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苦しいレース展開となっても、ファンの前で力走を見せたガスリー【今宮純のロシア&日本GPドライバー採点】

2018年10月12日 12:21  AUTOSPORT web

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2018年F1第17戦日本GP ピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は第16戦ロシアGP&第17戦日本GP編だ。
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☆ セバスチャン・ベッテル(ロシアGP=3位/日本GP=6位)


 対ルイス・ハミルトンとのドライバーズチャンピオンシップ争いではロシアGPソチでマイナス50点、日本GP鈴鹿でマイナス67点、ほぼゲーム・オーバーだ。

 明らかにマシン・パッケージ戦力が低下し、この2戦は“オーバー・ドライブ傾向”が目立った。鈴鹿であれほど乱れる挙動などいままで見たことがない。予選9番手から決勝6位、せめてもの慰みにファイナルラップで最速タイム1分32秒318を樹立。ハミルトンは2位1分32秒785、タイヤが違いセーブモードとはいえPPタイム(1分27秒760)からゆとりの“5.025秒落ち”。ベッテルは2018年で2度目の最速ラップ、意地でハミルトンのグランドスラムだけは阻止した。

☆☆ ロマン・グロージャン(ロシアGP=11位/日本GP=8位)


 ふたりそろって速さを結果につなげられないハース。ソチでケビン・マグヌッセン8位、鈴鹿ではグロージャンが8位。グロージャンは表彰台経験者だけに鈴鹿の予選Q2を一発ソフトタイヤで通過、これが狙い通りに運びルノーにあと8点差へ。コンストラクターズランキング5位ハースは次戦がホームGPとなる、注目の“Bリーグ決戦”だ。

☆☆ セルジオ・ペレス(ロシアGP=10位/日本GP=7位)


 チームプレーに従いソチではエステバン・オコンと入れ替わりマグヌッセンを追走、しかしマグヌッセン攻略を果たせずに10位。鈴鹿ではしぶとく7位に入賞、“Bリーグ”でこれが3勝目、ベテランらしくなってきているペレス……。

☆☆ エステバン・オコン(ロシアGP=9位/日本GP=9位)


 就活問題を抱えているさなか、コクピットにおさまればコンスタントに力量を出しきる。鈴鹿フリー走行3セッションとも7番手、予選も8番手(しかし、3グリッド降格ペナルティ)。レース終盤まで前車グロージャンを追尾し7回目のチームダブル入賞、このチームにいるべき人材なのだが。

■初見のコースで先天的な才能を見せるシャルル・ルクレール


☆☆☆ カルロス・サインツJr.(ロシアGP=17位/日本GP=10位)


 傷だらけのファイティング・スピリット。鈴鹿ではブレーキ変調に陥りながらピエール・ガスリーを追走、土壇場で抜き10位入賞、ルノーに貴重な1点を。何度も特筆しているが今季リタイアは1レースのみなのだ。日本GPでホンダと数々のエンジン対決をしてきたルノーにとってはワークス復帰3年目の“初入賞”。

☆☆☆ シャルル・ルクレール(ロシアGP=7位/日本GP=リタイア)


 初めてのコースとなった2戦だが、またたく間にマスターしたロシアGPの7位は4星に値する。新人に厳しい鈴鹿でも予選Q1“6位!”、チームメイトのマーカス・エリクソンに大差をつけた。何年も鈴鹿を経験してきたかのように最適なラインを見いだす、先天的な才能を見た。マグヌッセンとの事故でリタイアに終わった鈴鹿でもまた、ポテンシャルを証明。

☆☆☆ ピエール・ガスリー(ロシアGP=リタイア/日本GP=11位)


 日本GPの週末、レギュラー・ドライバーのなかでは土曜まで最少周回数、パワーユニットやタイヤのデータなど不十分のまま向かうしかなかった。熟知する鈴鹿でそのハンデをカバー、予選の3セクター・ベストトータル・タイムは“1分28秒770”、チームメイトのブレンドン・ハートレーを上回った。戦略面で苦しいレースも、リヤタイヤのブリスターがハンドリングを狂わせたが懸命にコントロール。コースサイドにいた方はその力走がはっきり分かっただろう。だから11位でも観客は称えた。順位以上の「いいレース」だったからだ。

☆☆☆☆ バルテリ・ボッタス(ロシアGP=2位/日本GP=2位)


 いま、ルイス・ハミルトンの速さをいちばん理解しているのは彼だろう。「ソチの無念(チームオーダー2位)」から立ち直り、鈴鹿予選ではS字を含むセクター1でハミルトンに優った。だがデグナーが速いハミルトンに、ヘアピン~スプーンのセクター2で0.12秒劣った。ここでPPを失ったと言える。鈴鹿では53周レースを2位キープ、チームプレイヤーはミッションをまっとうするほかなかった。

■ドライバーとしての力を示したマックス・フェルスタッペン


☆☆☆☆ ダニエル・リカルド(ロシアGP=6位/日本GP=4位)


 18位→6位、15位→4位。この2連戦で“抜く力”と這い上がるレースをつらぬいた。コーナーで忍び寄る。DRSゾーンでしがみつく。そして得意なブレーキングで斬って落とす。国際TV画面にはあまり映らなかったが30回記念・鈴鹿GP・LIVEのヒーロー。そして日本GPの「ドライバーズ・オブ・ザ・デイ」を受賞、これで最多の4回になる。

☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン(ロシアGP=1位/日本GP=1位)


 五冠に向けてまっしぐら。自信を過信とせずタイトルへの“ルーティン”に集中していたこの2連戦。

(1)金曜はマシンとの対話を進め、イニシャル・セットアップを確認。
(2)土曜は予選Q3になってからありったけの力を1周に100%放出。
(3)日曜はスタートに全神経を注ぎ正確に決定。

 ポールポジションの有利さのひとつに、フォーメーションラップ時、前に誰もいないから本番と同じシミュレーション加速が自由だ(後続はどうしてもタイミングを合わせながらだ)。下り坂の鈴鹿、過去にはPPスタートを失敗した事例が多いが“タイトル”へのルーティンを完璧に決め、ルーティンの独走。

☆☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン(ロシアGP=5位/日本GP=3位)


 接近戦バトルでいま最強ドライバーはMAX――。シケインでキミ・ライコネン、スプーンでベッテルとからんだが、このスポーツではしょっちゅうあったプレーにすぎない。現行ルールと審判(スチュワード審議)の狭間で論議されても、彼が“悪意”でぶつけていったようには全く見えない。与えられたマシンでぎりぎりの格闘戦に挑むレーサーの勇気と、技(見切り)による3位はドライバー力。

 戦略とかエンジニア指示やパワーユニットのアドバンテージに頼るものではない。フェルスタッペンのレースはF1に欠かせない、スリルとリスクにみちていた。連戦を通じて5星を――。