見事、母国レースとなるWEC世界耐久選手権第4戦富士6時間レースの予選でトップタイムをマークした、かに見えたTOYOTA GAZOO Racing7号車の小林可夢偉。予選後、囲みインタビュー取材にてコメントを残したが、このときすでにチームメイトのホセ-マリア・ロペスのピットレーンの速度違反の可能性を把握しており、決勝に向けては厳しい見方をしていた。
まずは予選自体を振り返った可夢偉。同じチームながらライバルでもある8号車のセバスチャン・ブエミがアタック中に4輪脱輪してしまい、当該タイムが抹消されるという、7号車の可夢偉にとってはラッキーな面があったが、見事、可夢偉はトップタイムをマークした。
「予選アタックはまあ、すごく良かったわけではないですけど、とりあえずまとめたという感じですね」
前日の2回の練習走行では両セッションとも8号車の後塵を拝す2番手となり、セットアップに悩む姿を見せていた。そこから、どう挽回していったのか。
「8号車のデータを見ながら、とりあえず素直に、そのセットに寄せていっただけです。昨日のクルマの症状としては、単純に4輪ともグリップがない。そしてまっすぐも遅い。なので、ダウンフォースを減らしてクルマのフィーリングは変わらなかったけど、まっすぐの速度は上がったのでタイム的に整ったという形ですね。僕らとしては、もうちょっとセットアップを合わせられたらもっと行けたのかなとは思いますね」
不調の原因には、今回からLMP1クラスに課している性能調整“EoT(イクイバレンス・オブ・テクノロジー=技術の均衡)”の変更が行われ、第3戦のイギリス、シルバーストン戦からトヨタTS050は26kg重くなった影響が考えられる。
「その影響があってフィーリングが悪いのかなって。どのコーナーでも、バランスが全然、整わない。今回の予選はもぎ取ったというよりも、ラッキーですかね。今年のクルマで、その重さでテストをしていないですからね。ただ、タイヤの温度レンジも少し外し気味なところがあるので、それが理由かもしれないですけどね」
そもそも、今回の富士でアタックした可夢偉とロペスは予選は3人のドライバーのなかからどのように決まったのか。
「エンジニアが適当に決めます。だいたい、サーキットに行く前には決まっています。それで、あまりにも自信がなかったら交代しようかという話になりますね」
予選1セッションのなかでふたりのドライバーがアタックして、そのアベレージタイムで競うWECの予選。クルマに乗る順番はどのように決めるのか。
「今回はホセ(-マリア・ロペス)が『俺、あんまり自信ないからカムイが先に行ってくれ』と。僕は『どっちでもいいよ』と。もちろん、最初に乗った方がニュータイヤなのでドンと速いタイムを出せるけど、僕ばっかり先にニュータイヤでアタックするわけにもいかないので、いざというときのためにも決めていないですね」と可夢偉。決勝で乗る順番も、基本的にはエンジニアが決めるのに従うことになるという。
そして、明日の向けての抱負を聞いた時に、可夢偉が予選でのペナルティの可能性を示唆した。
「(明日は優勝?)まだ分からないですよ。スピード違反の可能性がお待ちしているので。もしかしたらドベスタートかもしれません。普通なら罰金だけですけど、まあ、みなさんよく分かっていると思いますけど、大人の事情はわかりますよね(苦笑)。ですので、まずは予選順位の正式結果を待ちましょう。僕はドベスタートか1周遅れのスタートになると思っているので」
実際、可夢偉の予想どおり、その後に正式結果が出て、7号車トヨタはWECスポーティングレギュレーション第10条6項3号『スターティンググリッド』に基づき全車の最後尾となる予選34番手の順位となり、グリッドはLMP1クラスの最後尾となる8番グリッドからのスタートになることが発表されたが、この時点ではまだ未確定のまま。そんな暗い雰囲気のなかで、メディアから最後の質問が投げかけられた。
──では、改めて明日、優勝したいという強い気持ちのコメントを頂けますか?
「それ、本気で言ってます? どう笑わせばいいですか?」
さすがの可夢偉も苦笑いで困惑した表情を見せた。