元ルノーF1ドライバーのジョリオン・パーマーは、現在のF1ではホイール・トゥ・ホイールでインシデントを起こしたドライバーに対するスチュワードの対処が厳しすぎるとして、ペナルティをもう少し控えるべきだと語っている。
先週末のF1日本GP決勝では、何度かドライバー同士の接触がみられ、それらに対して厳しくペナルティが科せられた。
レッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンは、フェラーリのふたりのドライバーと相次いで接触。そのうちひとつは、オープニングラップのターン16を曲がりきれずにカットした後、コースに復帰したところでキミ・ライコネンにヒットしたというもので、これについては危険な形でコースに戻ったとして、5秒のタイムペナルティとペナルティポイント1を科された。マクラーレンのフェルナンド・アロンソは、ランス・ストロールに押し出されてコース外を走ったことで「大きなアドバンテージを得た」と判断され、5秒のタイムペナルティとペナルティポイント1を科された。フェルスタッペンもアロンソも、不当な裁定であると、強い不満を示している。
一方、フェラーリのセバスチャン・ベッテルがスプーンカーブでフェルスタッペンに仕掛けた際に接触した件については、ペナルティ対象にはならなかった。パーマーも、このインシデントはレーシングアクシデントだったと見るが、ベッテルはもう少し我慢をして、確実にオーバーテイクすべきだったと考えている。
「ベッテルは、スプーンカーブで我慢していたら、ラップ終盤のシケイン入口でより確実に抜けるチャンスがあっただろう。あそこのシケインではオーバーテイクがもっと普通に行われている」とパーマーは決勝終了後BBCに寄稿したコラムに記している。
「この一瞬の判断によって、ベッテルのレースは事実上終わった。今年ベッテルは世界タイトルをかけて戦うなかで、こういうことがあまりにも多すぎる。いくつもの誤った判断が、彼自身にとって高くつく結果となったのだ」
「このインシデントについてはFIAは何の動きも起こさなかった。これはレーシングインシデントなので、正しい判断だったと思う。しかし、決勝中に発生した他の多くのインシデントから、F1が今抱える問題点が浮かび上がってきた。スチュワードの判定という問題だ」
■「F1はオーバーテイク減少という現実を直視すべき」とパーマー
パーマーは、ホイール・トゥ・ホイールのレースに対するF1の対応が、長年の間に悪い方向へ変わってきていると主張する。
「F1史上最高のバトルのひとつとして、2007年に雨中の富士で行われた、フェリペ・マッサとロバート・クビカの最終ラップの戦いを挙げたい」とパーマー。
「彼らの激しいバトルは半周にわたって続いた。互いにぎりぎりまで相手をプッシュし、時にコース外まではみだしては危険な方法で戻ったりしていた」
「あれから約10年が過ぎた今、同じバトルが行われたらペナルティの嵐になるだろう。まず、相手のドライバーをコース外に押し出したことについて。次に危険な方法でコースに戻ったことについて。それから、コース外を走ってアドバンテージを得たことについてだ」
「ルールブックに定められた文章に従えば、多くのペナルティが適用されることになるはずだ」
こういった状況を見直す時期に来ていると考えるパーマーは、スチュワードはドライバーのコース上のアクションについてもう少し寛大に対処すべきだと主張した。
「僕は、ホイール・トゥ・ホイールのインシデントでも議論の余地が残るようなケースでは、自由裁量の幅を広げるべきだと考える」とパーマー。
「現実を直視すべきだ。2018年シーズンのF1では、オーバーテイクやコース上でのアクションなどはあまり見られない。だから、多少ホイールがぶつかったくらいでドライバーを頻繁に罰するのはやり過ぎに思える」
「一方で(ハースのケビン・)マグヌッセンは、ストレートを時速180マイルで走行中に、突然進路を変えて接触事故を起こしたのに、ペナルティを受けなかった。あれは不思議だ」
概してスチュワードは非常に困難な仕事をしており、ドライバーがペナルティを科せられる場合でもそうではない場合でも、スチュワードの判定に不満を覚える者は必ず出てくるものだ。
「それでも一般論として、レースのなかで発生するホイール・トゥ・ホイールの戦いに関しては、ペナルティを減らしてもらいたいと僕は考える」