、何を美徳とし、何を信奉していたかについて知る機会はかつてほど多くないからだ。10月14日からスタートする新ドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)は、ツッパリという言葉が全盛期だった1980年代初頭を舞台に、賀来賢人演じる高校生が“ツッパリ”の世界を、笑いあり涙ありで駆け抜けるヤンキーコメディである。


参考:『今日から俺は!!』でバンド結成!【写真】


 己の格闘の実力で正々堂々と決着をつけるのが、喧嘩の世界のルール(らしい)。ところが、本作の主人公・三橋貴志は自由奔放、ワガママ、おまけに悪知恵が上手く働くだけに、そんな“ルール”などおかまいなし。勝てれば何だってアリというポリシーの下、規格外のプレーを連発する三橋の姿は、従来のツッパリ作品の常識からは大きく離れる。本作の見どころは、そんな三橋が奇想天外な発想で困難を切り抜けるところにあるだろう。また、随所で繰り広げられるお笑いシーンも、『銀魂2』などを手掛けてきた福田雄一節が効いている。


 しかしやはり、今となっては懐かしさも含む“ザ・ヤンキー”と言わんばかりのビジュアルも見逃せない。現在では、明らかに目に見える形で“ツッパる人々”は確かに減ったかもしれない。でも、いつの時代も若者は多かれ少なかれ、その世代特有のフラストレーションを抱えている。家族、友人、恋人、勉強、進路などなど。人によってそれぞれではあるけれど、みんな何かのことで頭を抱え、イライラし、悶々とする。親が、教師が、大げさな場合だと社会が、ちょっと鬱陶しく見え、自分を抑圧する殻を破りたいと思う。1980年代にはまだ、堂々と“無茶をする”ことで開放されるという選択肢があった。


 でも、たった数十年の時を経て時代は大きく変わる。“丸くなった”と言う人もいるかもしれない。ただ、本質的なところでは、今も昔も変わらないものがあるはずだ。もちろん、リーゼントにする男子や、丈の長いスカートを履く女子はだいぶ減っていることだろう。それでも、今だって髪は染めるし、ネクタイは緩めるし、スカートは逆に短くする。今の時代は、別に“イキがって”そうしているわけではなく、あくまでファッションとしてやっているのかもしれない。でも、ファッションと反抗はいつだって隣り合わせである。


 だからこそ、80年代を知る人々(実際にツッパっていた人々はなおさら)はもちろんのこと、今を生きる若い世代が本作を観ても、抱腹絶倒できる余地は多分にある。作中の三橋の行動は、ぶっ飛びすぎていて、当時のヤンキーの中でもかなり“例外的”ではある。ただ、当時の高校生たちが、わけもなく暴れ周り、走り抜け、くだらないことでもゲラゲラ笑えるその姿は、今の若い世代がさっぱり理解できないということはないだろう。彼ら、彼女らの言葉にできないバイタリティーを感じ取れる瞬間もきっとあるはずだ。


 西森博之による同名漫画を原作とした本作は、主演の賀来賢人をはじめ、同世代のヤンキー役として、伊藤健太郎、清野菜名、橋本環奈、太賀、矢本悠馬らが登場するほか、教師役をムロツヨシ、大貴の父親役を吉田鋼太郎、宿敵役を鈴木伸之らが務める。脚本・演出は『スーパーサラリーマン左江内氏』(日本テレビ系)や『銀魂』シリーズで知られる福田。ド派手な演出と爆笑必至の展開で進む本作は、“翌日からまた1週間が始まる……”というナーバスな気持ちを吹き飛ばすのにもってこいである。(國重駿平)